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災害発生!そのときに・・・

災害発生!そのときに・・・

2018年9月12日更新

今年も日本各地で大規模な自然災害が相次ぎました。災害発生時にすぐ直面する課題が、避難、そして避難所生活です。
住民一人も取り残さず、助け合って困難を乗り切るためにどうすればいいのか、各地の経験を振り返ると、災害初期対応のヒントがありました。少しでもお役に立てれば幸いです。

助け合って避難を

危険を感じたら、すばやく避難。しかし西日本豪雨では、避難指示が出ていたにもかかわらず、避難しなかった人がほとんどでした。
住民同士で声をかけあって避難する仕組みをふだんから作っておくことが、いざという時の役に立ちます。

住民自身が避難を判断

過去の水害時に行政の避難勧告が届かずに多くの住宅が浸水した鹿児島県鹿児島市永吉地区では、住民自身が避難を決める仕組みを作っています。気象台の統計から水害が起こる雨量を把握した上で、水害の危険を察知。情報収集して状況判断する班、防災広報車で避難誘導する班、自力で避難が難しいお年寄りを救出する班、避難した住民の食事を準備する班に分かれ、住民自身が連携して住民たちを避難させる自主防災の体制をとっています。

難問解決!ご近所の底力
水害から町を守る
(2004年10月28日放送)

移動が困難な障害者の避難は特に重要な課題です。国は自治体に支援計画の作成を求めていますが、すでに取り組みを始めていた地域では、住民たちのネットワークが命を守りました。

災害時に障害者の避難を支援するネットワーク

東日本大震災では、障害者の死亡率は健常者の2倍に上りました。宮城県石巻市八幡町では、一人で避難できない障害者を「災害時要援護者」として近隣住民が避難を手伝う「防災ネットワーク」という独自の取り組みを震災前から実施していたことで、震災時に助けられた人たちがいました。中には、防災ネットワークが機能せずに地域住民に助けられた人も。震災によって、住民たちは平時のネットワークづくりの大切さも実感しました。

ハートネットTV
“災害時要援護者”をどう支えるか(1)
(2012年9月11日放送)

避難所で快適に暮らすコツは

不安な中での共同生活で、ストレスもたまりがちな避難所。特に発災直後は、行政が機能していないことも多く、避難所の運営は混乱しがちです。
しかし熊本地震の際、西原村では、住民たちみんなが特技を生かし、避難生活を乗り切りました。その秘訣は、ふだんから住民主体で行ってきた防災訓練にありました。

住民が主体的に避難所を運営

防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんと宮城県の高校生たちが、熊本地震の被災地を訪ね、避難所運営について学びました。多くの避難所で運営が混乱する中、西原村では「明るい避難所」と呼ばれるほど、スムーズな運営がされました。その秘訣は役所が仕切らず、住民たちに任せたこと。防災訓練を通して、自分たちに必要なことを住民自身が話し合う機会を作ってきたことが、みんなが協力して危機を乗り切ることにつながりました。

東北発☆未来塾 防災の日スペシャル
生き延びるチカラ@熊本
(2016年9月4日放送)

とはいえ多くの場合、避難所で共同生活を送るのは、ふだんから顔見知りの人たちばかりではありません。東日本大震災時、ある避難所では、まず班を作り、小さなコミュニティとすることから始めました。
配給の受け取りや情報の連絡を班ごとに行うことで、体が弱い人などの負担を減らし、取り残される人もいなくなります。さらに避難所全体に、自ら助け合おうという雰囲気が生まれてきたといいます。

避難所運営のヒントを東北の被災地から学ぶ

熊本地震で被災した人たちが避難所生活を余儀なくされ、特に高齢者や障害者にとって厳しい状況が続いている中、後藤千恵解説委員が、東日本大震災の被災地である宮城県石巻市の避難所でリーダーを務めた松村善行さんの経験から生活のヒントを探ります。班をつくって役割を分担することで、高齢者や障害者への配慮や、1人1人の要望をくみ取る仕組みを構築。避難所のリーダー同士が情報交換することで、避難所間の格差解消も図りました。

くらし☆解説
東北の被災地から学ぶ 避難所運営のヒント
(2016年4月27日放送)

災害時は特に、高齢者、障害がある人・子どもとその家族、女性、外国人、性的マイノリティの人たちなどが、特有のニーズを周囲に伝えられず、取り残されがちであると指摘されています。
これら見落とされがちなニーズのひとつが、食物アレルギーへの対応。必要とする人たちに対応食品を届けるために奮闘した店主は、自治体の取り組みも変えてきました。

食物アレルギーに対応する防災対策

震災時、食物アレルギーをもつ子どもと家族は、避難所で配られる食品を口にすることができず、周囲の人たちに理解を求めることもできない困難な状況にありました。仙台市で食物アレルギー対応食品の店を経営する三田久美さんは、行政にも協力を求め、対応食品を必要とする人たちに届けることができました。その教訓は自治体の防災対策に生かされているだけでなく、当事者も周囲に理解を広げるために、自ら動き出しています。

TOMORROW
食べられるものがない!~食物アレルギーと震災~
(2015年1月28日放送)

企業も避難者を支える力に

通信が途絶え情報が限られているとき、企業や団体がもつ独自の通信網は頼りになります。タクシー会社の無線や、生協の注文ネットワークは、被災者の声やニーズを届ける重要な役割を果たしました。

災害時に情報をつないだタクシー無線

東日本大震災時、宮城県気仙沼市の消防団員たちは連絡手段を失い、6人が命を落としました。通信手段が途絶えた街で大きな力を発揮したのは、地元のタクシー会社。相互通信ができる無線システムを利用して連絡網を作り、災害対策本部に情報を伝え続けました。その経験は全国で注目され、タクシー事業者は災害対応マニュアルを作り、自治体と協定を結ぶなど対策を進めています。消防団も無線設備を設置し、通信訓練を続けています。

TOMORROW
タクシー無線が消防団を支えた
(2014年8月27日放送)

東日本大震災の反省をもとに支援が行われた熊本地震でも、国と被災地との間の情報共有がうまくいかず、被災者のニーズにあった物資を届けることができませんでした。そうした中で力を発揮したのが、生活協同組合グリーンコープ。ふだんから商品の注文・配達に使っているメールや電話で組合員から情報を得て、注文品を避難所の支援物資に回す決断をしたのです。日ごろの情報のやりとりが、迅速で適切な支援に生かされました。

東北発☆未来塾 防災の日スペシャル
生き延びるチカラ@熊本
(2016年9月4日放送)

おわりに
東日本大震災後、政府や自治体も災害への対応を強化してきました。それでも、各地の経験から見えてきたのは、いざという時にもっとも力を発揮したのは、日ごろから育んでいた住民同士のつながりでした。災害を乗り切るコミュニティの力を高めていきましょう。