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PTA活動 その任意は本当ですか?東京・町田の事例から学ぶ

“やらされPTA”さよなら(3)
  • 2023年12月6日

「変わるPTA」を特集したところ、保護者からさまざまな投稿をいただきました。

その多くに共通していると感じたのが「PTAは任意というのは本当か?」という悩みです。どうしてこう感じる保護者が多くいるのでしょうか。いま一度、そのリアルな実態を当事者に聞いてみることにしました。

(首都圏局/記者 氏家寛子)

強制するならなくして!

「役員はポイント制で、指名員なるものもあり、ほとんど強制的にやらされているのが現状です」

この投稿を寄せてくれた神奈川県の女性に話を聞きました。
最初に語ってくれたのが昨年度のPTA役員を選出する会議での出来事です。
女性の子どもが通う小学校は、1クラス20人ほどの人数ですが、このなかから毎年6人ほどのPTA役員を選出することになっていたそうです。
女性はバザー担当の役員に選出され、役員会議に出ることになりました。近くに頼れる親戚などもおらず、子どもの預け先もなかったため、会議には小学生と生後4か月の乳児を連れて参加したそうです。
小さな子どもがいるので、負担の重い仕事は難しいと考えていましたが、事情も聞かれずにくじ引きが行われ、なんと、委員長に当たってしまったというのです。 

女性
「近くに頼れる人がいないため、預け先がなく子どもを連れてきているのに、なんとも思わず委員長を決めるという雰囲気にげんなりしました。強制的にやらされるならなくしてしまうか、やりたい人だけやればいいのにと思います」

女性の強い憤りは理解できる気がしました。2人の小さなこどもを抱えながらも、なんとか可能な形で関わろうとしていたのに、いきなり本人に何の相談もなく、大役を任されることになったからです。くじ引きだから平等だというのは違うと、女性が訴えるのも頷けます。

PTAがこのように本来の任意参加の形から逸脱し、実質的に半強制のようになっているという声は私たちのもとに多く寄せられています。

「子どものために、みんな平等にとありますが、家庭によって子どもの人数や年齢が違うので平等なんて無いと思います。理不尽としか感じません」(都内・42歳女性)

「小学校の行事はもちろんそれ以外にも出席する場がたくさんあり、今日までで10回以上は仕事を休みました。資料を読み上げるだけで、改善を指摘しても変えられない」(埼玉県・45歳女性)

「加入意思確認なし」は3割 都P調査

では、どうしてこうした強制的な活動になってしまうのでしょうか。
その背景のひとつに、入会のあり方の問題があると思います。

PTAは、任意加入の団体ですが、入会届などで加入の意思確認をするのではなく、入学と同時に保護者を自動的に「会員」とするところもあるのが現状です。
そのため、入会は“義務”と受け止めてしまい、その結果、役員などの負担を「やって当然」とか、「みんな平等に担うべきだ」などと、考えるようになってしまうというのです。
東京都小学校PTA協議会が去年(2022)9月、都内の公立学校のPTAを対象に実施した実態調査(159校が回答)をみても、『加入意思の確認なし』と回答したところは、27.7%となっています。

さらに、PTAに加入するかどうかで子どもへの対応が分かれている実態も明らかになりました。この調査で、『PTA未加入世帯への対応』を尋ねたところ、「未加入世帯がない」などと回答した学校を除く111校のうち、「区別なく対応」としているのが61.3%。「実費負担にて対応」が19.8%、「未加入家庭は対象外の場合がある」としているのが18.9%となったのです。

非加入家庭の子どもには記念品を配付しないなど、対応に差がある実態もうかがえます。

全国PTA連絡協議会は、「入会しない保護者や教職員がいることも前提として考える必要がある」としたうえで、HPで次のような考えを示しています。

『PTAは保護者と教職員による会員で構成される団体で、子どもは会員ではありません。その学校・園に通う子どもたちのために活動するPTAは、保護者がPTAに加入・未加入に関わらず、全ての子どもに平等な対応が必要です』

休止を会則に

一方、NHKに寄せられた投稿の中には、PTAの運営のアイデアや工夫についての意見もありました。そのひとつがこちらです。

「私達のPTAは、組織図に沿って分担するのではなく、子どもたちの安心・安全な学校生活のために保護者が『やりたい』ことを集める組織作りをしています」

この投稿を寄せてくれた、町田市の小学校のPTA会長を訪ねました。

話をしてくれたのは町田市立鶴川第一小学校の大野薫里会長です。
こちらのPTAでは、全児童に対して毎年、入会・退会の希望をとっているそうです。
役員は立候補制で、規約には、「役員に応募者がいない場合活動を休止する」と明記されていました。活動はあくまで手あげ制で、今年度は広報のなり手がいなかったため、広報紙の制作はお休みしているそうです。
さらに、PTA会費もやめて、払いたい人が協力金として払う形に変えたといいます。

その結果、加入率は半分ほどになりましたが、子どもたちの安全を守るための「バスの乗り方講座」など必要な活動は実施できているといいます。
「PTA活動はあくまで任意」ということを徹底したこの実践、いったいどうやって実現させたのか、大野さんに聞きました。

町田市立鶴川第一小学校 PTA 大野薫里会長
「以前はくじびきで委員を決めていましたが、運営に頭を悩ませるよりも、本来の目的である『子どもたちの活動』に時間とエネルギーをかけたいと思いました。自分たちが楽しめる活動をするのが一番だと思いますし、子どもたちのためによりよい活動ができるのではないかと思います」

専門家 「民主的な役割果たすために」

学校も教員不足が慢性化するなか、PTAへの依存度は高まっていると感じますが、保護者の側も共働きが増える中、これまでと同じ形でPTAを運営することも困難になってきていると思います。

自らも子どもの小学校でPTA会長を務める、弁護士の藤井豊さんは、任意加入は前提だとした上で、保護者の代表的な組織であるためにどうあるべきか、議論を深めるべきだといいます。

藤井豊弁護士
「PTAの加入は強制ではないという認識は広がってきたとは思いますが、それでも事実上強制的な働きかけをされるとの声はよく聞きます。PTAが保護者を代表して、学校と交渉するような窓口として、学校の運営に参画していくという民主的な役割を果たしてくために、本来どうあるべきかという位置づけをはっきりさせるときなのではないかと思います」

みなさんの経験・意見お寄せください

寄せられた投稿の中で特に印象に残ったのが、PTA役員の経験がある30代の男性からの意見です。“強制をやめて、自ら地域のことに協力しよう、地域の活動に参加してみようという人材を増やすための仕組みづくり”の必要性を訴えていました。PTAに限らず、自治会や消防団など地域を支える団体の間では、今、担い手確保や時代に合った活動をどう変えていくかについての課題が山積していることでしょう。こうした視点も持ち合わせながら、取材を続けていきたいと思います。

みなさんのPTAをやっていて良かったと感じたことやモヤモヤしていること、悩みや疑問なども、ぜひこちらよりお寄せください。

  • 氏家寛子

    首都圏局 記者

    氏家寛子

    2010年入局。水戸局、岡山局、新潟局を経て首都圏局に。 今年度(2023)は息子の小学校のPTAで広報委員長を務めています。

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