187校。
東京にある私立中学の数です。
神奈川・埼玉・千葉も合わせると、300校を超えます。(令和5年度学校基本調査より)
首都圏の受験者数が増え続け、中学受験が過熱する中、各中学は、数ある学校から受験生に選ばれるため、進学したいと思ってもらえるため、試行錯誤しています。
独自のカリキュラムを打ち出し、魅力アップへしのぎを削る私立中学を取材しました。
過熱する中学受験。皆さんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。
(首都圏局/記者 田中万智)
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東京・杉並区にある中高一貫の文化学園大学杉並中学校です。
9年前、日本とカナダ、両方の高校卒業資格を取得できる「ダブルディプロマ」というコースを導入しました。
カナダのバンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州に「海外校」として認可され、カナダから招いた15人の教員が、カナダと同じ内容の授業を行っています。
このコースを卒業すると、多くの海外大学の受験資格をクリアすることができ、一部の国内の大学も、帰国生枠で受験することが可能になるといいます。
このコースで行われる授業はすべて英語で、カナダと同じ形式で行われます。
この日、数学の授業で使用していたのは、教科書ではなくトランプです。
みずから手を動かし、考えを互いに英語で伝えながら、整数の規則性を考えていました。
授業でほとんど教科書を使わないところが、日本語の授業と一番違うと思います。働いていく上で英語が一つの武器になるかなと思い、この授業を受けています。
将来は英語を使い、映画監督や脚本家といった映画関係の仕事に就きたいです。高校を卒業したら海外の大学に進もうと思っています。
このコースを選んだ中学1年生の1週間の授業のコマ数です。
黄色い部分は中学の必修科目で、赤い部分、半分以上は英語や、英語での数学や理科に割り当てられます。授業時間全体も多くなり、平日の早朝と土曜日の午後で4コマ授業数が増えます。
コースを卒業したのは、6年間であわせて155人。
このうち、のべ60人以上が海外大学に合格し、30人以上が実際に進学しました。
最近は、中学生の多くがこのコースを希望していて、来年度、カナダ人の教員を増員することにしています。
西田真志 入試広報部長
「首都圏には数多くの私立学校があり、いろいろな学校がいろいろな方法で生徒たちを伸ばそうとしています。本校にしかできないグローバル教育は何だろうかと協議を重ねて導入したのが『ダブルディプロマ』です。海外の大学を目指すということは、生徒の成長に繋がる進路選択の一つだと考えています」
2021年、大胆なカリキュラム見直しに踏み切ったのは、東京・江東区にある芝浦工業大学附属中学校です。
英語、国語、数学といった従来の授業時間を減らし、ドローンやプログラミングなど、これから求められる技術を学び、“ものづくり”の面白さを肌で感じる「SHIBAURA探究」という授業を設けました。
ドローンを使った授業では、生徒がみずからプログラミングを行い、自作のプログラムで正確に動くかトライアンドエラーを重ねます。
学校には3Dプリンターが15台あり、授業や部活で活用します。
最初は簡単なキーホルダーづくりですが、部活では、ロボットコンテストに出すロボットの部品まで作ってしまいます。
こうした将来、理系分野で求められる技術に、中学生から触れていきます。
この日は、一見、ものづくりとは関係なさそうな、パラスポーツのボッチャを体験。
理工系の知識や技術を身につけるだけではなく、将来、ものづくりをする上で、さまざまな視点が必要なことに気付いてもらう狙いです。
中学に入る前から、ものづくりが大好きでした。この学校には、ほかの学校にはないような実験がたくさんあって、本当に興味深いです。授業よりも、実験をする方がテンションが上がって楽しいです。
試行錯誤をして、大人が頑張って考えていることを、自分たちも挑戦できるのが楽しいです。そしてできたときの思いや達成感がとてもいいです。
斎藤貢市 教頭
「海外の学校を見学して、日本にはプログラミングの教育が足りないと感じました。それならば、世界標準かそれ以上のものを生徒に提供してあげる学校になりたいと思いました。少子化の時代ですし、中学受験で勝ち残るためではないですが、理想の生徒を育てていくために考えた道が、オンリーワンの教育につながっていると思います」
専門家によりますと、近年、人気が高まっているのは、上記のような「グローバル教育」と「理系教育」に力を入れている学校だということです。
私立中学の難易度もさまざまですが、多くの子どもたちが受験する中堅層の学校は、さまざまな取り組みをして個性を出しています。
カリキュラムだけでなく、ユニークな入試を導入している学校も増えていて、ペーパーテスト以外に、論理的な思考力を問うプレゼンテーション入試や、協調性やコミュニケーション能力を問うグループワーク入試などを行う学校もあります。
このシリーズでは、受験勉強の大変さや家族の戸惑い、経済的な負担などを伝えてきました。今回、取材した学校では、多くの生徒たちが楽しそうに学んでいる様子がうかがえ、過酷な中学受験というハードルを乗り越えるモチベーションを裏付けているように感じました。
また、少子化が進む中で、学校側にも、大学への進学実績だけでなく、育てたい人物像や教育理念といった戦略が、より求められる時代になっていると感じました。
みなさんは「中学受験」についてどのように考えていますか?私たちは「中学受験のリアル」と題して、皆さんからの情報や意見をもとに、取材を進めます。悩みや体験談、情報などぜひこちらまで投稿をお寄せください。