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PTA改革 もう強制しない!東京大田区 保護者が“自然と集まる”秘策とは

  • 2023年11月21日

学校のPTA。共働きや一人親家庭が増える中、負担を感じる保護者の声が多く聞かれます。

保護者のストレスを生み出している原因の一つが、「加入は任意、活動内容も自由」のはずのPTAに「義務」や「強制」が組み込まれている例が少なくないことです。規約に堂々と「義務」と書かれているPTAもあれば、暗黙のルールが多数あるPTAも…。

そんな中、義務や強制なしに“自然と保護者が集まる”ことで全国のPTA関係者から注目されている、“PTO”という団体を取材しました。

(首都圏局/ディレクター 麻生めぐみ)

義務や強制をやめた!嶺町小学校PTO

東京都にある大田区立嶺町小学校。この小学校には「嶺町小学校PTO」という保護者と教師による団体があります。PTOはParent Teacher Organizationの略で、「O」は「学校『応』援団」も意味しています。2015年に、もともとあったPTAを改革して誕生しました。

改革前のPTAの規約を見ると、「会員は、すべて平等の義務と権利を有する」と書かれていて、会員が活動の義務を負うことが明記されています。

現PTO団長の久米雅人さんは、当時の保護者たちが自分の生活を削りながらPTA活動に参加していた様子を伝え聞いています。

嶺町小学校PTO団長 久米雅人さん
「仕事があるときでも、PTA活動のために学校に来なければいけないとか、雪が降る中、未就学の子を背負って、古紙回収をしなければいけないというようなこともありましたし、『お金払うから辞めさせてほしい』と言ったお母さんがいたとも聞いています」

こうした組織の在り方に疑問を持った当時のPTA役員たちが、保護者にアンケートを実施したところ、PTA活動に「参加したい」と答えた人は全体のわずか3割でした。

2年に渡る議論や試行錯誤を経て、2015年、嶺町小学校のPTAは「楽しむ学校応援団PTO」に生まれ変わりました。
義務や強制はやめ、ボランティア制に。「活動に参加したいときに手を挙げる、参加したくない人は無理しなくてOK」というスタンスを貫いています。

嶺町小学校PTOの改革、具体的には…

改革1 運営の中心メンバーは定員なし!集まったメンバーでできることを

運営の中心を担うボランティアセンター(かつての役員会)には、定員を設けず、自主的に集まった人たちで活動しています。現在は40人ほどが参加しているそうです。

改革2 人手がほしいときは「サポーター」を募る

イベントなどで人手が必要なときは、「サポーター」として保護者を募集します。ボランティアセンターが日時や活動内容を周知し、その日に参加できる・参加したい人が申し込む仕組みです。

目標の人数に届きそうにないときは、「人数が足りなくて困っています!」と再周知すると、ドッと手を挙げる人が増えることもあるそうです。

改革3 誰でもアイデアを出せる「夢プロジェクト」

「夢プロジェクト」とは、「子どもたちのためにこんな活動をやってみたい!」という保護者のアイデアを形にするプロジェクトのことです。保護者なら誰でもPTOのホームページからアイデアを投稿できます。

投稿した人が運営の中心となり、PTOのボランティアセンターは運営へのアドバイスやサポーター募集などを手伝います。これまで「学校に泊まろう」「逃走中(子ども対大人の鬼ごっこ大会)」「町たんけんクイズラリー」などさまざまな活動が実現してきました。

多くの保護者が持っている“ある気持ち”

嶺町小学校PTOが主催する人気イベントの一つが「ハロウィーンウォーキング」です。
小学校そばの河川敷を、子ども(保護者も参加OK)が仮装して歩きます。このイベントでも誘導係として「サポーター」を募集しました。

この日、サポーターとして参加した人たちは、参加している子どもたちを折り返し地点で誘導したり、壊れてしまった子どもの仮装道具をゴール地点に運んであげたり、「水が飲みたい」という子どもを水飲み場に連れて行ったりと、大活躍。

参加した
保護者

子どもたちみんな、フレンドリーに接してくれる気がします。オフの子どもたちの姿というのも新鮮。

参加した
保護者

ふだんは親御さんとの接点がなかなかないので、参加して楽しいです。

嶺町小学校PTO団長 久米雅人さん
「『学校をよくしていきたい』『子どもたちに思い出を作ってあげたい』といった思いを保護者のみなさんは持っているんですよね。『ここなら参加できる』という気持ちをくみ上げる仕組みにしています」

必要なのは“発想の転換”

PTAに詳しいノンフィクションライターの大塚玲子さんは、保護者が無理なくPTAに関わり続けるためには、発想の転換が必要だと言います。

ノンフィクションライター 大塚玲子さん
「今までは、『去年もこうしていた。それを今年もする。だから必要な人数を集める』と考えていたんですけど、そうではなくて、『集まった人でできることをする』とみんなが頭を切り替えることが、必要じゃないかなと思っています。

『みんなでこんなふうにやっていきたいね』というところを探ることこそがPTA。それぐらい自由なものなのではないかと考えています」

大切なのは、「つつがなく前年を踏襲すること」ではなく、「今の自分たちにとってどんな形や方法がいいのか考えること」。その結果、大胆な改革を行う場合もあれば、ひとまず現状維持の場合もあるでしょう。解散の道を選ぶPTAもあるかもしれません。

あなたは、お子さんの学校のPTAを、どんなPTAにしていきたいですか?

PTAについて、皆さんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。

  • 麻生めぐみ

    首都圏局 ディレクター

    麻生めぐみ

    2009年入局。松江局と制作局あさイチ班を経て現所属。ジェンダーや子育てについて取材しつつ、仕事と3児の育児を両立する道を模索中。

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