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統一地方選挙 なぜ東京で「維新」の勢力拡大?

  • 2023年4月28日

新しい時代「令和」になって初めての統一地方選挙。

日本維新の会は、前半戦の道府県議会議員選挙などで見せた勢いのまま、東京で行われた区市町議会議員選挙でも議席を大きく伸ばすなど躍進した。

大阪の地域政党から出発した日本維新の会は、なぜ、東京で勢力を拡大できたのか?
今後の都政の焦点は?
都議会各党の取材で探った。

(首都圏局 都庁クラブ)

統一地方選挙で「維新」勢力拡大

統一地方選挙の前半戦で、日本維新の会と大阪維新の会は、41道府県議会議員選挙のうち、18の道府県であわせて124議席を獲得し、選挙前の59議席から倍以上に増やした。

迎えた後半戦。
東京での地盤づくり」として、首都・東京で行われた区市町議会議員選挙には、あわせて70人の候補者を擁立し、67人が当選した。

選挙戦では、日本維新の会の共同代表を務める大阪府の吉村知事が、都内に応援に入る力の入れようだった。

投票日前日の4月22日。
吉村知事が入ったのは、元都議会議員で党所属の参議院議員が地元とする大田区や北区などで、この2つの区は都内における最重点地域とされていた。

吉村知事は、大田区のJR蒲田駅前で演説し、集まった人たちを前に、都民に新しい選択肢を示したいという考えを強調した。

吉村知事
「維新の会は決して大阪だけの政党ではありません。『吉村さん、国政選挙でもないのに、なぜわざわざ大阪から来るの』と言われるかもしれないが、皆さんの生活に直結しているのは、やっぱり区政だ。そういった意味で、地方議員の仕事は本当に大事だという思いでやってきた。

そして、もう1つは新しい選択肢を皆さんにお示ししたい。自民党や立憲民主党と比べてみてください。自民党が何を言っているか、何を実際やってきたか。ましな方に投票してください」

応援を受けた公認候補の1人は「想像したより人が集まっているし、熱気を感じる。吉村さんは風を起こすことができる人だと思うので、その力を借りて駆け抜けたい」と話した。

結果として、日本維新の会は、選挙前の21議席から、追加公認の1人を含めて73議席に伸ばしたということで、前半戦に続いて勢いを示した。

なぜ維新が拡大? 各党の分析は

なぜ、日本維新の会は議席を大きく伸ばしたのか。
都議会各党は、次のように分析した。

自民党
都連幹部

都議会第1党の自民党の都連幹部
「日本維新の会は躍進と言っていいだろうが、東京に根ざした政党になれるかは課題だ。自民党にとっては、今回行われた区議会議員選挙で、7人の候補者が落選した地域もあるなど、有権者からとても厳しい結果をもらった。既存政党に厳しい目が注がれたと思うが、何が起きたのか、きちんと総括が必要だ」

都民ファーストの会 幹部

都民ファーストの会の幹部
「日本維新の会に”風が吹いていた”ということだろう。脅威ではあるが、それがちゃんと東京で根づくのかがポイントだ。われわれにとって重要なのは都議会だ。こちらとしては小池知事がいる影響は大きい」

共産党都議団
幹部

共産党都議団の幹部
「維新の勢いは感じているが、本来、共産党と票を真っ向から食い合う相手ではない。維新の躍進というよりは、その裏にある既存政党に対する都民の失望感に危機感を抱いている」

立憲民主党都議団 幹部

都議会立憲民主党の幹部
「『維新がいい』というよりは、『自民もいやだ、立民もいやだ』という人の受け皿になったのだろう。立憲民主党としては、善戦したと言っていい。維新は劇的に増えたわけではないが『躍進』は感じている」

また公明党は、今回、ショックを隠せない事態となった。
練馬区議会議員選挙で候補者11人中4人が落選したのだ。
公明党は、選挙で擁立した候補者が当選する割合が高く、党関係者は「うちは100%主義だ」と自負する。

公明党によると、前回行われた統一地方選挙の区議会議員選挙では、練馬区での11人を含め擁立した150人全員が当選し、今回の前半戦では、関東で行われた5つの県議会議員選挙で候補者31人が全員当選していた。

都議会公明党
幹部

公明党関係者
「練馬区はびっくりした。ちょっとショックだ。維新が頑張って票を伸ばしたというよりも、小池知事の影響もある。練馬に応援に入っていたため、都民ファーストの会の候補者の票が伸びて、うちが割を食った。維新が躍進したと言っても、都内で70人も当選していないので、そんなに驚異に感じていない」

都民ファーストの会「70点ぐらい」

公明党が指摘した、小池知事の動き。
小池知事が特別顧問を務める東京の地域政党・都民ファーストの会は、今回の統一地方選挙を「党勢の回復」、そして「反転攻勢」をテーマに臨んでいた。
というのも都民ファーストの会が、選挙や離党などで都議会での勢力の縮小が続いていたため、今回の統一地方選挙が、党としての今後を占う試金石だったからだ。
このため、前回の選挙より、およそ2倍の60人の候補者を擁立し、全員当選を目指していた。

こうした状況の中、小池知事は、選挙期間前から公認候補者の支援を積極的に行った。
後半戦の告示まで10日あまりに迫っていた4月4日。
小池知事は自身の政治資金パーティーを立川市のホテルで開いた。
党関係者によると、多摩地域でパーティーを開くのは初めてで、統一地方選挙に向けた票の掘り起こしが狙いの1つだったという。
さらに、候補者の事務所開きのほか選挙期間中の演説など、ほぼ全ての候補者の応援に入り、支持を呼びかけた。

結果は60人中、44人当選。議席を選挙前の29から49に増やした。
結果について、党の森村隆行代表は会見で、一定の成果が出たことを強調した上で、日本維新の会との違いについて言及した。

都民ファーストの会 代表 森村隆行さん
「60人擁立して全員当選を掲げたが、結果を見ても70点ぐらい。旗やポスターで知事と並んだとしても不十分な部分あり、知事本人が来て『候補者です』と紹介してくれると、結びつきがはっきりするので、効果は明確にあったと思う。

都政(都議会)では、日本維新の会は1人しかいない。今、私たちは小池知事を擁しているというか、非常に密な連携をして、第2会派として都議会で一定のプレゼンスを持っている。責任を負っている状況なので、丁寧に良い仕事をしたい」

4月28日、小池知事は定例会見で、党の選挙結果について「それぞれ選挙区において活動されてこられた成果などが具体的に出ているということだと思う」と締めくくった。

照準は補欠選挙へ

統一地方選挙が終わり、都議会各党の照準は6月4日都議会・大田区選挙区の補欠選挙に向かっている。この補欠選挙は、大田区選出の自民党と都民ファーストの会の都議会議員が、今回の大田区長選挙に立候補したことに伴い、欠員が出たため実施される。

日本維新の会の関係者は、統一地方選挙を踏まえ「維新への期待感が高まっていると感じる。もちろん補欠選挙にも候補者を立てる」と言い切り、議席を奪いたい構えを隠さない。

これに対し、大田区での議席を維持したい自民党の幹部は「都議会会派の議席数を取り戻すため、候補者を擁立し、必ず勝たなければいけない」と意気込む。

また、都民ファースト会の幹部は「候補者を立てなければならない。小池知事の意向は一貫していて、『数を減らすな』だ」と話す。

このほか公明党、共産党、立憲民主党も対応を検討している。

衆議院の解散をめぐり自民党内からは「野党側の準備が整わないうちに行うべきだ」として、5月19日から21日に開かれるG7広島サミットのあと早期に行うべきだという意見の一方、「すぐに解散できる状況ではない」という指摘も出ている。
G7広島サミットのすぐあとのタイミングで行われる補欠選挙に、状況によっては各党がどのような戦略で臨むのか関心が高まることも予想される。

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