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【取材記】シリーズ広島土砂災害 第二夜"隠れたSOSを見つけ出せ"

2014年10月09日(木)

10月9日(木)放送のシリーズ広島土砂災害 第二回 隠れたSOSを見つけ出せ、を担当した、柚木です。

9月初旬。
安佐北区の災害ボランティアセンターの取材に入ったその日、「隠れたSOSを聞き取って支援につなげようというスペシャルチームがある」と聞き、そこから被災者支援チームの取材を始めました。
専門家によると、ボランティアセンターに、こうした様々な専門職が組になって困りごとを聞いて回る支援チームが出来たのは、おそらく初めてではないか、と。しかし、安佐北区の皆さんの口癖は、「安佐北だけ出来た、じゃ駄目なんだ」です。
チームの活動を2週間近く密着させていただいて見聞したことを書きたいと思います。


最初に感じたのは、「困っている時は、困っていると言うことにすらエネルギーがいる」ということです。
大変な状況でパニック状態だけれども、自分が具体的に何に困っているか分からない、分かったところで人に言っていいものかわからない、そして、人に言おうにも誰に言っていいのか分からない・・・
人によっては、困りごとを勇気を持ってそれらしきところに相談したものの、たらい回しにされ続け、さらに疲れる、そして困りごとは解決しない…という方も多くいらっしゃいました。

では、こうした状況にある方々のSOSをどう汲み取るか?
 


そこで、すごいと思ったのは、チームの看護師さんたちの聞き取りの仕方でした。


彼女たちは決して、「困っていることは何ですか」とは聞きません。
「食事は」「睡眠は」「お風呂に入れているか」・・・そうした生活の根幹に関わる具体的な質問を当て、じっくりと話を聞きながら、困りごとを一緒にひもといていっていたのです。

食事が出来ていないなら、それはなぜか。食欲がないことが理由なら医療の助けが必要かもしれないし、買い物に行けないなら買い物支援が必要かもしれない・・・
睡眠が出来ていないなら、それはなぜか。雨が降るか不安で眠れないなら、精神医療の助けが必要かもしれないし、家の前の土砂崩れが不安で眠れないのなら、行政の力を借りてのインフラ整備が必要・・・
お風呂に入れていないなら、それはなぜか。水が出ないなら行政の助けが必要だし、ボイラーが壊れているなら電気屋さんの助けが必要・・・
こういった具合に、具体的なSOSをきちんと聞き取り、持ち帰っていました。

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時には血圧を測りながら、SOSを聞き取る


その次にうまくいっていると思ったのは、具体的なSOSを支援につなげる方法です。
聞き取ってきたSOSは必ず、チーム、そしてボランティアセンター全体で共有。
そして、法律関係での悩みなど、もしチームの中にいる専門職が解決できる場合は、そのメンバーがその方のもとに直接出向いて解決。
ボランティアセンターで解決できるSOSは、ボランティア班などと連携して解決。
それ以外は、介護保険の担当者や市の保健センター、そして行政等との連携でしかるべきところに支援を求められていました。

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聞き取ったSOSは、ボラセンで毎日行われる報告会議で共有


しかし、やはり何よりすごいと思ったのは、チームの皆さんや社会福祉協議会の皆さんの、被災した方々に寄り添い続ける姿勢でした。一度助けたからOK、ではなく、チームの皆さんが、聞き取ってきた方々の状況を覚えていて、「あの人はどうなった」「あの人は今こうなっている」ということを常に案じ、支援策を模索していました。

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被災状況を証明する写真を、畳を上げて撮る様子


チーム解散後の今も、安佐北区では、地域で被災者支援を続けていく態勢を模索しています。彼ら曰く、「ここからが本番なんだ」
もしかすると、災害がおこる前よりも、暮らしやすい地域になっていくかもしれない・・・そう思わせるほどのこの地域、これからも、足を運んでいきたいと思います。


広島土砂災害 (1) 被災者が見えない
​本放送 2014年10月8日(水)、再放送 10月15日(水)

広島土砂災害 (2) 隠れたSOSを見つけ出せ
本放送 ​2014年10月9日(木)、再放送 10月16日(木)