主に子どもが感染し、発熱やのどの痛みなどの症状が出る「溶連菌感染症」の流行が続いています。薬を飲めばすぐに症状が治まりますが、感染後しばらくして体のむくみといった、合併症が出るケースが増えています。中には入院に至る場合もあって、専門家が注意を呼びかけています。
主に子どもが感染し、発熱やのどの痛み、体に赤い発疹といった症状が出る「溶連菌感染症」の一種、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎が流行しています。
去年11月から12月にかけて、過去10年間で最多を更新しました。
1月14日までの1週間に報告された、1医療機関あたりの患者数は
▼神奈川県で2.21人
▼東京都で2.85人
▼埼玉県で2.99人
▼千葉県で3.74人となっています。
溶連菌感染症は抗菌薬を飲めばすぐに症状が治まります。
症状が風邪と似ているため、そもそも病院に行かない人も多いとされています。
都内に住む6歳の男の子は先月中旬に発熱しました。
症状はすぐに治まりましたが、1週間ほど経った朝、トイレでおしっこをした際、血が混じっているのに気づきました。
足や顔にむくみが出て体重は2キロ増加し、血圧も大きく上がりました。
病院を受診すると腎臓の働きが低下していることが判明。
溶連菌に感染したあとの合併症、「急性糸球体腎炎」と診断され、すぐに入院しました。
入院生活は2週間あまり続き、クリスマスもお正月も病院で過ごすことになりました。
退院したあとも経過観察を続けています。
症状が出たときは、不安で仕方ありませんでした。祖母とクリスマスケーキを作るのをすごく楽しみにしていたので、子どもには申し訳なかったかなと思います。むくみに早く気づいていればもう少し早く治療できて、状況も変わっていたのかなと思います。
子どもの腎臓病に詳しい横浜市立大学附属病院小児科の伊藤秀一教授によりますと、溶連菌の合併症は腎臓に出やすいといいます。
上の写真は、左が正常な腎臓、右が合併症になった腎臓の組織のものです。
合併症の腎臓の写真では、免疫細胞が集まって、炎症が起きている様子が見て取れます。
発熱などの症状が治まったあとも、溶連菌の一部が排出されず、腎臓に残ってしまうというのです。
合併症は感染後2週間から4週間程度で発症し、体のむくみや血尿や高血圧といった症状が特徴で、重症化するケースもあるといいます。
伊藤教授
おしっこが全く出なくなると血圧が上がってけいれんが起こることや、心不全や、肺に水がたまる肺水腫が起きることが、ごくまれにあります。
基本的には降圧薬や利尿薬などで改善しますが、重症化するお子さんがいるのも事実です。
伊藤教授によりますと、合併症の患者は半年前まではほとんど見られませんでしたが、溶連菌感染症の流行に伴って増えているといいます。
神奈川県内の11か所の中核病院にアンケートを行ったところ、去年の上半期は例年どおり数例でしたが、下半期では5倍以上に増えていたということです。
合併症を防ぐためには溶連菌の感染を早く見つけて治療することが重要ですが、全国的に検査キットや治療薬が足りていません。
伊藤教授は溶連菌への感染が分かっていなくても、発熱やのどの痛みなどの症状があったら、4週間程度は体調に気をつけてほしいとしています。
伊藤教授
かかりつけ医に早朝の尿を持って行って調べてもらうこと。近くに小児科医がいない場合は、ドラックストアでたんぱく尿や血尿を調べるテープがあるので、週に何回か調べたり、朝の体重を見て、変化があったら受診するという方法も有効だと思います。
溶連菌感染症は主に冬に流行するため、しばらくは注意が必要です。
溶連菌の合併症にかかると、ごくまれにですが、長期間にわたって腎臓が元に戻らない場合もあるということで、伊藤教授は異変に気づいたらすぐに医療機関を受診してほしいと話していました。