WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. 中学受験 来年2月に本番迎える受験生 “ダブルワーク並みの忙しさ”

中学受験 来年2月に本番迎える受験生 “ダブルワーク並みの忙しさ”

中学受験のリアル(3)
  • 2023年12月1日

東京で中学受験が始まる2月1日まで2か月。小学6年生の受験生は、今、ラストスパートに入っています。受験生が挑む問題は、年々難しくなり、勉強量も増えています。
投稿を寄せてくれた小6の娘を支える母親は、娘の日々を「ダブルワークする社会人並みの忙しさ」と語ります。

過熱する中学受験。皆さんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。

(首都圏局/記者 北城奏子)

想像はるかに上回る勉強量

都内に住む40歳の母親です。6年生の長女が、いよいよ2か月後、受験本番を迎えます。
母親自身も30年ほど前に中学受験をしましたが、小学3年の2月から塾に通ってきた娘の勉強量は、学年が上がるにつれてどんどん増え、当時の自分をはるかに上回る勉強量に追われる娘を心配してきました。

母親
「塾の日数が少なく、課題もそんなに多くないという理由で今の塾に入れましたが、それでも課題は多かったです。授業のない日も、家でずっと勉強しないと間に合いませんでした。こんなに勉強しなきゃいけないのかなって思いましたし、本人はもう、ひいひい言っていました」

学校、食事、お風呂以外は勉強時間

塾がある日の一日を紹介すると、起床後にまず勉強して小学校へ。6年生は、ほとんど6時間目まで授業があるので、帰宅は午後3時半ごろになります。
帰宅するなり慌ただしく支度して、電車で塾に向かいます。塾からの帰宅は午後9時半近く。体調を崩さぬよう、どうにか8時間以上の睡眠を確保します。

塾が無い日も、学校から帰宅後は、夕食やお風呂以外の時間帯は勉強漬け。早めに学校が終わる日は、たまりがちな志望校の過去問を解ける、と安心することも。好きな読書も、受験が終わるまでお預けです。

壁に貼られた付箋には、塾から帰ってきたら忘れずにやることが書かれています。
理科の「一行問題」は、母親にドライヤーをかけてもらいながらこなします。歯磨きは、勉強が忙しすぎて、忘れてしまうことすらあるそうです。

母親
「特に6年生になってからは、土曜日も日曜日も塾なので、家族全員がそろうことはほとんど無くなりました。友達との時間もたまには持ちたいと娘が『1週間に1時間だけいい?』みたいに相談されたことがありましたが、それすらも“いいのかな?”って思ってしまうぐらい忙しく、勉強に追われています。本当にダブルワークする社会人並みの忙しさだと思います」

本人はどう受け止めているのでしょうか。

長女
「自分のやりたいことにチャレンジできる中学校に入りたいから頑張れます。わからないことがわかるようになることも楽しいです」

受験勉強は過酷になっている?

受験生が忙しいのは昔も同じですが、その内容に目を向けると、問題の難しさや、求められる知識の量が、年々増している現実が見えてきました。

神奈川県の塾で中学受験部門の責任者を務めるなど、30年余りにわたって中学受験に関わってきた教育コンサルタントの渋田隆之さんに、話を聞きました。

<思考力を問う問題が増加>
Q.最近の入試問題、難しすぎませんか?

レベルは上がっていると思います。
問題文を読めば、すぐに解き方や答えがわかるといった問題は減る一方、「考える力」「表現する力」「イメージする力」の3つがすべてつながって回答できるような問題が増えてきています。

▼選択肢から答えを選ぶ問題も、昔は「4つの選択肢から正しいものを1つ選ぶ」というものがメジャーでしたが、今は、選択肢が増えた上に、“正しいもの1つ”ではなく、“正しいものすべて”を選ぶ形式が増えています。勘や消去法では解けず、内容全般を体系的に理解しているかが問われます。

▼単純な暗記力が問われる問題も減っています。社会を例に見ると、年号や地名を解答させるような問題よりも、時事問題を切り口に、選挙権が18歳に引き下げられ、自分はどう感じるか、メリットは何かなど、社会現象にどこまで関心を広げられているかを記述させる問題が増えています。社会と理科を融合したような科目の枠を超えた問題や、初めて見るような資料やグラフを読み取って、自分なりの分析を書かせる問題も多いです。

▼国語の文章題も長くなっていて、内容も、昔は“受験生と同世代の子どもの友情”といった、自身を投影しやすいテーマの小説が多かったですが、今は、難民問題やヤングケアラーなど社会問題を扱う新書から出される説明文が増えています。

Q.問題の傾向はなぜ変わったのでしょうか?

学校が求める子ども像が変わってきつつあるのだと思います。
受け身の姿勢で勉強するよりも、目の前の問題について、友達とのディスカッションやプレゼンテーションを通して、自分で考え、答えられるような姿勢の子どもを求めているのだと思います。

<年々増える課題の量 大事なのは取捨選択>

Q.受験生がこなす勉強量も増えていますか?

量は年々増えています。
毎年、さまざまな学校の入試で出題される問題は、翌年、別の学校で出るかもしれません。当然、塾もその問題を扱おうと考え、テキストに掲載される問題数は増えていきます。すると、それまでのカリキュラムでは間に合わなくなるので、スピードを上げてさらに先取りするカリキュラムになります。この流れは、もう限界を迎えつつあると感じています。

Q.膨大な勉強量にどう向き合えばいいのでしょう?

取捨選択することが必要です。
学校ごとに、レベルや傾向は大きく異なるので、ここは一生懸命やるところ、ここはちょっとサボってもいいところ、と取捨選択しながら勉強するのがいいと思います。このバランスをどうとるかが難しいので、早めに志望校を決めて対策を進めることが大切です。

取材後記

私も15年ほど前に中学受験を経験しました。ラストスパートに入っている受験生の家庭を取材させていただき、当時の忙しかった日々を思い出しつつ、子どもを応援しながらも、心配する親の立場にも気づかされました。また、入試問題が難しくなっていることに驚きました。これまでのような勉強に加えて“自分で考えて・イメージし・表現する力”(渋田さん)も求められている今の受験生の姿に、“受験勉強とは何なのか”という原点も見つめ直すきっかけになりました。
引き続き、様々な角度から中学受験の取材を進めていきます。

みなさんは「中学受験」についてどのように考えていますか?私たちは「中学受験のリアル」と題して、皆さんからの情報や意見をもとに、取材を進めます。悩みや体験談、情報などぜひこちらまで投稿をお寄せください。

  • 北城奏子

    首都圏局 記者

    北城奏子

    2018年入局。徳島局を経て首都圏局に。中学受験を経験。受験番号の記入忘れ(試験終了10秒前に気づく)など、あの時の緊張感は今でも覚えています。

ページトップに戻る