国会中継をより多くの人に 生字幕放送を拡充

国会中継をより多くの人に 生字幕放送を拡充

字幕放送は、聴覚に障害のある人や、音声が聞き取りにくい高齢の視聴者にむけ、テレビの音声を文字で表示することにより、番組の内容を伝える補完サービスです。現在、総合、Eテレ、BS1、BSプレミアム、BS4K、BS8Kすべての映像メディアで字幕放送を実施、ユニバーサル・サービスの柱のひとつとして、量と質の両面からさらなる充実に努めています。

●コロナ禍でニーズに変化も

国会中継においては、2018年の秋から所信表明演説と代表質問を対象に字幕放送を始めました。しかし、聴覚に不安のあるかたがたから予算委員会や党首討論などにも字幕の要望が続いたほか、テレビの音をあまり出すことができない事情から字幕を求める意見も寄せられました。特にコロナ禍以降は、マスクを着用していて声が聞き取りにくい、口元の動きが見えないため発言の意図が分かりにくい、という指摘も目立つようになりました。

【視聴者から寄せられた声】

  • 聴力が弱くなり、テレビの音量をかなり大きくしないと聞こえない。国会中継では代表質問などには字幕があるが、予算委員会になると字幕がなくなってしまう。できることならば予算委員会でも字幕放送をするよう検討してほしい。(70歳以上男性)
  • ニュースをいつも字幕で見ていて、幼い孫たちの邪魔にならないので重宝している。国会は大事な放送だし、ニュースに字幕があるのだから国会にもすべて字幕を出すべきではないか。(60代女性)
  • 病院の外来待合室のテレビにも国会中継が映っているが、音を出して聞くことができない。字幕をつけてほしい。(70歳以上女性)
  • 感染予防のためマスクを着けて議論することは納得できるが、肝心の質疑応答がよく聞こえない。表情が分かりにくいこともあり、こんなときこそ字幕があれば理解の助けになると思う。(年代不明男性)

●2022年秋 国会中継の生字幕放送を拡充

このような声を受け、去年10月3日に開会した第210臨時国会から、衆議院と参議院それぞれの予算委員会の中継でも字幕放送を開始しました。
国会中継など生放送番組に付与される字幕は「生字幕」と呼ばれ、いくつかの入力方法があります。国会中継の生字幕の場合、高度な専門技術を持つオペレーターが放送の音声を聞き取り、専用のキーボードを使って瞬時に文字を打ち込む方法を採用しています。6人のオペレーターたちが入力係とチェック係の2人ずつ3組に分かれてリレー形式で文字列を完成させることで、速くて正確な生字幕を作成しています。

202210_01_002.png国会中継における 生字幕作成作業のイメージ

●生字幕制作に求められるスキル

やり直しの効かない生放送の現場、視聴者の暮らしや未来に関わる重要な議論を公平にかつ正しく伝えるために、国会中継の字幕化は非常に繊細で神経を使う作業です。日本語はもともと同音異義語が多いことに加え、生字幕の入力やチェックの担当者は国政に関する専門用語や時事用語に精通していることが求められます。また、予算委員会は、所信表明演説や代表質問に比べて質問者と答弁者が頻繁に入れ代わりながら登壇することが多く、想定外の進行にも柔軟に対応できる経験も必要です。さらに、論戦は朝から夕方まで合計8時間近くに及ぶこともあり、途中交代のための字幕オペレーターが複数組待機しています。

【視聴者から寄せられた声】

  • 国会中継はきょうから予算委員会が始まったが、字幕が出ていた。とてもよいことだと思った。(年代不明)
  • 聴覚に障害がある。予算委員会に字幕がついたおかげで、与野党それぞれの主張を初めて理解することができた。込み入った用語も多いなかで、字幕放送に携わる担当者の努力と熱意に感謝の気持ちで一杯だ。今後もできる限り続けてほしい。(70歳以上女性)

●公共メディアとしてのバリアフリー

さまざまな課題に向き合い実現した国会中継の生字幕拡充の取り組み。今後も国会中継として放送する本会議と各委員会では、正確性や政治的公平性などを損なわず制作できると判断した場合には、原則として字幕を付与する予定です。
すべての視聴者が、見やすく、聞きやすく、分かりやすく、安心して視聴することができる。ユニバーサル・サービスの取り組みを前に進め、公共メディアの使命を果たしていきたいと考えています。

NHK生活情報ブログ
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/800/111911.html
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/800/112861.html

国会中継
https://www.nhk.jp/p/ts/NYKRM43R94/

※内容は、掲載当時のものです。