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杉並区議会 4会派の幹事長に聞く 岸本聡子区政への評価など ~回答を全文掲載

  • 2024年1月19日

「首都圏情報ネタドリ!」では、杉並区議会の議員が6人以上所属する4つの会派の幹事長に、岸本聡子区政への評価などを尋ねました。回答は去年12月時点のものです。字数の制限は設けていません。このページでは回答の全文をそのまま掲載します。

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

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Q1. 女性が半数となった杉並区議会の変化についてどのように感じていらっしゃいますか?


自民党・無所属杉並区議団 吉田愛 幹事長
私自身も女性であり、これまでも1/3程度が女性でありましたので、特段、このような視点での変化は感じていません。


立憲民主党杉並区議団 樋脇岳 幹事長
育児中の女性議員や保育士経験を持つ議員が増えたことによって、子育て施策について多角的なアプローチで活発に議論が行われるようになり、また単身女性への支援策が取り上げられるなど、これまでに議会の場で取り上げられてこなかった区民の声がクローズアップされるようになっています。

一方で、これまでの議会で見られなかったような女性区長および新人女性議員への侮蔑的な態度がヤジなどに顕著に表れています。これは、以前より内在してきたミソジニーが顕在化したものと捉えています。新人女性議員が発言を躊躇するようなことが起きれば、代弁されるべき大切な区民の声が失われることになると受け止めており、議会内でのハラスメント行為への対策に取り組む必要性を認識しています。


杉並区議会公明党 川原口宏之 幹事長
今回初当選された議員の方々は、新人でありながらも、質問や意見をご自身の理念に基づいて、ご自身の言葉で発言できる、しっかりした議員が多いという印象を受けている。

人それぞれ個性があり、議会構成において短絡的に男女の比率が重要とは考えない。どのような属性・立場の人であっても、他人の人権を重んじ、区政の発展と区民福祉の増進に全力で寄与する議会でありたい。


共産党杉並区議団 山田耕平 幹事長
女性議員が半数となることで議会での質問テーマが幅ひろくなり、より活発になりました。これまでも、ジェンダー平等推進や女性の視点にたった防災対策、環境・気候危機などの質問はありましたが、女性議員が増えたことにより、取り上げる議員も増え、質問の内容もより幅広くなりました。また、子育て中の議員も増え(男女問わずですが、特に母親が増えた)、子どもの居場所や障害者施策、不登校問題などについて、自分の経験や実感にもとづいた質問・提案を行っていることも歓迎しています。

女性議員の関係者や傍聴者も増えており、区政への関心が高まっていることも感じています。地域問題など区政に関心を持つ区民が増えたことも大切な変化だと考えています。

Q2. 岸本区政をどのように評価していますか?

杉並区 岸本聡子区長


自民党・無所属杉並区議団 吉田愛 幹事長
Q4.の質問にも関連しますが、長期最適の視点が不十分と考えられ、課題の多い区政だと感じています。


立憲民主党杉並区議団 樋脇岳 幹事長
杉並区には、原水爆禁止署名運動の頃より、その時々の課題について住民が主体となって自分たちの社会のあり方を決めようとする住民自治の運動が脈々と続いてきた歴史があります。こうした市民の意思と行動が2021年の衆議院選挙で吉田はるみ衆議院議員を誕生させ、その流れを受けて市民運動の力によって岸本聡子区長が誕生しました。

前区政では、区立施設再編整備計画や都市計画道路等、区民生活やまちづくりにかかわる重大事項について、住民意見に向き合わずに区が一方的に決定する姿勢が顕著でした。その中で、経済効率の名の下に児童館やゆうゆう館など、区民のための福祉が削減されてきました。
岸本区政に変わってからは、重要計画について素案の段階から住民に意見を聞く取り組みや、区長と区民の対話の取り組み、区民参加型予算など、住民意見に向き合う区政運営が進められています。区立施設についても、地域ごとに住民対話でどういう施設が必要なのか話し合って決めていく方針が打ち出されました。試行錯誤の段階ではあるものの、対話の場に参加した住民はもとより、区の職員にとっても好意的な反応が見られたことは重要な一歩です。

同時に、パートナーシップ制度の創設や、今後進められていく子どもの権利条例の制定など、岸本区政下で人権尊重の姿勢が強まり、また同時に、子どもの居場所づくりの検討や家賃補助制度の創設など、区民福祉の充実がはかられるようになりました。
「区民一人ひとりの人権が尊重され、誇りを持って区政に参画し、協働する「自治のまち」を創っていくことを目指し」て制定された、杉並区自治基本条例に則った区政運営が少しずつ着実に進んでいることを評価します。


杉並区議会公明党 川原口宏之 幹事長
政治の経験も、行政の経験も、杉並区で生活した経験も無かった方が、いきなり区長になって、公約と現実とのギャップに苛まれながら、なんとか少しでも自分らしさを出そうとしているようにも見受けられる。仮に、区長が公約にこだわり過ぎ、前区政との差別化を強調するあまり無理に計画を変更したり、敢えて立ち止まったり、いたずらに時間を費やすことがあれば、区民にとって負の影響が発生しかねない。この点について重々承知されることを区長に求めたい。

その一方で、我々が要望し、推進してきた区民福祉の増進に資する政策を、都との連携や補助事業を活用したものも含め、適切に実現している側面もある。
(例えば、高齢者補聴器購入助成、帯状疱疹ワクチン接種助成、がん患者アピアランスケア支援、光熱費高騰緊急対策助成金、自転車用ヘルメット購入助成、食品ロス削減モデル事業、杉並サイエンスラボ新設、区立ドッグラン新設、ICTを活用した不登校対策、等)

また、財政運営に関しても、我々が以前より主張している「財政の健全性・持続可能性」と「区民福祉の増進」の両立を意識した仕組みを前区政から踏襲していることは評価している。


共産党杉並区議団 山田耕平 幹事長
岸本区長のもとで、住民自治の実現を目指し、様々な努力が行われています。住民との対話の機会の保障、(後述しますが)住民参画によるまちづくりの検討、区立施設のあり方も住民との協議によって検討、等々です。これらの取り組みは、これまでの区政では極めて不十分だったことです。こうした取り組みは時間もかかりますが、これまで区に意見を上げても無視され続けてきた住民から歓迎の声が寄せられています。

さらに、情報公開を徹底する努力が始まっており、就任直後から情報公開を推進しています。前区政のもとで、情報が黒塗り・延長の連続でしたが、新たな区政は「区政の情報は区民のもの」とし、原則14日以内の開示の徹底を図り、非開示の場合も「客観的具体的に合理的理由」を説明するとの通知を発出。私たちが過去に黒塗り扱いを受けた非開示情報が、全面公開となったケースもありました。前区長のもとで問題となってきた公用車の乱脈運行や利害関係者とのゴルフ問題についても、区長専用車を廃止し、職員倫理規程の見直しを始めています。

他区に後れをとっていた福祉施策も前進しています。既に17区で実施されていた高齢者の補聴器購入費助成が始まり、先の議会では、利用者増加のため追加予算も組まれました。全小中学校女子トイレへの生理用品配置、重度障害者の就労支援等が開始されたことも各分野から歓迎されています。住宅施策でも23区中19区で実施している家賃助成を令和6年度から実施することを表明しています。教育施策では、前区政で引き下げられた就学援助の認定基準が引き上げられ、対象が拡大されました。性を理由とする差別の禁止やパートナーシップ制度等を含む性の多様性条例の制定。深刻化する物価高騰への対策として、区内事業者に対する電気・ガス代の値上げ分への支援が示されました。
区長就任から1年半程度の短期間で、こうした変化が始まっていることは、岸本区政の前向きの変化と受け止めています。

Q3. 給食費無償化に関する考え方をお聞かせください


自民党・無所属杉並区議団 吉田愛 幹事長
私立や特別支援学校、不登校等の児童・生徒への支援を外し、区立小中学校のみに区独自財源で行うことは、公平性や優先順位などの観点から課題が多く、国や都の動向を注視しています。


立憲民主党杉並区議団 樋脇岳 幹事長
子育て施策の観点から、給食費の無償化に踏み切った杉並区の取り組みは重要なものと受け止めています。また、教育の観点からも、日本国憲法第26条に定められた義務教育の無償化の実践として評価します。本来、給食費の無償化は国が取り組むべき課題だと考えていますが、国が行わない現状では、住民に最も近い基礎自治体としての杉並区が他の特別区とともに率先して取り組むことは意義のあることだと考えます。こうした動きを受けて、東京都も財源を部分的に負担する方針を打ち出しました。杉並区をはじめとする特別区の取り組みが、国の施策を動かすことにつながることを期待しています。

杉並区では区立学校が対象となっていますが、障がいがあることで区立学校ではなく都立の特別支援学校に通っている児童生徒もいることをふまえ、都立学校も給食費無償化の対象にすべきだと考えており、会派として早期実現を区に要望しています。

また、給食費が私費会計となっている点については国も指摘している通り、早期に改善すべき問題であると考えています。区としても公会計化に取り組むということを確認しています。


杉並区議会公明党 川原口宏之 幹事長
実施にあたっての諸課題
(1)財源の確保 
(2)人材確保、ICT化、部活問題など、学校現場においては他にも取り組まなければならない喫緊の課題あり
(3)区立以外の、都立・国立・私立の児童生徒も対象とすべき

上記3点の課題について
(1)→ 今回は前年度の決算剰余金で財源を確保した。
(2)→ 改定実行計画の中で重点課題として対応していく考えが示された。
(3)→ 区も同様の問題意識を持っており、今後の課題として前向きに検討していることを理解した。

以上のことから、今年度下半期については、物価高騰対策の一環として実施に賛成。来年度については、東京都が区立学校給食費の半額補助の方針を示したことを踏まえ、上記(1)は大きく前進。(2)(3)の課題に一定の目処が立てば前向きに検討する。


共産党杉並区議団 山田耕平 幹事長
国の「食育基本法」や「第4次食育推進基本計画」では、学校給食は食育の中では重要な位置づけがされており、教育の一環として扱われています。憲法26条第2項で「義務教育は、これを無償とする。」と明記されており、学校給食が国の法律や基本計画で教育と位置付けられている以上、当然、義務教育課程での学校給食は憲法の規定通り無償とされるべきではないでしょうか。

無償化は国が進めるべきだとの意見もありますが、かつて東京都で始まった老人医療費の無料化は、全国に広がり当時、国の制度となりました。自治体の先進的な取り組みが、国を動かした事例であり、学校給食費の無償化についても、杉並区を含め多くの自治体で実施されることで、国が少しでも早く実施を決断するよう、政府に対して強いアピールになると考えます。先日、東京都でも給食費無償化に関する取り組みが始まることになりましたが、これも同様の事例です。

以上、杉並区において給食費無償化が実施されたことは、大変重要だと受け止めています。今後、私費会計から公会計へ速やかに切り替えると共に私立・都立学校に通う区児童生徒や不登校児童も含めて検討を進めていくことが必要と考えています。

Q4. 施設再編や道路整備、再開発に関する考え方をお聞かせください

移転計画が議論されているJR阿佐ヶ谷駅前の小学校


自民党・無所属杉並区議団 吉田愛 幹事長
総合的かつ長期的な観点や負担を先送りにしない視点等から、必要なものは着実に行っていくべきだと考えます。


立憲民主党杉並区議団 樋脇岳 幹事長
前述のとおり、前区政下では住民の意見を軽視し、区が強引に施設再編、道路整備、再開発を進めてきたわけですが、2022年の区長選挙では必然的にこれらの課題に関連して杉並の住民自治が争点となりました。岸本区政に変わってから、こうした課題について住民との対話を重視し、熟議によって答えを見出そうとする取組への転換が図られましたが、これは私たちの会派がまさに求めてきたことです。

前区政下で進められてきた施設再編は、根底に新自由主義的な経済効率の優先、職員の非正規化、公共の市場化があります。そこで削減されてきたのが児童館やゆうゆう館といった公共の責務としての福祉です。地域ごとに住民構成やコミュニティの特色、課題は異なる部分があります。地域にどんな福祉施策が必要か、そしてそれを担う施設や職員がどうあるべきか、最もよく知っているのはそこに住む地域住民です。
都市計画道路は、70年前にさかのぼる道路開発計画です。人口も自動車保有数も減少し、経済も右肩上がりの時代は過ぎ去り、地球規模の気候変動対策が求められる現代においては、国も都市計画道路の見直しに言及しています。また、道路拡幅の理由として災害対策が挙げられていますが、災害時に初動を担うのは地域住民であり、道路開発はこれまで育まれてきた既存の商店街や住民のコミュニティを破壊するものです。地権者だけでなく、まち全体でそのあり方を考えていくべきです。

再開発についても、まちのあり方を決めるのは、そこに住む住民であり、学校に通う児童生徒や保護者であり、そこで商売を営む事業者であるべきです。区に求められるのは、徹底した情報公開と、住民対話の場の創出です。納得のいく結論を得るのには時間がかかるかもしれませんが、それは民主主義のコストであり、行政が一方的に決め、「ご理解ください」と押し切るような再開発は、住民の分断を生むことにもつながり、100年後のまちの未来にとって良い結果をもたらすとは思えません。


杉並区議会公明党 川原口宏之 幹事長
施設再編については、老朽化した施設の利用状況や周辺地域での再編とコストの適正化をバランス良く図りながら進めていくべきと考えるが、適正化の正当性を具体的なデータで示していくことが肝要と考える。

道路整備については、区民の安全性・利便性の向上という最優先すべき観点から、着実に進めていくべきと考える。

今日現在(2023年12月)、杉並区の行政計画上「再開発」という言葉は存在せず、従い区が現在行っている事業に「再開発」はない。その上で、一般論として申し上げれば(例えば“まちづくり”等において)、「地震による焼失危険度」が高い地域や「狭あい道路の拡幅」など必要性が高いと思われる事案については、各種要素を十分に検討した上で着実に進めるべきと考える。


共産党杉並区議団 山田耕平 幹事長
前区政は施設再編整備計画で児童館やゆうゆう館の廃止を強行してきました。子ども達や区民、利用者が計画の中止や見直しを求めても、区の方針を押しつけ、区民の声を無視してきました。一方、新たな区政では住民との対話を重視し、施設再編整備計画や都市計画道路事業等について、住民と共に見直しを開始したことは重要な変化です。

今般、児童館やゆうゆう館の全館廃止方針は見直しとなり、都市計画道路事業についても住民との対話と協議が続けられています。阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりについては、現在、住民の疑問や不安の声に応えるために「振り返る会」が継続的に開催されています。

前区政が抱えていた諸問題の改善には時間と労力が必要となります。短期的に施設の廃止等を進めざるを得ないこともあります(例えば、阿佐谷南児童館を廃止し、区立児童相談所を設置する等。利用者の要望を受け、区直営の出前児童館を設置する試みも同時に開始することが示されました)。住民と課題を共有し、対話を通じて議論を深めるなかで方向性を定めていくことは、住民自治のまちづくりを体現する重要な取り組みと考えています。住民自治は、行政だけではなく住民の側の努力(住民参画)も求められます。これまでの区政では、あまり定着していない考え方であり、時間もかかる取り組みでもあります。しかし、新たな区政で始まった前向きの変化を一歩ずつ着実に進めていくことが必要だと思います。

 

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