――収録自体はどうでしたか。

すごく緊張しました（笑）。血糖値がうなぎのぼりだったので、やっぱり僕の場合、緊張は血糖値を上げるなと実感しましたね。試合と同じようなインスリンの打ち方をしないといけなかったかなって（笑）。CGM（持続血糖測定器）を付けてデータを取っていたらおもしろかっただろうなと思うくらいです。

――1型糖尿病を抱えたうえで競技をするにあたって、工夫している点などはありますか。

僕の場合、インスリンが分泌されないので、何も食べなくても血糖値が上がります。普段は持効型という24時間以上効果が続くインスリン注射を打っているのですが、競技のときはそれに加えて半日程度効果が続く中間型のものとか、違う種類の持効型の注射を上乗せして、緊張による血糖上昇に対応するという工夫をしていますね。

――病気がわかったときに、「エアロビックをやめる」という選択肢は考えましたか。

やめようとは思いませんでしたね。もちろんエアロビックをまだ続けられるかなという不安はありましたが、病気になったからやめようという考えはなくて、病気になったからどうやって続けようというふうに考えていました。

――それだけエアロビックが好きだったのですね。

そうですね。あとは、僕は球技が全然できないなど運動音痴なので、それがよかったのかなと思っています（笑）。自分にとっては、エアロビックが自分自身を表現するのに一番いいスポーツだったから、それを続けたい。そのためには病気をどうコントロールしていくか、という考え方でした。

――改めて、自分の1型糖尿病という病気について、どのように思っていますか。

これは僕の“個性”なので、うまく付き合っていきたいなと思っていますし、もし治る病気になっても、僕は個性と受け止められているので、まずはこの病気をじゃま者、つらいものなどネガティブに考えている方を優先的に治してもらって、みんながなるべくこの病気で悲しい思いをしなくてよくなればいいなと思います。

――収録では治療道具を「相棒」とも言っていましたね。

注射器や血糖測定器はいつも持っているので、相棒みたいなものです。これからもかっこいいポーチとか、おしゃれなインスリン注射器とかを見つけたりしながら、仲良く付き合っていけたらなと思います。

――番組を通して視聴者の方にはどんなことを感じてほしいですか。

先日、栃木の事件（※）があって、“重い糖尿病”という誤った表現での報道が多く、1型糖尿病が誤解されて伝わっているのではないかと懸念しています。だから、まずは1型糖尿病がどんな病気なのかを正しく知ってほしいです。そして、興味を持ってくださったのであれば、そこから一歩踏み出してもらって、より正しく理解しよう、そして、自分の周りにそういう患者さんがいたときにどう接していこうかということを考えていただけたらうれしいですね。1型糖尿病だけでなく、いろんな病気や悩みで苦しんでいる人は世の中にたくさんいると思うので、自分以外の誰かのことを考える時間を少しでも持ってもらえるといいなと思います。

※1型糖尿病を患う男の子にインスリンの投与を中止させ、体をさする行為などを「治療」と称して行い、死亡させた事件。