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【収録記】「施設」で育った私~愛情と理解者を求めて

2014年06月26日(木)

ハートネットTV、WEBライターです。
今回の収録は、児童養護施設などを巣立つ子供たちの自立を3回に渡って考える「『施設』で育った私」でした。


◆第1回 漂流する施設出身の若者たち
ホームレスを支援する人たちによると、路上生活に陥る若者の中に、施設出身の人が増えているそうです。
取材に応じる方々の口から出るセリフは、本当に切ない。
「家もない。頼れるところも本当にない。なぜ私はこの世に生まれてきたの?」人は一人では生きていけないのに…。
少ない大人で多くの子供たちを見る施設の暮らしでは、必要な衣食住は満たせても、どうしても充分な愛情を受けにくくなるのかもしれません…。

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施設出身の人の問題解決に取り組む相談所「ゆずりは」で、職員に、「やっぱり血のつながりのある我が子と、俺たちとでは大切さが違うでしょ?」と何度も食い下がる30代半ばの男性がいました。
彼の孤独が伝わりました。誰でも孤独は不安で辛い。
根気強く「あなたのこともとても大事だよ」と答え続けた職員の女性。
彼女の言葉からつつみこむような愛情を感じました。きっと、男性も感じたと思います。
愛情が前に向かって歩き出す勇気となる。
男性が最後に語った言葉が、それを示していました。

原則、18歳になると施設を卒業し、社会に出ることになります。
つまり、18歳で突然後ろ盾や頼れる相談者も全くなくなり、完全に自立した大人とする現実が、そこにあるのです。


◆第2回 巣立ちを支える児童養護施設の取り組み
子どもたちが少しずつ自立していく過程を支えるためには、どうしたら良いのでしょう?第2回の放送ではヒントとなる取り組みと、サポートの必要性をご紹介します。

施設で何年も集団生活をしていた子どもが、急に一人になる孤独感は相当大きなものだろうと思います。一人暮らしの練習をする高校生が、シーンとする部屋で「うつになりそう」と呟いたのが忘れられません。施設の方が「依存を経て初めて自立できる」と仰っていましたが、やはり自立のサポートは必要不可欠なのだと思いました。


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ゲストのサヘル・ローズさんはVTRを見ている際、時折なんともいえない表情をされていました。



◆第3回 “最後の砦”自立援助ホーム
壮絶な現場の様子は、見ていて涙が出ました。
繰り返し傷つき、見捨てられる体験をしてきた子どもが自暴自棄のようになる様子も痛々しいけれど、職員の方が、どうやったら気持ちに寄り添えるか悩み苦しみながらも、逃げずに子どもたちと向き合おうとする様子には、「そんなに自分をすり減らさないで!」と思いました。


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サヘル・ローズさんと、西澤 哲さん。お二人の言葉の一つ一つに“現実の重み”を感じました。



今回のシリーズで、孤独がどれほど人を追い詰めるのか、初めて理解できた気がします。
施設で育った人たちが抱えるのは、今現在の孤独だけでなく、過去からの孤独。その環境から、人より早く大人にならざるを得なかった人たち。だからこそ、自分の中の“子ども”部分がコントロールできずに苦しむこともある。
しかし彼らが本当に自立できた時、苦労を経験した分、人の痛みの分かる大人になるのだろうし、同じような経験で苦しむ人の助けになるかもしれない…。

そんな良い連鎖が生まれるよう、互いがつながり合い、孤立を防ぐ温かいネットワークを育てていかなければならない。そう思いました。