発掘ニュース

No.242

2019.08.30

趣味/教育

昭和48年『ピアノのおけいこ』発掘!動画も公開!

斬新、そして面白い!いまから46年前に、こんなピアノのレッスン番組があったのか!!そう感じる番組です。まずは動画『ピアノのおけいこ』を体感していただきましょう!

いかがでしたか?なにより講師の井内澄子(いのうち すみこ)さんのキャラクターと指導方法がユニークで、ピアノが弾けない私もひき付けられました!

『ピアノのおけいこ』は1962(昭和37)年4月にスタート、様々な方が講師を担当し1983(昭和58)年まで21年続いた長寿番組です。ご紹介した井内さんが講師を担当したのは…
♪ 1970年4月~9月 週2回(月・水 午後6時30分~7時)
♪ 1971年10月~72年3月 週2回(月・水 午後6時30分~7時)
♪ 1973年4月~74年3月 週2回(月・水 午後6時30分~7時)
♪ 1979年4月~80年3月 週1回(水 午後6時30分~7時)

今回発掘されたのは、井内さんが3度目に担当した1973年度。この年は1年間続けて週2回のレッスン計102回を担当!なんと、そのうち80回あまりが見つかりました!

◆では1973年4月2日、年度最初の放送の挨拶から井内先生の個性的なキャラクターを改めてご紹介しましょう!

「これから一年間先生をする井内澄子です。あれ、またあの先生だ~なんておっしゃるんじゃないかな。ホントはそんなこと言っちゃいけないんだけど、私は困ってるの。だって『ピアノのおけいこ』って結局やることは同じよね。…こないだ辞めたのが一年前でしょ。そうすると一年間経ったって突然、別のこと言えるわけ無いの。」

このように思ったことをストレートにお話しする先生です!

「それで前回見て下さった方は分かると思いますが、まず楽しくおけいこしましょう!
その代わりキチっと弾きましょうよ。あの先生厳しいなって言われること結構あるの。ピアノが上手いとか下手とか大事だと思わないのね。それよりも自分が何か探して、音で何か言えるようになりましょう。」

スタジオには1300人もの応募者の中からオーディションで選ばれた生徒の皆さんが!
小学1年生から大学生、そして主婦まで、決してピアノが上手な人を選んだのではないと井内先生は強調しています。

「今までのレッスンでは見たことの無いような大人もいます。なんだか小さいお友達もいます。これからピアノを始めようというお友達を選びました。大人の方で趣味でピアノを弾いている方のために大人の方も。いろんなタイプの愉快な楽しいお友達を選びました。」

そして井内先生、ご自分で話しているように厳しいです!

「さっきお聞きになった方は分かると思いますが、まだ譜とピアノがくっ付いてないのね。逆に譜とピアノがくっ付き過ぎて機械みたいに弾く子供がすごく多いです。オーディションで聞いていて気が付いたことですが、みんなの水準はきちっと弾いている。感心しちゃったの。けれども、楽譜の音とピアノの音が真っすぐにつながって、そこに誰がいるのか分からないの。機械が弾いているんじゃないかなという気がする。」

お話を聞いていると、『ピアノのおけいこ』でピアノを学ぶ人たちが、みんな高い所を目指して欲しいという願いが、井内先生の厳しさの裏側にあるのが分かってきます。

「趣味の人のピアノと専門の人のピアノとの違いはどこかというと、かける時間の違いだと思うんです。専門家の人は演奏会のために短い時間でノロノロせずに準備をしなければなりません。趣味の人は、専門家が一週間でやることを1か月かけても良いと思うんです。でもやることは専門の人と同じことをやって欲しいんです。趣味だといっても良いピアノを弾きたいでしょ!そういう意味で少しうるさいですけどやってくださいね。」

◆その井内澄子さんは今もお元気!電話でお話をうかがうことが出来ました。
東京都内にお住いの井内さんは現在89歳。番組で子供たちを指導していた時と同じく明るく元気な声でした!

Q 「ピアノのおけいこ」のことは覚えていらっしゃいますか?
「もちろんよく覚えています。1970年から80年まで10年間、飛び飛びですが長い間担当しましたから。」

Q どういう経緯で講師を担当することに?
「私はピアニストとして演奏中心の活動をしていたんです。人を教えることはできないと思って、大学などからお願いされてもすべて断っていました。ところがNHKの顔見知りのディレクターさんから“教えたことが無い人が教えた方が面白い”と説得されて、これまでと全く違う発想の番組が生まれたんです。」


毎回、井内さんのピアノ演奏の時間も

Q かなり斬新なレッスン番組ですよね?
「スタジオで教えるだけでピアノをうまく弾けるようになる番組を目指しました。ほかでは一切練習させずに…。生徒の皆さんを選ぶときにも、上手な子は落として、例えばいきなりゲンコツで鍵盤をなぐり始めた男の子とか、家にピアノが無い子を選んだりしました。」

「レッスンの内容は毎回変えて、知恵を絞るのが大変でした。ディレクターさんが、“今度は何をしますか?”って(笑)テレビなので目にも訴える方法を考えました。

例えば、砂箱をスタジオに入れて子供たちに穴を掘らせて、指のタッチの感覚を感じてもらう練習をしたり。

練習してきたことの発表も、スタジオでぶっつけ本番でするのですが、皆さんが上手になっているのを聞いて本当に感激したのを覚えています。」

Q 反響はいかがでしたか?
「出演してくれた子供たちやテレビを見てくれていた視聴者の方とは、今でもつながりがあるほどです。九州に住んでいる女性は生徒として出演した当時のテレビの音を録音していて、今でも毎日聞いていますとお手紙をくれました。ピアノが上手だけど生徒のオーディションで落としてしまって“どうして駄目なの?”と聞いてきた子ともいまだにお付き合いがあります。」

Q ビデオに録画は?
「高いビデオデッキと1本1万円のビデオテープを買って録画していたのですが、テープにカビが生えてしまいNHKにテープもデッキも差し上げてしまいました。」

今回の映像は、井内さんがNHKに提供してくださったあと長い間再生が出来なかった1/2オープンリールテープをデジタル化する事が出来、アーカイブスに登録することになったものです。

井内さんは、89歳の現在も音楽大学の先生をはじめプロを教える指導者として現役で活動されています。『ピアノのおけいこ』という番組がきっかけで“教える”ことに目覚めた井内さん、これからもご活躍ください!そして貴重なビデオをありがとうございました!

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