横浜市によりますと、令和3年度(2021)、市のDV相談支援センターに寄せられた相談件数は1091件。このうち、男性からの相談は15.6%を占めました。8.5%だった4年前に比べると、2倍近くに増えるなど、近年、増加傾向にあると言います。
横浜市によりますと、男性から寄せられた相談の中には「デートDV」と呼ばれる、配偶者からではなく、交際相手から暴力を振るわれるケースが含まれていると言います。
具体的には、次のような相談が寄せられています。
男性が受けるデートDVの実態について、大学生の時に、交際相手から暴力を振るわれていたという神奈川県外の男性に、話を聞くことができました。
具体的に、どのような被害を受けたんでしょうか?
高校時代から交際していた女性が、パニック状態や、うつがひどい時に暴れる。物を投げ出したり、物に当たりだしたり・・・。発狂のような錯乱状態になった時に、ぼくがそれを止めようとすると、僕に向かっても蹴ったりとか殴ったりとか、そういうことがありました。
暴力を振るわれて、どう対応したんでしょうか?
別れてしまえばそれまでっていうのはあるんですけれど・・・。やっぱり付き合っている中で、普通のパートナーとしての信頼関係とか愛情みたいなものももちろんありますし。それに加えて、パートナーにうつ病とかの問題があって「助けなきゃ」っていう意識が強くて。自分が暴力を振るわれていることに対しても、悪いのは彼女だけれども、それ以上に、向こう(パートナー)の家庭環境をなんとかしなきゃと。別れるということよりも、彼女を助けるみたいなことばかり考えていました。
周囲に、相談はできなかった?
「男性が殴られるのは恥ずかしい」ということは、もちろんぼくにもありましたので、周りに相談した際も、殴られたとか蹴られたっていうのは隠していました。主に、SNSでの暴言などを伝えていたので・・・。もし実際に殴る、蹴るの暴力を受けているんだっていうところまでその時に伝えられていたら違ったのかなっていうふうに思います。
男性から、DV被害の相談が増えているのはなぜなのか?理由については横浜市政策局男女共同参画推進課の齋藤亜希課長は、「男だからこう、女だからこう」など、性別による無意識の思い込み、「アンコンシャスバイアス」への問題意識への高まりが、背景にあると分析しています。
一方で、潜在的な男性の被害はまだあると見ていて、対応が必要だと言います。
「件数が増えたといっても、潜在化している相談者はいると思うんですね。相談できない理由として考えられるのが、固定的な性別役割分担意識で、やはり「男性らしさ」「女性らしさ」と言われている中で、男性はどうしても「泣くな」とか「強くいろ」というようなことから、相談するのをちゅうちょしているっていう方が多いと思います。」
また、市では、男女問わず10代、20代の若年層が被害を受けやすい「デートDV」への対策を急いでいます。横浜市内では、3年前に(2020年)、市と連携しているNPO法人が、チャットでの「デートDV」相談を始めました。去年1年間に、チャットで寄せられたデートDVに関する相談件数は1356件。電話相談の件数(去年1年間で464件)を大幅に上回りました。このため、横浜市はことし3月、NPO法人に委託する形で、チャットでの専用相談窓口を設けました。
チャット相談窓口では、平日と土曜日の午後7時から午後9時まで、専門の相談員が応じています。
被害にあわれてる方は、「知られたくない」ということもあると思うんです。そういうことからも、なかなか自分の友達とか、家族とかにも相談できないということもあると思います。チャットでの相談は、相談のハードルを下げるっていう意味でも、かなり皆さんに寄り添った支援になると思っています。
チャットでの相談窓口ができたことについて、今回、取材に応じてくださった男性も、被害に会ってる人の支援につながるのではと期待を寄せています。
当時、「相談できない」「頼れない」ということが一番つらかったです。やはり、電話よりもチャットのほうがだいぶ心理的なハードルは低いと思います。デートDVにチャットの相談窓口があるというのは非常に利用しやすいですし、多くの人が利用できたらいいと思います。