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相模原市 障害者等へのヘイトスピーチ禁止条例制定へ

  • 2023年11月16日

7年前、知的障害者施設で、入所者19人が殺害される事件が起きた相模原市。
市が障害者へのヘイトスピーチを禁止し、確認された場合は概要を公表する条例案をまとめたことが、関係者への取材で分かりました。
障害者へのヘイトスピーチの公表について、条例に盛り込まれれば、全国で初めてだということです。

ヘイトスピーチを禁止

相模原市がまとめた条例案は、障害に加え、人種・民族・国籍を理由にしたヘイトスピーチを禁止します。

▼ヘイトスピーチ確認されれば公開の規定
障害を理由にしたヘイトスピーチについてはその概要を、人種・民族・国籍を理由にしたものについては、勧告・命令を経て、改善されなければ氏名などを公表するとしています。
人種や民族などを理由にしたヘイトスピーチについては、公表を盛り込んだ条例が各地で施行されていますが、市によりますと、障害を理由にしたヘイトスピーチを公表するのは、全国で初めてだということです。

▼人権委員会設置や声明発出も
ヘイトスピーチにあたるかどうか審議する、有識者の「人権委員会」を設置することや、悪質なヘイトスピーチに対して市長が声明を出すと行った内容も盛り込まれました。
市はいずれも全国的に例がない内容だとしています。

条例制定目指す背景は

最も大きな背景は、7年前、市内の知的障害者施設、津久井やまゆり園で入所者19人が殺害される事件が起きたことです。
死刑判決を受けた元職員は、裁判で障害者に対する差別的な発言を繰り返しました。
差別は今も続いています。

相模原市が調査した書き込み

ことし5月に市が調べたところ、インターネット上の匿名の掲示板には、死刑判決を受けた元職員の差別的な考えを肯定するものや、「障害者は社会に迷惑をかけるだけ」とか、「税金を使って生かしていると思うと腹が立つ」といった差別的な書き込みが、あわせて12件確認されました。
こうしたことから、市は事件を風化させず、障害者への差別を決して許さないという姿勢を示したいと、条例の制定を目指しています。

これまでの経緯は

相模原市では、市の中心部で外国人への差別的な街頭宣伝が行われたり、インターネット上で差別をあおる書き込みが後を絶たないことなどから、2019年に有識者などによる審議会を設置し、ヘイトスピーチを禁止する条例の検討を進めてきました。

ことし3月に審議会が出した答申には、▼人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由とするヘイトスピーチについて、概要を公表することや、▼著しく悪質な場合は過料や刑事罰といった罰則を付けることなどが示されました。

答申を受けて、市は弁護士や大学教授といった専門家に見解を求めたり、市内の人権に関わる団体にアンケート調査を行ったりして検討を重ねてきました。

罰則は盛り込まれず

その結果罰則については市内のヘイトスピーチの現状や、憲法の表現の自由との関係から、盛り込むことは難しいと判断したということです。

「画期的だ」

全国の障害者団体でつくる「DPI日本会議」の佐藤聡 事務局長は、今回の条例案が、障害者へのヘイトスピーチについて、概要を公表する規定を設けていることについて、ほかに例がないもので、画期的だとしています。
障害者本人に対して、差別的な言動を行うケースは減ってきているとしながらも、SNSなどでのバッシングはまだまだ多いとしています。

佐藤事務局長
差別は無くしていくんだという 強い姿勢を示す意味でもとても重要だと思う。条例に先進的なことを盛り込んでもらうことで、社会に対する影響力は出るし、全国でも同じようなものを作ろうという動きが出てくるのではないか。とても良い影響を与えると思う。
ヘイトスピーチは罰則をかけないとなくならないのではないかという思いもある一方で、自治体が罰則を付けることが難しいということは理解できる。 自治体から国レベルで法律ができるということもあるので、今後もチャレンジしてほしい。

2024年4月の施行目指す

相模原市役所

市はパブリックコメントを行った上で、来年3月の市議会に条例案を提出し、4月の施行を目指すことにしています。

  • 高橋哉至

    横浜放送局 厚木支局記者

    高橋哉至

    平成30年(中途採用で)入局。 初任地は宇都宮。厚木支局で地域の課題やスポーツ関連の話題を取材。

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