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川崎 在日コリアンはなぜ日本に? ハルモニの思い映画で知って

  • 2023年07月04日

インターネット上で後を絶たない、在日コリアンたちへの「日本から出て行け」といった差別的な書き込み。
川崎市では3年前、街頭やネット上での差別的な言動を禁じる条例が施行されましたが、いまもこうした書き込みは後を絶ちません。
そんな中、在日コリアンのおばあちゃん=ハルモニをテーマにした映画が完成しました。
差別をする前に相手を知ってほしい。込められた思いを取材しました。

ハルモニたちのことを知って

映画「アリランラプソディ~海を越えたハルモニたち~」
映っているのは、川崎市の在日コリアンのおばあちゃん=“ハルモニ”たちです。
たくましく日々を生きる姿が記録されています。

一方で、そんなハルモニたちが住む町に向けて行われた、ヘイトスピーチのデモも描かれています。

映画を撮影したのは、在日2世の金聖雄監督です。
20年以上にわたりハルモニを撮り続けています。
金監督は、ヘイトスピーチが後を絶たないのは、ハルモニたちのことがほとんど知られていないからだと考えたといいます。

金聖雄監督
ハルモニたちが、何でこの日本にいるのか、何でここへ来たのか。
どうしてここで生きざるをえなかったのか、まさに生涯をここで終えようとしているのかということが、すっぽり抜けてるような気がしたんです。

生きていくため海を渡った

徐類順さん

映画ではハルモニたちが海を渡らざるを得なかった事情が描かれています。
徐類順(ソ・ユスン)さんは97歳。
日本の植民地だった朝鮮半島から、仕事を求めて14歳で日本に来ました。
終戦とともに朝鮮に戻りますが、厳しい暮らしの中で母と夫が亡くなりました。
さらに、朝鮮戦争にも巻き込まれ、命からがら日本に戻ってきました。

徐類順さん
死ぬ覚悟で行ったり来たりした。
そのときに死んでしまえば一番幸せだったかもしれない。
いままで生きてきていいことが一つも無かった。

日本で生まれ育っても苦難の道

石日分さん

一方、日本で生まれ育ったハルモニも苦難の道を歩みました。
石日分さんは(ソク・イルブン)92歳。
日本で生まれた在日2世です。
戦後サンフランシスコ平和条約の発効に伴い、日本国籍を失いました。
職を転々とした石さん。
年金を受けられず、85歳まで働きづめの毎日でした。

石日分さん
戦争が終わって解放されたら、日本人に同化していたのに、また差別されるようになっているんです。

金聖雄監督
悲惨な状況だったので、どこに行けば生きていけるかっていうことを考えて、生活の場を日本に求めるしかなかった人たちがやっぱり残っていったんですね。

週に1度集まり、学ぶ

働き続けてきたハルモニたち。
身につけることができなかった日本語の読み書きを、いま学んでいます。
少しずつ自分の気持ちを表現しようとしています。

金聖雄監督
植民地支配や戦争っていう背景の中で、どうしてこんなに強いんだろう、優しいんだろうと。僕にとっては輝いて見えます。

日本人へのメッセージ

6月25日、在日コリアンが多く暮らす京都で、初めての試写会が行われました。
困難な時代を必死で生き抜いてきたハルモニたち。
覚えた字で呼びかけたのは、日本人に向けた「皆さん、なかよくいきましょう」というメッセージでした。

会場を訪れた人たちからは、「歴史がよく分かって、涙なしではみられませんでした」とか、「私たちが受け止めないといけないとおもいました」といった声が聞かれました。

金監督
ハルモニたちの生き方を、映画を通して感じてもらうことで、一歩お互いが歩み寄れるようになっていけばいいなって思います。
何よりもまずはハルモニたちを見てほしいと思います。

この冬劇場公開予定

映画は、8月に川崎市内で特別上映会が開かれます。
劇場公開は、この冬の予定です。
詳しい情報はこちらのホームページで公開されています(NHKのサイトを離れます)。

  • 佐藤美月

    横浜放送局 記者

    佐藤美月

    2010年入局。甲府局、経理局を経て2021年7月から横浜放送局。川崎市政を取材。

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