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発達障害の子の学び 「通級など難しく、引っ越し」の声も

  • 2023年7月6日

発達障害のある子どもなどが学ぶ場の1つ「通級指導」。いわゆる「通級」。
先月、この「通級」を利用したかったものの、教員不足などを背景に、申し込みを見送らざるを得なかった親子を紹介したところ、複数の意見が寄せられました。
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​​​その一部を紹介します。中には、通級などの支援を受けるのが難しく、別の地域への引っ越しを選択したと訴える母親もいました。
(首都圏局 都庁クラブ/記者 生田隆之介)

通級(通級指導)とは

〇発達障害などで、読み書きや対人関係が苦手な児童・生徒が、ふだんは通常の学級に在籍し、一部の授業を別の学校で受けるもの。(東京都は巡回指導のため在籍する学校で受ける)
〇国語や算数などの科目の勉強ではなく、困難さを改善するための「自立活動」を学ぶ。
〇子ども1人1人にあわせて、それぞれカリキュラムを作成し指導。
〇教員と子どもは1対1か4~5人の少人数で授業をするのが基本。
〇全ての授業を通常学級とは別の部屋で受ける「特別支援学級」とは別。

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「通級不足」「引っ越しを決意」

 

 

大阪府・母親(小2の娘が自閉スペクトラム症など)
「もともと東京に住んでおり、3歳半で確定診断を受けました。地域の小学校の見学、相談に行くようアドバイスを受け、学区内の普通校の教頭先生と面談をしました。娘は知的な遅れはないですが、こだわり、不注意、不器用な特性から、支援なしに集団行動や身辺自立が無理なことは明確に分かっていました。しかし『発達検査の数値が水準を超えると、強く希望しても支援学級に在籍することはできなくなった。週に1度の通級のみの案内になるが、通級も待ちが多いため、他害や脱走がある子が優先になり、希望しても待機になるかもしれない。通級とは別で、外部介助員をつけることは可能だが、なかなか人が集まらない状況。その間は親に教室に入り込みで介助をお願いしている』という説明を受け、絶望感で一杯になり、引っ越しを決意しました」

 

千葉県・母親
「わが子も通級に週1コマ通っています。通級が不足しており、週2で通えていません。国、都道府県、自治体はもっと教育にお金を回すべきです。全ての公立学校に、通級と特別支援学級の情緒のクラスを設置できるようにしてほしいです。人手不足はきちんとした対価と工夫で解決できます。子供たちはどんどん大きくなってしまいます。必要な教育を与えることができないで、義務教育といえるのでしょうか。待ったなしで教育への予算の確保を実行して頂きたいです。日本の未来への先行投資を怠るべきではありません」

「通級に入れない現状、相談も多く」

また、小学校の元校長で、今はスクールカウンセラーや白百合女子大学で非常勤講師を務める曽我部和広さんからは「学校現場における特別支援教育などに関する問題点が多々あり、歯がゆく思っている」との投稿が寄せられ、詳しく話を聞きました。

東京都公立学校スクールカウンセラー 曽我部和広さん
「通級にすぐには入れないという現状があります。定員の問題や基準の問題もありますが、通級の利用に必要な知能検査を受けるのが困難だという状況もあります。私のところに『通級を受けたい』と相談に来た保護者に、検査を受けられる教育相談所や病院を紹介するのですが、そもそも予約の電話がつながらない。また、電話がつながり、予約が取れたとしても『受けられるのは2か月先、3か月先です』となってしまうそうです。それでは、通級の申請の時期に間に合わないし、申請が通ったとしても、審査の期間がありますので、実際に通級を受けられるのは半年先になる場合もあります。子どもたちは日々の学習に困っているわけで、保護者からは、その間、どうしたらいいのかという相談もたくさんあります」

頂いたご意見などをもとに今後も取材を続けていきます。皆さんからのご意見や体験談などは引き続き募集しています。ぜひこちらの投稿フォームよりお寄せください。

  • 生田隆之介

    首都圏局 記者

    生田隆之介

    2014年入局。長野局、札幌局を経て首都圏局。都庁担当として教育や環境分野を主に担当。2歳の娘がいる1児の父

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