遠野

岩手県
2011年9月2日 放送

百年前、柳田国男の「遠野物語」は、妖怪や山の神を信じて暮らす人々がいることを世に知らしめ衝撃を与えた。明治の人々を驚かせた暮らしと信仰は、実は今も失われてはいない。ここには廃校になった学校から、座敷わらしを家に連れ帰ったと言う女性がいる。家の守り神「オシラサマ」が田植えを手伝ってくれたと語り伝えるお年寄りもいる。沢でカッパを見たという人もいる。お盆になると、山から下りてくる亡くなった人々を迎える「トオロギ」を高く上げ、しし踊りで丁重にもてなす。死者はいつまでも故郷を離れることができないと柳田が記した生活は、遠い昔、蝦夷と呼ばれた文化の痕跡を今に伝えるものでもある。さらにこの土地では、山から切り出した木を運ぶのに今も馬を使い、馬と人とが顔を合わせて暮らす「曲がり屋」と言う家も残されている。
観光に訪れるだけでは触れることの難しい、素朴な信仰に抱かれた暮らし。そこから生まれた世界観、いわば日本人にとっての原風景を映像で伝える。

旅のとっておき

遠野を担当した澄川です。
遠野の隣村に住んで十年以上になり、よく出かける場所なので遠野のことはほとんどわかったつもりになっていました。しかし、取材を始めると知らないことばかりです。たとえば、遠野ではお盆に先祖の霊魂を迎えるために「トオロギ(灯籠木)」という紅白の旗を家の前にあげます。続きを読む

ポスター
遠野
写真:浦田穂一 協力:遠野市立博物館
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