WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. 千葉・我孫子市が上昇率1位!令和5年 地価調査から見る住宅需要の変化

千葉・我孫子市が上昇率1位!令和5年 地価調査から見る住宅需要の変化

不動産のリアル(22)
  • 2023年9月19日

首都圏の地価上昇が止まりません。そんな中、私たちが注目したのは千葉県。

実は東京圏の住宅地で上昇率1位だった地点は千葉県我孫子市でした。なぜ千葉県で地価が高騰しているのか、さっそく現地を取材しました。

※私たちは「不動産のリアル」と題して、空前の高騰が続く不動産事情を取材しています。
皆さんの体験や意見をこちらまでお寄せください(首都圏局/不動産のリアル取材班 記者 牧野慎太朗)

東京圏の住宅地 上昇率+2.6%

国土交通省は7月1日時点の全国2万1300あまりの土地の価格をとりまとめ、公表しました。
こちらが、東京を中心に埼玉、千葉、神奈川、茨城の1都4県の一部を含む「東京圏」の住宅地の価格変動率(対前年比)を市町村ごとに示した地図です。

寒色系が下落した地域で、暖色系が上昇した地域になります。

全体でみると、3年連続で地価は上昇。

上昇率は+2.6%と前年(+1.2%)よりも拡大しました。東京圏では都心を中心に、地価の上昇を示す「赤」や「濃いオレンジ」、「オレンジ」で示されたエリアが広がっていることがわかります。

いま都心部の新築マンションは、億超えも珍しくないほどに高騰しています。
神奈川、埼玉の周辺都市でも軒並み上昇しているのは、都心に通いやすく、かつ都心と比べれば安く住宅を購入できるからだといいます。

しかし、今回の東京圏の結果と5年前のものと比べたとき、違った傾向が見られたのが千葉です。
寒色系が多かったのが、明らかに暖色系、つまり地価が上昇した地域が増えていたのです。
かつては、地価の上昇率が高い「濃いオレンジ」のエリアは、千葉県内では浦安市のみで、柏市や我孫子市では下落していました。それが、この反転上昇です。コロナ禍を経て、地価が大きく上昇するほど住宅需要が高まったことが見て取れます。

上昇率1位は…我孫子駅周辺

この中でも急激に地価の上昇が見られた地点が、県北西部にある我孫子市です。

我孫子駅北側の「我孫子4丁目」では前年比+18.6%という急激な伸びを記録。
これは東京圏の住宅地で最も高い上昇率です。我孫子市ではここ数年、20代や30代を中心に都内から移り住む人たちが増えていて、去年の転入者は5788人と転入超過となっています。

なぜ我孫子?現地を取材!

気になって早速現地を訪ねてみました。
都心からのアクセスもよく、駅前には大きなマンションや戸建てが立ち並んでいました。新築の住宅も多く、人気エリアであることがうかがえます。

ことし2月に我孫子市に新築の戸建てを購入した30代の夫婦にも話を聞くことができました。

夫婦ともに北海道出身で我孫子には縁もゆかりもなかったといいます。ここを選んだ理由を聞いてみると、「割安な価格と広さ、そして利便性という3つの希望を叶えてくれる場所だったからです」という答えが返ってきました。

夫婦はともに都内で働く会社員。もともと東京・練馬区にある分譲マンションの1部屋(56平米)を4200万円で購入して住んでいましたが、将来の子育てを見据えると、少し手狭で、物価高も相まって月々のローン返済への負担感も大きくなっていたそうです。

このため住み替えを決意し、家探しをしていたところ目に留まったのが我孫子だったといいます。

30代夫婦
「私たちの場合、食費も光熱費も値上がりする中で月々の固定費をなるべく抑えたいと思っていて、当初は埼玉県の川口市や神奈川県の川崎市なども候補には入っていましたが、値段も高くあまり都内と変わらないなという印象でした」

ここの戸建ては3200万円で購入でき、広さもマンションの2倍以上。我孫子駅から常磐線を使えば40分ほどで東京駅まで行くことができるアクセスの良さも魅力だったそうです。

「最近、我孫子でも新しい住宅がどんどん建って、若い世代が増えてきているのを感じます。
我孫子であれば固定費も抑えられるし、始発列車も多いので朝のラッシュ時でも座って通勤でき、時間を有効に使えるのも大きな決め手になりました」

+5%以上の上昇 千葉の自治体で顕著

大幅な地価の上昇は、我孫子市だけでなく、柏市や流山市など千葉県内の周辺自治体でも見られました。千葉県内で前年比+5%以上地価が上がっている自治体は6つ。以前から都心部に近く、人気の高い浦安市に加え、柏市や船橋市、流山市、我孫子市も+5%以上となるなど、上昇率が高い自治体が千葉県北部に集中していたのです。

平均変動率(対前年比)
・市川市 +11.3%
・浦安市 +8.9%
・流山市 +7.2%
・我孫子市 +6.7%
・船橋市 +6.7%
・柏市 +6.2%

なぜ千葉が熱い?

なぜことしは千葉県内の自治体で上昇率が高かったのか。専門家に尋ねてみると、「以前までは千葉ではなく埼玉県や神奈川県が人気を集めていた」そうです。それがいまは「埼玉県や神奈川県の人気が高まって地価が上昇したため、相対的に割安感がある千葉県内のエリアが選ばれるようになっている」と指摘していました。

実際の現場の受け止めも聞いてみました。千葉県内で住宅用地の仕入れを強化しているという会社の担当者は、「都内を中心に住宅価格が高騰する中で千葉は埼玉や神奈川以上にまだ割安感があり、2000万円台から4000万円台でお客様に戸建てを供給できる」と話します。

オープンハウスデベロップメント開発事業部 須田那乙喜 千葉営業部長
「埼玉や神奈川だと2000万円台で供給できる物件は限られますが、千葉県内だと結構あります。都内に賃貸で住んでいるお客様の中には、家はほしいけど月々の支払い額は変えたくないという方もいますが、東京駅まで40分前後という利便性の高さがありながら、その要望を実現できるのが千葉の1番の魅力だと考えています」

改めて価格面からことしの地価調査を見てみると、その違いは明らかでした。埼玉県や神奈川県の自治体では1平米あたりの平均価格が20万円を超えている一方で、+5%以上上がった千葉県内の自治体は浦安市や市川市を除いて1平米あたり10万円台となっていて、我孫子市では9万3800万円となっていました。

平均価格(1平米あたり)
・埼玉県川口市 23万7700円
・埼玉県戸田市 28万4600円
・神奈川県横浜市 24万4000円
・神奈川県川崎市 28万8400円
・千葉県流山市 16万1400円
・千葉県船橋市 16万5300円
・千葉県柏市 11万7100円
・千葉県我孫子市 9万3800円
・千葉県浦安市 34万7700円
・千葉県市川市 26万5000円

千葉の上昇 今後も続く?

最後に気になるのが今後の先行きです。いまは都心部とその周辺部で地価が上昇していますが、今後もより安い住宅を求めるニーズからそのエリアはどんどん外へ外へと広がっていくのでしょうか。専門家に見通しを聞きました。

東京カンテイ 高橋雅之 主任研究員
「今後は地価の上昇と下落の2極化が進むことが想定されます。都心部は実需に加えて投資マネーも入って引き続き高止まりとなることが見込まれますし、周辺部においても都心まで1時間で通勤できる範囲であればゆるやかに上昇していくと思います。一方で、それ以上離れると利便性を犠牲にしたくないマインドも強いために、高い需要は見込めず下落していく可能性が高いとみています」

投稿お待ちしています

千葉をはじめとした周辺部に住宅を求める動きが一層鮮明になったことしの地価調査。ただこれは都心部での住宅価格の高騰が顕著で多くの人にとって東京が住みづらい場所になっていることの裏返しのようにも感じます。空前の高騰が続く東京の不動産で今、何が起きているのか。私たちは引き続き皆さんからの情報や意見をもとに取材していきます。
ぜひこちらから投稿をお寄せください。

  • 牧野慎太朗

    首都圏局 記者

    牧野慎太朗

    2015年(平成27年)入局。宮崎局、長野局を経て2022年から首都圏局。不動産取材を担当。

ページトップに戻る