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結婚、子ども…どうする?シェアハウス「ウェル洋光台」で考える

  • 2022年9月2日

「30代で結婚意思のない男性は26.5%。女性は25.4%」
2022年6月、内閣府が発表した男女共同参画白書が示したデータです。30代男女のおよそ4人に1人が、結婚の意思を持っていないことがわかりました。
これまで「当たり前」とされてきた家族の形は、若い世代の間で、すでに「当たり前」でなくなっているのではないか。
私たちは、若者が「結婚」や「家族」についてどのように考えているのか、深く知りたいと考えました。
(首都圏局/ディレクター 堀江凱生・實絢子)

激減する婚姻・出生数

結婚や家族のあり方は、ここ20年で大きく様変わりしています。
50歳の時点での未婚者は、20年前は人口のおよそ10分の1でしたが、現在は4分の1にのぼります。
婚姻数も、2000年には79.8万件あった婚姻数が、2021年には51.4万件にまで激減。
出生数も約119万人(2000年)が約81万人(2021年)まで減少しています。
私たちディレクターは20代後半。考えてみると、周りの友達から、「結婚」や「出産」に憧れを抱いているという声をあまり聞いたことがありません。若者の考えにどのような変化が起きているのか、疑問に思いました。

「結婚したい?したくない?」若者の声は

なぜ、「結婚の意思がない」男女が増えているのか。まずは町中で、20代から30代までの男女に、「結婚の意思の有無」と、その理由について聞いてみることにしました。

24歳女性
(看護師)

結婚したい。コロナ禍で誰かと自宅で過ごすことが少なくなったので、一生一緒にいられる人がほしい。

22歳女性
(学生)

30歳までに、2人の子どもを養えるくらいの経済力がある人と結婚したい。


一方、「今は結婚できない」「結婚したくない」という声も。

23歳男性
(学生)

SNSで、ママさんアカウントやパパさんアカウントの愚痴などを見ていると、大変だなと思ってしまう。

22歳女性
(学生)

両親が離婚しているので、あまり良いイメージがない。まずは自分の夢や目標を大事にしたい。

中でも多く聞こえたのが、経済面や生活面で、先の見通しが立たない時代ならではの不安の声です。

31歳男性
(会社員) 

収入があまり高くないので、ひとりが暮らすのが精いっぱい。

30歳女性
(医療事務)

自分の収入面での不安もあるし、同世代の異性でも一家を養えるような経済力のある人がいない。両親の仲がよいので結婚もいいなとは思うが、両親が家庭を築いた時代と今では違う。今後子どもを育てるにあたって日本は経済的に安定しているのか、不安要素も多く、結婚願望がなくなった。

他にも、支援や制度の問題を指摘する声が上がりました。

25歳男性
(会社経営)

収入は上がらないのに国の子育て支援などが少ないので、もう少し余裕ができないと。

22歳女性
(カフェ
店員)

日本で結婚したくない。名字を変えたくないから、夫婦別姓が承認されないならしなくてもいい。

 

家族社会学を専門とし、「婚活」といった言葉も生み出してきた中央大学の山田教授は、「結婚の意思がない」若者の割合が増えている背景について、「『戦後家族』の崩壊が加速している」と話します。

中央大学 山田昌弘教授
「結婚には、そもそも夫婦二人が『経済的・心理的な支え合い』という面が大きいですが、経済的収入が男女ともに安定しないなど、結婚がより難しい状況となっています。そもそも日本の家族は、『夫が外で働き安定した収入を得て、妻が家庭内のケアを担う』という形を取り続けてきましたが、その『戦後家族スタイル』自体が行き詰まっています。もっと早くから方向転換が必要でしたが、日本社会が微修正しかしてこなかったため、限界が来ているのでしょう」

新たな「家族」の形 多世代シェアハウスとは

結婚して家族を持つことに対して、若い世代がポジティブなイメージを持ちにくい現代の日本。
こうした中、新たな「家族」の形を模索する場所があると聞いて向かいました。

横浜市磯子区にある3階建てのアパート、「ウェル洋光台」。
小学生や赤ちゃんのいる子育て家族2組に加え、単身者やカップルなど、1歳から50代の26世帯35人が暮らす、多世代シェアハウスです。

台所とダイニング・リビングが住人内で兼用のため、夕飯の支度の時間は、手の空いている誰かがが子育て世帯を手伝うなどして、お互いに助け合って暮らしています。
小学生の子ども2人を育てる父親は、ここでの生活について、「夫婦二人でも大丈夫だけど、みんながいるともっと大丈夫」と語っていました。

一方、単身で暮らす若い世代にとっても、多世代シェアハウスに暮らして子育て世帯と関わりを持つことが、「結婚」や「家族」について考え直す機会となっています。

2か月前にシェアハウスに引っ越してきた長谷川解さん(24)。子どもたちの面倒を見たり、さまざまな家族と交流したりする中で、少しずつ「家族」のイメージが変わってきたといいます。

幼い頃に父親が亡くなり、母親と2人の兄弟とともに暮らしてきた長谷川さん。子どものためにと、仕事に追われる母親を間近に見て育つ中で、「自分には『結婚』は難しい」と感じるようになったといいます。

長谷川解さん
「結婚は、家族を持つという責任が生じることだし、『幸せ』というよりも『支えなくてはいけないもの』という印象を持っていて、あまり前向きになれない自分がいました」

しかし、シェアハウスで暮らし始め、子育てを手伝ったり、夫婦や子育て世帯など、さまざまな「家族」と接したりする中で、次第に「家族」に対するイメージが変わってきました。

「自分の責任で育てなきゃ、養わなきゃ、と思っていたけど、そうしなくてよいこともある。自分も家族を持つこともできるかもしれないと感じられるようになりました」

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