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東京都 2024年度から「授業料無償化」どんな制度?対象は?

  • 2024年1月23日

東京都が、高校や都立大学で、来年度(2024年度)から実施する授業料の実質無償化。これまであった支援の所得制限を撤廃することで、親の経済状況にかかわらず、授業料を言わば「タダ」にしようという取り組みです。また、私立中学でも、年間10万円の補助について所得制限が撤廃されます。具体的にどのような制度なのか。まとめました。
(首都圏局/記者 尾垣和幸)

対象は?具体的制度は?

Q. 来年度から授業料が実質無償化されるのは、どの学校?

▽都立・私立高校 
▽都立大学
▽都立産業技術大学院大学
▽都立産業技術高等専門学校
です。

Q. 具体的にどのような制度になっているの?

(1)高校について
【これまで】
910万円未満の世帯年収を目安に支援がありました。
都立では、国の支援で無償化されていました。
私立については、都が、国の支援に上乗せして都内にある高校の授業料の平均にあたる47万円余りを上限に助成するなどしていました。
【今回の制度】
910万円未満の世帯年収の目安を撤廃します。
条件は、保護者が都内に住んでいることで、都外の私立高校に通っても対象となります。

(2)都立大学 都立産業技術大学院大学 都立産業技術高等専門学校について
【これまで】
478万円未満の世帯年収を目安に無償化されていました。

【今回の制度】
条件を満たす、すべての人が対象となります。
条件は、生活費を負担する親や親族などが都内に住んでいることです。ただ、世帯年収が478万円未満の世帯は、親などが都外に住んでいても引き続き対象です。

(3)私立中学について
【これまで】
910万円未満の世帯年収が目安に、授業料について、都が年間10万円を上限に補助していました。
【今回の制度】
910万円未満の世帯年収の目安を撤廃します。
条件は、保護者が都内に住んでいることで、都外の私立中学に通っても対象となります。

Q. 申し込みはいつから始まる?どうすればいい?

都によりますと、支援を受けるには、いずれも申請が必要だということですが、申請開始の時期や方法については検討中だということです。

所得制限撤廃の理由は

Q. なぜ所得制限を撤廃するの?

都はその狙いとして「家庭の経済状況にかかわらず、子どもたちが希望する進路を選択でき、安心して学べる環境を実現するため」と説明しています。一定の所得があり、制限にかかって支援が受けられないため、行きたい学校を断念していた子どもたちのための取り組みと言えます。

Q. 所得制限の撤廃で、希望する進路を選択できるようになる子どもはどのぐらいいるの?

都によりますと、今回の所得制限の撤廃で、私立高校では、およそ9万9000人、都立高校では、およそ4万4000人、都立大学、都立産業技術大学院大学、都立産業技術高等専門学校ではあわせておよそ1000人が、新たに支援の対象となるということです。都はこれらの所得制限の撤廃にかかる経費として、令和6年度・新年度予算案におよそ555億円を新たに盛り込むことにしています。
ただ、今回の取り組みで、支援の対象は広がりますが、一定の所得がある世帯のため、もともと比較的自由に進学先を選択できていたケースもあるとみられます。

教育格差に詳しい、龍谷大学社会学部の松岡亮二准教授は次のように指摘しています。

松岡亮二 准教授
「今回の取り組みでで進路希望を変える子はどれぐらいいたのかなどを調査し、少子化対策に本当につながるのか、今後、効果を検証する必要がある。また、入学金や、制服代、修学旅行のお金など、高校では授業料以外にもたくさんお金がかかる。所得の低い家庭にとっては授業料への支援だけでは、私立校が現実的な選択肢に入らないと思うので、さらなる支援も検討する必要がある」

高校の授業料への支援については、東京都のほかにも、大阪府が、公立、私立ともに、910万円未満の世帯年収を目安とする所得制限を撤廃する制度の案を明らかにしていて、来年度からは対象となる学年を広げていき、段階的に無償化することにしています。
誰もが子育てしやすい環境を整備するため、どのような支援が必要なのか。今後も取材を続けたいと思います。

  • 尾垣和幸

    首都圏局 記者

    尾垣和幸

    都庁担当 東京オリンピック・パラリンピック競技会場のレガシー活用などを取材。

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