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地域づくりナビ

被災地の避難生活を少しでも過ごしやすく

被災地の避難生活を少しでも過ごしやすく

2024年2月13日更新

突然の災害で住み慣れた家やコミュニティを離れ、避難所や仮設住宅暮らしを余儀なくされている方たちが多くいます。老若男女を問わず、病気や障害など、さまざまな事情を抱えて身を寄せ合う仮の住まいで、少しでも安心、安全に暮らすためにはどうしたらよいのでしょうか。また、サポートする側はどうしたらそのニーズにていねいに寄り添えるのでしょうか。各地の経験から見えてきたさまざまな工夫や知恵を紹介します。

多様な人が集まる避難生活だからこそ、きめ細やかなケアを

災害時の避難所には、さまざまな人たちが集まってきます。それぞれの事情に見合ったサポートをきめ細やかに進めようと、さまざまな取り組みが行われています。

防災と避難所運営は女性目線で

災害時の避難所生活を、少しでも過ごしやすい場にしようと、避難所運営や防災に女性たちが関わり現場を変えています。東日本大震災の際、宮城県登米市の避難所では、「パーソナルリクエスト票」を作り、個別のニーズに応える体制を作りました。熊本県益城町の避難所では、乳幼児世帯や女性のための専用スペースをつくり、避難所では掃除や食事配りなどは、男女の役割を固定化せず「できる人がやる」ように促しました。日々の暮らしの中でさまざまな工夫を行ってきた女性たちが現場を変えているのです。

明日をまもるナビ
“防災”のカギは女性の参画
(2022年11月6日放送)
地域:宮城県登米市 熊本県益城町

外国人が運営に参加して多文化共生の避難所作り

東日本大震災時、仙台市の三条地区では、避難所に集まってきた外国人と日本人の間で、生活習慣や言語の壁などから、あつれきが生じてしまいました。その経験から、避難所の運営をまかされた町内会では、外国人と日本人が共同で避難所を立ち上げる防災訓練を行うことに。多言語が使える外国人が運営に参加し、炊き出しの食事も宗教上の制約に配慮。共同で行う防災訓練は、日常の中から互いの壁を取り払うことにもつながっています。

TOMORROW
外国人だらけのヒナンジョ?
(2014年12月17日放送)
地域:宮城県仙台市

避難所から生まれた子どもの遊び場

震災時、避難所の運営に駆け回っていた女性。1か月ほどした頃、あるNPOから、子どもたちの遊び場を作る相談をもちかけられました。大人たちの壮絶な様子に、子どもたちがずっとがまんをしていたことに初めて気がつき、遊び場を作り始めると、子どもたちの表情が変わっていったといいます。その後、遊び場の運営はNPOから地域に引き継がれました。今も地域の人々に見守られながら、子どもたちが思い切り楽しめる場になっています。

あの日 わたしは~証言記録 東日本大震災~
宮城県気仙沼市 鈴木美和子さん
(2017年3月16日放送)
地域:宮城県気仙沼市

災害に備え福祉避難室の普及を

東日本大震災時、障害者や家族の多くは、大勢の人と一緒に過ごす避難所には行きにくいと感じていました。福祉避難所を指定する動きも広がっていますが、バリアフリーなどの条件を満たす施設は少なく、近くにあるとも限りません。そこで、一般避難所の一室を、高齢者や障害者が利用できる「福祉避難室」として活用する試みが始まっています。常総市の特別支援学校では、災害時に示すカードも作って、理解と普及に努めています。

あの日 わたしは~証言記録 東日本大震災~
茨城県常総市 金安直美さん・英徳さん
(2018年8月30日放送)
地域:茨城県常総市

仮設住宅暮らしでも、コミュニティを途絶えさせない

避難所から仮設住宅へ移ってホッとしたのもつかの間。慣れない暮らしに部屋に引きこもりがちになってしまう人も多いようです。孤立しがちな人たちをどうしたら人の輪につなげることができるのか? さまざまなアイデアを紹介します。

アイデアを共有して仮設住宅を暮らしやすく

東日本大震災で住居を失った宮城県気仙沼市の人たちは、狭くて暮らしにくい仮設住宅に悩んでいました。そこでヒントになったのが、福島県郡山市で開かれた仮設住宅アイデアコンテスト。新潟大学准教授の岩佐明彦さんと学生たちが、住民たち自身による改善のアイデアを出し合うことで困難を乗り越えようと企画しました。岩佐さんたちは気仙沼でも住宅を調査しコンテストを開催。住民同士の交流にも一役買うことになりました。

欽ちゃんのがんばる!日本大作戦
(2011年12月24日放送)
地域:宮城県気仙沼市 福島県郡山市

被災地で始まった「男の介護教室」

宮城県石巻市で開かれている「男の介護教室」。ケアマネージャーの髙橋恵美さんが、家族の介護に悩む男性たちを支えようと始めました。きっかけは、東日本大震災後、各地の避難所で、認知症が急に悪化した高齢者と、困り果てる家族の姿を目にしたこと。さらに、仮設住宅で悲しい出来事が起こります。孤立しがちな男性介護者のために何ができるのか、医師や福祉関係の仲間たちと会議を重ね、気楽に参加できる教室を立ち上げました。

あの日 わたしは~証言記録 東日本大震災~
宮城県石巻市 髙橋恵美さん
(2018年7月10日放送)
地域:宮城県石巻市

企業ボランティアが開く「男の料理教室」

仮設住宅に暮らす高齢男性たちが集まってきたのは、食品メーカーが開いている料理教室。企業ボランティアの前原さんは、支援物質を届けに回った仮設住宅で、被災者たちが料理をしなくなり、栄養バランスも悪くなっていることに気がつきました。みんながふたたび料理を楽しめるようにと料理教室を始めたものの、気になったのは、引きこもりがちな男性たちのこと。さまざまな工夫を重ね、今では多くの男性たちが楽しみにしています。

TOMORROW
ともに歩み ともに育つ~被災地と企業ボランティア~
(2014年9月10日放送)
地域:岩手県山田町船越地区

全国の商店街の応援で復活した市

津波から50日目。南三陸町で、被災地のどこよりも早く「福興市」が立ち上がりました。若い人たちが町を離れて行く中、昔から地域で商売を営んできた商店主たちは、生活再建のきっかけをつかみたいと、設備も資金もない中で、市(いち)の復活に奔走します。支援の手を差し伸べたのは、全国の商店街のネットワークでした。生活を支え続ける商店があることは、避難所生活を送っていた住民たちを励まし、市は今も多くの人でにぎわっています。

明日へ つなげよう
第65回「宮城県南三陸町 商人の心意気で“福興”を」
(2017年6月25日放送)
地域:宮城県南三陸町

地域ボランティアや支援者も、長い目線で

災害直後にはたくさん訪れたボランティアや支援者も、その後も継続的に関われる人ばかりではありません。復興過程の長い道のりを、被災者を支え、伴走していくために、支援者やボランティアができること。各地の経験から学べることが多くあります。

コミュニティを再建して被災者のリハビリを支援

小規模の仮設が点在し、コミュニティが分断されてしまった宮城県石巻市の牡鹿半島。看護師や作業療法士などで作る全国訪問ボランティアナースの会「キャンナス」では、健康相談やリハビリ支援を行いながら、孤立しがちな仮設住宅などを回り、お年寄りが交流できる場づくりを行っています。さらに地元の保健師やケアマネと相談しながら、いつでもお年寄りが来られる地域交流の拠点を作り、コミュニティの再建を促しています。

ハートネットTV
シリーズ 被災地のリハビリ支援 (3)「地域コミュニティーの輪を作る」
(2012年5月31日放送)
地域:宮城県石巻市 宮城県牡鹿半島

息長い災害ボランティアのための組織作り

福島大学の鈴木典夫教授が、東日本大震災後、学内に立ち上げた災害ボランティアセンターには、現在も学生350人が登録し、20種類以上の活動を行っています。継続的な活動の秘訣は、組織作り。トップの3役が被災者のニーズを見ながら方針を決め、時には活動内容の見直しも。さらに、総務や経理、情報発信などの役割を果たす運営マネージャーが、実働部隊の活動をサポート。一人ひとりが能動的に活動することで継続につながります。

東北発☆未来塾
6年目のボランティア講座(1)「なが~く支えて ちゃんと喜ばれて」
(2016年6月6日放送)
地域:福島県

おわりに

予期せぬ自然災害で、家や財産など、大切なものを多く失ってしまった被災者のみなさんが再び元気に地域で暮らせるようになるために。まずは一番大切なのが、安心して暮らせる住まいの確保ではないでしょうか。緊急時の避難所から、仮設住宅、そして公的支援を受けての新たな住まいへ。それぞれの選択がより良い形で行われるためには、地域コミュニティとの連携が不可欠です。