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「電気街」「サブカルの街」秋葉原 再開発のゆくえは…

不動産のリアル(21)
  • 2023年9月15日

皆さんは東京「秋葉原」というと、どんなイメージを持っていますか?
印象的なCMで知られた電気の街?それともアニメやゲーム文化が根付いたサブカルチャーの街?いま、その「秋葉原」で大規模な再開発計画が進められ、地元でも意見が分かれています。早速、現地を取材しました。

(首都圏局/不動産のリアル取材班 記者 牧野慎太朗・西澤友陽)

秋葉原の再開発計画とは

再開発計画の対象となっているのが、こちらの場所。JR秋葉原駅「電気街口改札」から歩いてすぐ、国道を挟んだ両側のあわせて約1.7ヘクタールのエリアです。
現地を歩いてみると、大通り沿いには以前「石丸電気」があった「エディオン」や「オノデン」といった大型の家電量販店のほか、免税店などが建ち並んでいます。そのすぐ脇には神田川が流れ、奥に入ると、飲食店や漫画店、メイド喫茶などさまざまな店が並んでいました。訪日外国人の3人に1人が訪ねるというデータもあるのも頷ける東京の中でもユニークな街です。

左:現在の様子/右:完成予想図(千代田区のホームページより)

この一帯に持ち上がっている再開発計画の完成予想図です。
計画の柱は神田川沿いに船着き場と親水広場を作ること。そして、オフィスや商業施設などが入る最大で高さ170mの超高層ビルと、ホテルなどが入る最大で高さ50mのビルが遊歩道で結ばれる計画となっています。さらに、この中には、千代田区の施設も設けられるといいます。

この計画が実現した場合、今ある家電量販店などが建ち並ぶビル群はすべて取り壊され、秋葉原駅前の景色が大きく様変わりする可能性があります。

千代田区のホームページより

あなたの秋葉原は?若い世代「アニメの街」

多くの観光客を惹きつける秋葉原で持ち上がった再開発計画。そもそも皆さん、この街にどんな印象を持っているのか駅前で聞いてみることにしました。

20代女性
栃木県

アニメとかゲームでにぎわっていて外国人の観光客がたくさんきているイメージです。

20代男性
宮城県

アニメが好きで5年ぶりに来ました。自分にとっては特別な場所です。

20代男性
台湾から旅行

アニメと電気があふれている町のイメージです。

30代女性
秋葉原勤務

コロナ明けで外国からの旅行者すごく増えている。電気とアニメとかが目的で来ているのかなと思います。古い電気街はすてきだと思いますが、1人だと入りづらいですね。

20代女性
茨城県

アニメの聖地とか電気街というイメージはなくしてほしくないが、変わった方がお客さんや人が集まると思います。

声をかけると、外国人に加えて、地方からわざわざ足を運んでいる若い世代が多くいました。
この世代では、アニメの街のイメージが強いようです。

50代以上は「電気の街」

ただ、50代以上の世代に聞いてみると、やはり電気の街という声が聞かれました。

70代男性
茨城県

電気街のイメージです。昔はふらっと部品を買いに来ましたよ。

50代男性
徳島県

すごく混沌としたまちですよね。若いころは電気街のイメージでした。
いつのまにかアニメとかサブカルチャーの聖地になっていた

秋葉原に通って30年の男性は

取材をしていると、30年前から秋葉原に足しげく通っている人と出会いました。

千葉県に住む鵜木克彦さん(54)です。以前の勤務先が近かったため、パソコンの部品や漫画、同人誌などを購入するために頻繁に秋葉原を訪れるようになりました。今も週に1回は秋葉原を訪れるといいます。その魅力について聞くと。

鵜木克彦さん
「パソコンの組み立て用のパーツも古いものやなかなかないものが秋葉原ならある。一見するとごみにも見えるパーツから見つけ出すおもしろさもある」

この日は、家の壊れた電気のスイッチを買いに来ていました。「こういう細かいものは秋葉原ではないと売っていないし、種類も多く値段も安い」といいます。さすが30年この街に通い詰めているだけのことはあります。私たちは鵜木さんに、この街に持ち上がっている再開発計画についても聞いてみました。
すると、「やはり寂しいですよ」と言いつつも、こう語ってくれました。

「雑居ビルが立ち並んでいるのが秋葉原。新しいビルが建って小さいパーツを扱っているお店がなくなってしまうのはさみしい。でも時代の流れはあるし、昔ながらのものと新しいものが混在するのも“秋葉原”だと思います」

地元では賛否 議論続く

秋葉原の再開発計画。実は地権者の間でも意見が分かれています。千代田区によると、再開発を進めるには地権者の3分の2(66%あまり)の同意が必要ですが、現在の同意率は60%あまりです。賛成、反対双方の人たちに話を聞きました。

再開発に賛成の地権者
「一帯は建物の老朽化が進んでいます。これを機に新たなまちづくりにかじを切るべきだと思う」

再開発に反対の地権者
「秋葉原らしいまち並みがなくなると、魅力がなくなり、訪れる人も減るのではないか」

千代田区は再開発を推進する意向

この再開発をめぐっては、地元の千代田区の対応も注目されています。その理由は、開発エリアの一角に「千代田万世会館」という区が所有する葬祭施設があるため、区が地権者の1人になっているからです。その千代田区ですが、再開発を推進したい意向を示しています。「千代田万世会館」は区内唯一の葬祭場のため、新たに建て替えて使う必要があるというのが理由の1つです。

行政として、再開発の是非を客観的に判断する立場にありつつ、みずから当事者となっている千代田区。その手続きに異論が出されたのがことし7月の「都市計画審議会」です。まだ地権者の同意が得られる前に再開発をするという結論を出すことについて、委員の中から「拙速では」といった意見が出されたのです。これについて、区の担当者にも聞きました。

千代田区 担当者
「地元では再開発の検討が長年進められてきました。地権者からは建物の老朽化が激しく地震が怖いという声や、テナントから設備更新を要求されているが再開発の話があるので設備投資ができないという声があり、手続きが進まないのであれば個別に建て替えたいという意見が複数あります。区としても速やかな判断が必要と考え、審議会に諮ることにしました」

審議会の採決では、賛成8人・反対7人の僅差で可決されました。
ただ、実際に再開発を進めるには地権者の3分の2の同意がなければ最終的に東京都から再開発の認可が下りないことになっています。そのため、現在も区長による都市計画決定を見送られています。
今後は、地権者の同意が集まり計画が先に進められるかが焦点となります。

あなたの街の再開発 投稿お待ちしています

これまでに全国で1000件あまり行われている再開発。その半数は首都圏が現場です。
再開発については、街が刷新され新たなにぎわいを創出するとして、賛成する声もあれば、昔の町並みが失われ均質化した都市になってしまうと危惧する声もあります。
皆さんの街ではいかがでしょうか。私たちは各地の再開発の現場を取材していきます。
ぜひみなさんの体験や意見をこちらのサイトまでお寄せください。

  • 牧野慎太朗

    首都圏局 記者

    牧野慎太朗

    2015年(平成27年)入局。宮崎局、長野局を経て2022年から首都圏局。不動産取材を担当。

  • 西澤友陽

    首都圏局 記者

    西澤友陽

    2015年(平成27年)入局。前橋局、大阪局をへて2022年夏から首都圏局。 秋葉原や神宮外苑など、都内にある様々なテーマを取材。

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