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東京・新宿歌舞伎町“コンカフェ”に通う少女たち 何を求めて?

  • 2023年5月2日

「コンカフェで1日最大20万使ったことがある」(15歳少女)
「誰にも必要とされていないと思っていたけど、コンカフェは全肯定してくれる」(14歳少女)

「コンセプトカフェ」(通称・コンカフェ)は店員が、特定の世界観のキャラクターにふんして接客を行う店です。中でも、新宿・歌舞伎町では若い男性店員が接客する「コンカフェ」が急増し、10代~20代の女性を中心に人気を集めています。有料で“推し”の男性店員と写真が撮れたり、高額な料金を支払うことでプリクラやデートなどの“特典”を得られたりするお店も。

取材を進めると、10代の少女たちが数十万を費やしたり、店に通うお金を得るために「パパ活」を始めたりする実態が見えてきました。少女たちは何を求めて「コンカフェ」に通うのでしょうか。少女たちの声を聞きに歌舞伎町に通いました。(2022年取材)
(首都圏局/ディレクター 二階堂はるか)

歌舞伎町で「コンカフェ」が急増

歌舞伎町の真っ赤なアーケードをくぐると、学生服や貴族風の格好など、さまざまな衣装を身にまとったコンカフェの男性店員たちが、店の宣伝を行う姿が見えてきます。

執事や王子様、天使や悪魔、アイドルなど特定の世界観のキャラクターにふんした男性たちが、それぞれのコンセプトにあわせてデザインされた店内で、接客を行うことが特徴の「コンカフェ」。歌舞伎町では、こうした店舗がここ1、2年で急増、その数は少なくとも20軒以上あるとみられています。

利用者は多くが10代から20代の若い女性たち。その中には「トー横キッズ」と呼ばれる少女たちもいました。ここ数年、歌舞伎町には親からの暴力や育児放棄などから家にいられず、学校や地域などにも居場所がない子どもたちが全国から集まっていて、その一部がコンカフェにも通うようになっています。

歌舞伎町の「トー横」に集まる若者たち

16歳・高校2年生
「男性店員にリアルに恋してるみたいなので『リアコ』っていうんですけど、リアコのところに行くときはガチで本当にワクワクし放題」

15歳・中学3年生
「1日最大20万使ったことがある。お店に行くだけでメンタル回復する。会える日にち決めて、それまで頑張ろうって気持ちになるから。生きるモチベーション、本当に大事な存在」

ボトル1本1万円超 「“推し”が喜んでくれるなら」

最近コンカフェに通い始めたという高校2年生のつむぎさん(仮名・17歳)。東海地方からやってきていました。

つむぎさん(仮名・17歳)

つむぎさん(仮名・17歳)
「コンカフェは、ティックトックとかツイッターを見て知りました。おすすめとかに出てくる。歌舞伎町を友達と歩いていたら、メンコン(メンズコンセプトカフェの略)で働く男の人が声かけてきて、めっちゃかっこいいなって思って。友達がそのメンコンに行こうって言ったら、めっちゃ話しかけてきて、行こうってなった」

初めて行った店で、1時間以上男性店員との会話を楽しんだというつむぎさん。さっそく“推し”の男性店員ができました。

「店員とチェキ撮るのが1枚1000円ぐらい。集めようと思ってる。最初は緊張してたけど、話してくるうちに楽しいなって思って、めっちゃ会話弾んで。『服かわいいね』とか『似合ってるね』とか『髪型もかわいいね』とか褒めてくれるし、うれしかった」

つむぎさんと“推し”の写真

その時の記念にとっているというレシートを見せてくれました。1杯1000円ほどの店員へのドリンクや写真撮影などにお金を使い、その日の支払いは合計9600円になりました。

記念にとっているというその日のレシート

「めちゃくちゃ高くなりました。店員が『のど渇いたからドリンク飲んでもいい?』って聞いてきて。断れないじゃん。だからいいよって言ったら、どんどん金額があがっていった」

その店のメニュー表を見ると、ビールやカクテルなどのお酒が1杯500~1000円ほどからある一方、さまざまな種類のノンアルコールのスパークリングもあり、ボトル1本が安くて3000円ほどから、3万や5万、8万円以上のものもありました。

ノンアルコールのスパークリング1本の値段

また、店には男性店員の売り上げランキング表もありました。客が男性店員にお金を使えば使うほど給料に上乗せされ、ランキングが上がる仕組みです。

その後、男性店員のためにバイト代などをやりくりして再びお店に行ったつむぎさん。支払額は1万7600円。今回初めて1本1万円以上するボトルをたのみました。

「ボトルおろしたらランクが上がるかなって思っておろした。高いって思ったけど喜んでくれるならいいかなって思って。“推し”のためにお金を使うのは、もったいないとは全然思わない。喜んでくれるし全然いいと思う。

また行きたい。他の人もボトルとかいろいろ入れているから、その人たちに負けたくない。そういう人たちよりももっと頑張りたいなって思う」

コンカフェが“唯一の居場所”

人とつながるためにお金を使う少女たち。その根底にはどんな気持ちがあるのでしょうか。
“コンカフェに行くときだけは心が安まる”という中学生のゆいさんに出会いました。コンカフェに通って4か月程がたつといいます。

ゆいさん(14・仮名)
「新しい“推し”見つけたし。幸せ、早く会いたい、毎日行きたい。家だと兄弟とかもいないし、1人が多いし、何かあった時に人に会えないのがつらいから。でもメンコンは落ち着いて楽しいし、幸せ」

ゆいさんが幼いころに両親は離婚。母親と2人で暮らしてきたといいます。いまはあまり家に帰らず、歌舞伎町で出会った仲間たちと一緒にホテルに泊まったり、野宿したりして過ごしています。

「親は私のこと、全部放置してるもん。話さないもん、家にいても。親もずっといろいろな彼氏がいて、私は放置されることが多かったから、私って邪魔だなって思って。親に『死ぬ』っていったら『勝手に死ね』『死にたいなら勝手に死んでこい』みたいな感じで言われたから、やっぱり私、必要とされていないんだな、みたいな。誰にも必要とされなくて何のために生きているんだろう、みたいな」

学校にもなじめず、どこにも居場所がないと感じてきたゆいさん。コンカフェにいるときだけは心が休まるといいます。

「話を聞いてくれたりとか、気にかけてくれる。メンコンは全肯定してくれる。『そうなんだね』『え、やばいね』『大変じゃん』とか全肯定してくれるから、なんていうんだろう、満たされるというか、幸せになれる」

店に通うお金を得るために、ゆいさんはSNSで知り合った見知らぬ男性と食事などをしてお金をもらう『パパ活』を始めました。

見知らぬ男性から来たメッセージ

「健全(性的接触がない)だから。めっちゃ頑張れば1万、だいたいは7000円もらえる。会ったことない人とパパ活するのは、怖いって思うけど。でもどうにかなるなっていう精神でやってる。例えば、遠いとことか場所がわかんないところとかは行かないようにして。メンコンの料金が高いなぁって思うけど、その分いまが幸せだからパパ活頑張ろうって思える。私いま、メンコンが一番楽しいし、自分の気持ちが落ち着く場所だから」

一見するとホストクラブのよう・・・なぜ未成年が行けるのか?

一見するとホストクラブのような営業形態にも思えるコンカフェ。なぜ未成年が行けるのでしょうか。

本来、ホストクラブのような「接待」を伴う店は、風俗営業法上の許可が必要です。許可がなければ、18歳未満は入店できず深夜営業もできません。

しかし、一部のコンカフェの中には、例えば男性店員が席には座らず、ひざまずいたまま特定の客と談笑などすることで「接待にはあたらない。だから許可はいらない」として未成年の入店を可能としているところがあります。

ただ、風俗営業に詳しい弁護士法人・響の西川研一代表弁護士は、こうした業態が接待に当たる可能性もあると指摘します。

弁護士・西川研一さん
「接待に当たるかどうかは個別の要素ではなく総合的に判断されることが前提ですが、座っていようがしゃがんでいようが、接待には当たり得ます。また、有料の写真撮影を行ったり、店員の指名料があったりする場合なども、接待と認定される重要な要素になり得ます」

重要なのは子どもの選択肢を増やしていくこと

“生きづらさ”を感じる少女たちに、大人や社会はどう向き合うべきなのでしょうか。
貧困や虐待などに直面する10代の少女たちの声を聞き、シェルターでの保護や専門機関につなげる支援を続けてきたNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさんに話を聞きました。

橘ジュンさん
「少女たちの相談を待っているだけでは届きませんし、こうした子どもたちと出会えません。だから私たちが気にして、直接探しに行く、話を聞いて時間をかけて信頼関係をつくることが大事なので、アウトリーチの活動をもっと広げていきたいと思っています。子どもたちは支援者が会いに行くだけで信用してくれるんです。自分のためにわざわざ来てくれたって。子どもたちも直接会うことを本当は求めていると思います。

自分たちと会うことで気分がすっきりしたり楽になったり、自分の話を聞いてほしい時に頼れる存在として、信頼できる大人やそうした時間、居場所といった選択肢を増やしていくことが大切だと思います。何度も少女たちに会って、彼女たちの選択肢をつくっていくと、変わっていく子もいます。だから諦めないで関わり続けること、私たちが諦めないこと、大人たちが諦めないことが大切だと思います」

【相談窓口】
「特定非営利法人BONDプロジェクト」 ホームページ (NHKのページを離れます)

少女たちに出会って

歌舞伎町で多くの少女たちに出会い、話を聞かせてもらいました。少女たちの心の奥には、自分の話を少しでも聞いてほしい、誰かに少しでも必要とされたい、少しでも自分という存在を気にかけてもらいたい…といった気持ちがありました。たとえ1時間でもいいから、数万円という高額のお金を使ってもいいから、その気持ちを満たそうとする少女もいました。

何にお金を使うかは少女たちの自由です。ただ、少女たちが生きてきた中で、お金の対価としてではなく、誰かに褒められたり、応援をしてもらったり、真剣に話を聞いてもらえたり、ありのままの自分を認めてもらえたり、そういう経験はなかったのだろうか、そういう人間が少女たちのそばにいなかったのだろうか、少女たちに関わってきた大人たちは何をしていたのだろうか…など、少女たちの境遇に思いをはせると、胸が締め付けられるような気持ちがしました。

自分という人間がただ自分のままで認められる場所が、家庭や学校、地域だけじゃなく、社会の選択肢としてもっとあってもいいのではないか。
歌舞伎町に集まる少女や少年をはじめ、息苦しさや生きづらさを感じる子どもたちにとって、居心地の良いと思える居場所とは一体どんな場所なのだろう。新たに生まれた問いの答えを、今後も歌舞伎町に通いながら子どもたちの声の中から見出していきたいと思います。

歌舞伎町に集まる少女たちを8か月取材した記事はこちら
 

※未成年の取材にあたっては、NHKでは必要に応じて保護者の承諾を得ることとしていますが、親との関係に悩んでいたり、育児放棄とみられる状況に置かれたりする子どもも多く、専門家と相談した上で、あえて保護者と連絡を取らずに取材を進めたケースもあります。

  • 二階堂はるか

    首都圏局 ディレクター

    二階堂はるか

    2016年入局。沖縄局、ニュースウオッチ9を経て現職、2年ほど前から「性暴力」をテーマに取材。

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