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【制作後記】阪神淡路大震災・20年後の現実ー鉄の扉の中の孤独ー

2015年01月15日(木)

1/13(火)放送(再放送:1/17(土)、1/20(火))の「鉄の扉の中の孤独 ―阪神淡路大震災・20年後の現実―」は、震災後に4万戸が建設された復興住宅(災害公営住宅)の言わば“盲点”だった高齢者の孤立をテーマにした番組である。
20年間、ボランティアとして被災者の支援にあたってきた「NPO法人よろず相談室」の牧秀一理事長(写真右)が主人公だ。

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阪神淡路大震災から20年、いまも神戸の高齢者のもとに通い続ける牧秀一さん(64)

牧秀一さんの活動については、2年前の4月、仙台放送局在任中にも番組にしている。
(「神戸からのメッセージ」というタイトルで全国放送もした)今回は言わばその続編で、震災後20年を迎えて深刻化する復興住宅問題にスポットを当てた。
 


世間的には神戸はとうに復興したと見られているだろうし、事実、街を歩いても震災の傷跡などどこにも残されていない。しかし、復興住宅では、毎年50人前後の高齢者が誰にも看取られることなく亡くなっている。いわゆる「孤独死」である。

ぼくが取材したなかには両隣の部屋がともに孤独死した人もいて、片方の住人は、死後数ヶ月がたってから、部屋からウジ虫が這い出してきてようやく発見されたのである。(こうした生々し過ぎる部分については番組では割愛した)こうなると、生き残った人にとっても地獄に等しい状況で、番組のなかで牧さんが話しているように、明日は我が身…である。


最大の復興住宅団地・HAT神戸では、去年の秋、高齢になった被災者の飛び降り自殺もあった。マンション形式の復興住宅の場合、プライバシー重視の「鉄の扉」に阻まれて、こうした実態はほとんど人の知るところとならない。世間から忘れ去られたところで、高齢化した被災者の孤立は深刻化の一途をたどっているのである。

こうした「忘れられた人々」の支援に20年のあいだ地道に取り組んできた牧さんは、「街は復興しても、人の心が復興するのは簡単ではない」という。東日本大震災後の東北での、牧さんとは比べるべくもないぼくの経験から云っても、災害で多くを失った人の心が立ち直るのは容易でないことだ。やがて世間は忘れ、忘れられた被災者の孤立は深まるばかりである。


牧さんが、そしてぼくが、いま一番危惧していることは、東北が神戸の轍を踏むことである。残念ながら、その可能性は高いといわざるを得ない。
震災前から高齢化が進んでいた東北では、問題はもっと早く、そして深刻なかたちで顕れるのだろう…



阪神・淡路大震災(1995年1月17日)、新潟県中越地震(2004年10月23日)東日本大震災(2011年3月11日)など、被災した人たち、ことに、高齢者や障害者、子育て中の人、心に傷を負った人たちの、暮らしはどうなっているのでしょうか。適切な支援は受けられているのでしょうか。

ハートネットTVでは、被災地の現場から、今後の「福祉」のあるべき姿を探っていきます。