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リコール経た真鶴町長選挙 “新町長”は町外出身者

  • 2023年11月20日

11月12日、神奈川県真鶴町で、前の町長のリコール=解職請求の成立に伴う町長選挙が行われました。当選したのは、元横須賀市議会議員の小林伸行氏。1981年から町役場の出身者がトップを務めてきた町で、およそ40年ぶりに町役場出身ではない町長が誕生しました。その背景や今後の課題は?

●真鶴町の新町長は“町外出身者”

11月12日、真鶴町に新しい町長が誕生しました。
当選したのは小林伸行氏。横須賀市議会議員を4期目の途中で辞職して立候補した“町外出身者”です。
今回の選挙は、小林氏と、真鶴町役場で総務課長などを務めた元幹部職員との事実上の一騎打ちになりました。
1981年以降、40年余りにわたって町役場の出身者が当選を重ねてきた真鶴町。
選挙戦が始まった当初は、真鶴生まれ真鶴育ちの元職員の候補が有利とみる声が多くありました。
しかし、選挙期間中は、地方自治の改革を訴えてきた小林氏のもとに、議員時代から交流してきた全国各地の地方議員や市長らが次々と応援に駆けつけたほか、町民からは「町政を刷新してほしい」という声が相次いで聞かれました。

今の町政はマンネリ化してしまっている。役場の出身者では新しくするのは難しいのではないか

役場の中がゴタゴタしているとも聞くので、そうしたことがなくなればいい

今の真鶴町には、少子化対策や福祉充実、インフラ整備など政策的にしなければいけないことがたくさんあって、対立している場合ではない

開票の結果、小林氏と次点の候補は最終的に531票の差がつきました。
得票率でみると小林氏がおよそ53%、次点の候補がおよそ39%と、14ポイント差で、小林氏の圧勝ともいえる結果になりました。
こうした民意をどう受け止めたのか、小林氏は次のように話しました。

 

選挙の1か月前に引っ越してきたときには、敵も味方も1人もいなかったが、町民から「今のままじゃダメだ」などという声を多く聞いた。そろそろ前向きな仕事をしてほしいという空気を感じた

一方、敗れた元町役場幹部の候補は、次のように振り返りました。

細田政広氏

これまで地元の人が町長を担ってきたなかで、新しい風を吹き込みたいという意見が多かったのではないか

●前町長時代に町政混乱 影響なおも続く

今回の町長選挙は、前の町長が選挙人名簿を自身の選挙に不正に利用したことを発端に、リコールが成立したことに伴って行われました。
不正が発覚したのは2021年11月。
そして、リコール成立までの1年9か月の間に、町政は大きく混乱することになりました。

その1つが、役場の職員構成です。
およそ100人いる職員のうち、2023年9月までに24人が中途で退職。
補充を進めて職員数はほぼ維持していますが、入庁5年目までの職員が40%以上を占める事態になり、屋台骨となる中堅職員が少なくなってしまいました。
このため2023年度は、「通常業務を行える基礎体力を養う必要がある」として新規事業は実施されませんでした。

真鶴港

また、影響は町の漁業の拠点である真鶴港にも及びました。
これまでは県の委託を受けて町が管理してきましたが、「町政が混乱している」として、来年度から県が直接管理に乗り出す事態になったのです。
こうした影響について、町長が不在の間、職務代理者を務めてきた幹部職員は苦しい胸の内を語りました。

真鶴町 上甲新太郎 参事

ことばが難しいが、やはりこの2年間は混乱の時代だったと思う。役場に入ってきた職員は一生懸命頑張ってくれているが、本来であればマネージャーとして課を統括する課長でさえも今はプレイングマネージャーになっていて、教育・指導が行き届いていない面は否めない

●新しい真鶴町役場が始動

町政をめぐるこうした厳しい現状に、小林新町長はどう対応していくのか。
11月14日、町役場に初登庁した小林町長は、幹部職員を前に、自身が大学院で学んだ経験を引き合いに出して「職員研修に力を入れる」と述べました。

小林新町長と幹部職員の会議

今は知見が大事な時代だ。やる気があって見どころがある人には、どんどん研修を受けてもらい、公費で大学院などでスキルアップする機会も設けたい。これから皆さんの意見を聞きながら議論を深め、施策に取り組んでいく

●取材を終えて

前町長の選挙人名簿の不正利用問題をきっかけに大きく揺らいでいる真鶴町役場。しかし、役場内からは「職員は着実に経験を積んできている」という前向きな声も聞かれます。新しい町長には、役場内の足元を固めるとともに、人口減少対策など積み残されている課題や、新しい町の方向性の打ち出しなどを着実に行っていくことが求められています。町民や職員と対話を重ねて、どのように町政のかじ取りを行っていくのか、今後も取材を続けたいと思います。

  • 北村基

    横浜放送局小田原支局

    北村基

    2017年入局。宇都宮局を経て2022年8月から小田原支局。神奈川県西部の行政、事件などを担当。

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