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東京都政 「都民ファーストの会」小池知事と「いばらの道」

  • 2022年11月29日

東京都の小池知事を支える“土台”がぐらつきを見せている。
小池氏が特別顧問を務める東京の地域政党・都民ファーストの会が、選挙や離党などで都議会での勢力の縮小が続き、11月発足した新体制でも課題が山積しているためだ。党幹部は今後の党運営を「いばらの道」と例えてみせた。
東京大改革の旗を掲げ、小池氏の“勢い”を示してきた都民ファーストの会に今、何が起きているのか。
(首都圏局記者/中村 大祐)

小池知事は大忙し

小池知事の最近の動きは慌ただしい。

新型コロナ対策に加え、面会や講演など過密な日程をこなす中、ことし5月からは海外出張を再開し、11月には、エジプトで開催されたCOP27に、都知事として初めて参加。肝いりの太陽光パネル設置義務化への取り組みなどを世界に発信した。

また「8年ぶりぐらいなので、楽しみ」とした母校のカイロ大学への訪問では、学生たちを前におよそ50年前の在学時に使っていた教科書を見せながら講演した。

最近では、温室効果ガスの削減目標やエネルギー危機を踏まえ、節電のための「タートルネック」などの暖かい服装を推奨する施策を打ち出すなど、幅広く活動している。

「いばらの道」とは

一方、都議会で小池氏を支える知事与党の都民ファーストの会には大きな転機が訪れていた。

小池氏の側近 荒木千陽氏

小池氏が「妹みたいな存在」とも表現する側近、荒木千陽氏が5年にわたって務めてきた党の代表を10月に辞任したのだ。
11月上旬には新体制が発足したものの、代表代行に就任した成清梨沙子・都議会議員は、自身のSNSで次のように発信した。

「誰が代表となっても茨(いばら)の道であろう中、火中の栗を拾ってくださった森村(隆行)代表には感謝を表する」

「いばらの道」に例えた理由について、成清氏は「都民ファーストの会が、かつての勢いがないのは明白で。このままでは数年後に消えてしまうかも知れない。誰がやっても大変なポジションだ」と危機感をあらわにする。

党運営への不満

危機感の背景にあるのは、党運営への不満が解消されず、党から離脱者が相次いでいることにある。
党内では、これまで「希望の党」を立ち上げ国政への進出を目指した小池氏の政治姿勢や、党の意思決定のあり方などへの疑問を理由に離党が相次いできた。
そして、ことし7月の参議院選挙では、荒木氏が立候補し、国政進出を目指したものの10位で落選。

東京都議会(10月)

さらに10月の都議会で、他の党が提出した都立高校の入試で使うスピーキングテストを巡る条例案に対し、3人の党所属議員が、党の方針に反して賛成。この造反した3人には除名処分が下された。

荒木氏の辞任は、都議が除名されてまもなくのことだった。
辞任の理由について、荒木氏は参議院選挙での引責辞任のつもりはないとしている。記者会見はせず、地域の街頭演説などで説明し誠意を尽くす考えだ。辞任の時期も、統一地方選挙に向けた党内の作業を優先していたという。

代表選挙めぐる小池氏の意向

一方、新たな代表を選ぶ際には、党内では、複数の候補者が出て選挙戦になることへの期待も出ていた。論戦を通じて、党をアピールできるという考えがあったからだ。

しかし、代表選挙の告示日に、届け出を行ったのは、新代表の森村隆行・都議会議員、ただ1人だった。
選挙戦に至らなかった背景に、ある都議は、小池氏の意向があったと指摘する。

小池氏は、スピーキングテストを巡る除名騒動の時から「これ以上、抜ける人を出さないように。党が分裂したら、都政が混乱する」と話していたという。

このため選挙戦での論戦で、党が割れていると見られることへの懸念から、立候補を目指していた都議どうしによる水面下の話し合いが持たれ、直前になって一本化が行われたのだった。

“小池氏の妹”も火種

新たな代表になった森村氏は、青梅市選出の2期目だ。小池氏が立ち上げた政治塾「希望の塾」の1期生で、「地味だが、能力が高い」などと評価する声が多い。

ただ党関係者は「森村氏と小池氏とのパイプはない」と小池氏との距離感を指摘する。

そうした中、新体制では、荒木氏が、小池氏とともに特別顧問に就任し、党内では「荒木氏を持ち上げすぎだ」とか「選挙で惨敗した荒木氏が、なぜ知事と同じ特別顧問なのか」という反感や、荒木氏が「院政」を敷くのではないかという懸念も出ており、火種がくすぶり続けている。

試金石は統一地方選挙

都民ファーストの会にとって、次の試金石は、来年4月の統一地方選挙だ。
11月16日の党セミナーで、小池氏は集まったおよそ500人を前に、党の重要性を、こう訴えた。

小池知事
「都民ファーストの皆さんがいるからこそ、政策が、これまで実現したと思う。知事と議会は、車の両輪をなすと言われており、戦略と意志の部分で、志を一(いつ)にする都民ファーストの皆さんがいる。東京大改革を、思いや方向性を1つにし、勢いをつけながら進めていきたい」

小池氏の知事としての任期は再来年7月末までで、党内からは「国政への進出ではなく、3期目を狙うのではないか」という憶測も出ており、統一地方選挙の結果しだいでは、小池氏の”土台”がさらにぐらつきかねない。

党幹部の1人は「都民ファーストの会は、政党としても議員としても未成熟で、小池氏に『おんぶに抱っこ』だ。小池氏はいつまでも知事ではいないから、持続可能な党にするためにもっと成熟していかないといけない」と話す。

都民ファーストの会として、結束して、勢いを取り戻していけるのか。
「いばらの道」はしばらく続くことになりそうだ。

  • 中村 大祐

    首都圏局 記者

    中村 大祐

    2006年入局。奈良局、福岡局、政治部、スポーツニュース部を経て2022年から首都圏局。現在は都庁担当。

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