日本での放送アーカイブの利活用促進につながる示唆を求めて、世界最大規模の放送(視聴覚)アーカイブ機関であるフランスのINA(国立視聴覚研究所)の最新動向や法制度を2回にわたり報告する。前編は、AIによるアーカイブの研究利用や、インターネットでのコンテンツ発信、社会貢献など、近年のINAの活発な展開の模様をリポートする。膨大な視聴覚アーカイブを収集・保存し、専門人材によってメタデータが整備される。法定納入制度のもと、原則すべてのアーカイブが研究目的で閲覧可能とされ、最近ではINAが開発したAIツールを用いた定量分析などにも利活用される。コンテンツ制作やSNSでの発信も盛んで、2022年には大統領選挙の候補者のアーカイブを活用した新たな政治番組が話題を呼んだ。映像販売などでは、顧客の要望に沿う柔軟な対応をすることで、INAのブランドイメージの向上に貢献している。受信料制度の撤廃など、公共放送のあり方が問われる中、アーカイブの専門性を生かして、教育現場や地域社会、海外の国々の課題解決のための貢献にも取り組み、メディアに対する信頼回復に努めている。
メディア研究部 大髙 崇
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