発掘ニュース

No.259

2020.03.06

情報番組

テレビジョン、60年前の魔術は??

今や4K、8Kで映像の美しさを追求するテレビ、その技術の発達は目覚ましいものがあります。今から60年前、テレビの本放送が始まって7年後には、一体どんな技術が“魔術”だったのでしょうか?

今回のお宝番組は1960年3月25日放送『科学の話題 テレビジョン』「第4回 光の魔術(特殊効果 その2)」です。この月は5回にわたって毎週金曜日の午後8時から教育テレビ「科学の話題」の中で『テレビジョン』を特集。

3月 4日  科学の話題 「テレビジョン」(1) ―テレビの歩み―
3月11日 科学の話題 「テレビジョン」(2) ―録画の話―
3月18日 科学の話題 「テレビジョン」(3) ―電子の魔術―(特殊効果)(1)
3月25日 科学の話題 「テレビジョン」(4) ―光の魔術―(特殊効果)(2)
4月 1日  科学の話題 「テレビジョン」(5) ―拡がる電波―(中継の話)

<このうち (2) (3) (4) が放送博物館からフィルムの状態で見つかりました>

番組は様々な光の演出の中で踊るバレリーナのシーンから始まります。まずは動画で番組の一部をご覧いただきましょう!

いかがでしたか?
“光の魔術”とはズバリ“光学的な特殊効果”のこと。
テレビ放送が始まって7年後のテレビ創成期、知恵を絞って様々なアナログ的手法で画面を演出していました。そのタネあかしを紹介した番組です。

たとえばバレリーナがたくさん!というこの映像は、“多重プリズム”をレンズの前で回転させています。もちろん手動です!

水面にバレリーナが映っているような映像。こちらはレンズの前に鏡を置いただけ。鏡の傾きを変えると水位が変わります。出演者いわく「スタジオに水を張るっていうのは大変なことですからねぇ」

こちらはさらに進んで水の中!金魚と一緒に踊るバレリーナ。金魚鉢を通して映した映像です。もっと大きな水槽を使うとバレリーナの焦点もしっかり合うとのことです。

ちょっと笑いを誘う技術も紹介。バレリーナのほっぺに緑色のメイクがしてあります。左側は普通の白いライトを当てていますが、右側のように緑色のライトを当てると、同じ色の緑メイクの部分は見えなくなります!白黒の放送ならではの“魔術”ですね。

レンズのマジックもご紹介。「わー!ずいぶん大きな手。」「これはレンズのいたずらで、テレビジョン用のレンズにはいくつも種類があるんです。」

「ふたりの人物配置がご覧のようになっているのをカメラで撮ってみると…」

「焦点距離が非常に短い35ミリのレンズですとお二人の距離が非常に離れて遠くに見え、遠近感が強くつきます。焦点距離が長い200ミリのレンズで見ると二人の距離は変わっていないのに、これだけ接近して見えます。」

場面の転換などに使われるこんな技術も…

「模様ガラス」です。左から右に画面が変わったり、ページがめくれるように場面が転換したりする“ワイプ”とよばれる技術を、当時は「模様ガラス」で行っていました。

ガラスを横に引いて、次の場面へと転換するのです。色々な模様のガラスを使い分けていたようです。

雲のような映像を投射するエフェクトマシン。サンタクロースが雲の中をソリに乗って飛んでいます。

太陽からの日差しが水面に反射してキラキラと顔に当たる様子…たらいに水を張りライトを当てて作り出した“手作り感”たっぷり演出です。

さらに、ピアノ演奏の様子を上の方から撮影している何気ない映像。現在ならばクレーンカメラを用いて簡単に撮れそうですが当時は…

ミラーショット」。鏡を2枚使って反射させた映像をカメラでとらえます!
スタジオの中でいかに映像効果を工夫するか?テレビ創世記の知恵の結集ですね。

最後にこちら!ちょっと怖い感じの映像ですが、実は赤外線を使った暗視カメラ「暗いところを撮影するのはテレビジョンにとっては得意な分野なのです」と説明しています。
この頃から既にこうした技術も使われていたのですね!

60年前の魔術、いかがでしたか?テレビジョンの技術は、知恵と工夫の積み重ねで発展してきました。4K、8Kの次にあるのは、はたしてどんな魔術なのでしょうか??

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