木材の不足と価格高騰が続く“ウッドショック”。こうした中、注目を集めるのが、これまであまり使われてこなかった国産木材です。日本は国土の約7割が森林に覆われる森林大国ですが、木材自給率は約4割にとどまっています。
ピンチをチャンスにつなげようと、新たな活用方法を模索する動きを取材しました。
(政経・国際番組部/ディレクター 籾木佑介 首都圏局/ディレクター 田中かな)
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木材がない!“ウッドショック”原因は?新築への影響は?
ことし、三菱地所や竹中工務店などが木材加工の工場を設立しました。
地域の山から調達した国産材を100%利用しています。
後押ししているのは、「CLT」と呼ばれる新技術です。
CLTはCross Laminated Timber の略称で、日本語では「直交集成板」と呼ばれます。板の繊維の方向が交互に「クロス」するように、幾重にも貼り合わせることで、強度を確保したパネルとなります。
いま注目を集めているのが、このCLTを床と天井に使った住宅の製造です。原木の調達から加工、住宅パーツの製造まで工場で一手に行います。建築現場での組み立ても容易で、大幅なコスト削減も実現しています。
100平方メートルの住宅の価格は、平均的な新築住宅の価格より20%ほど抑えられるといいます。
今は平屋のみと間取りに制限があり、販売も九州の一部(鹿児島・宮崎・熊本)に限られているCLTを使った住宅。しかし、こうした拠点を全国に展開することで、国産材の活用を進めたいと考えています。
木材加工販売会社 代表 小野英雄さん
ウッドショックは、国産材の供給リスクや林業の課題を顕在化したと考えています。国産材を使うことで、地元資源の有効活用や、林業全体の活性化につながる。まずはこの事業を着実に進めさせていただくことが重要と考えております。
“ウッドショック”を、ITの力でビジネスチャンスにつなげようとする動きも始まっています。
千葉市で住宅部材を製造する会社代表の塩地博文さんが取り組むのが、住宅建築に必要な木材を地域の山から効率的に切り出すための仕組みづくりです。
まず、工務店がつくる家の設計図の情報を大量に収集。どんな木材がどのくらいの量必要か、需要を割り出します。そして、その需要に見合う供給量を割り出すため、山にある木材の情報を詳しく把握しようとしているのです。
木造パネル製造会社代表 塩地博文さん
国土の70%近くある森林資源をどういうふうに日本の住宅とマッチングさせるか。国内にある資源をむだなく流通させるということに尽きていくわけですよ。
山にどれだけの木材があるのか。情報を収集するために、塩地さんが協力をよびかけたのが、信州大学農学部の加藤正人教授の研究チームです。
開発しているのは、ドローンを使い、山の木を細かく解析する技術。ドローンに搭載したレーザーで、上空から森林を3D計測し、木の種類や量を把握。
さらに地上からも、1本ずつの太さや曲がり具合などを詳細に捉え、山全体の資源量を算出しようとしているのです。
信州大学農学部 加藤正人教授
幹の太さや曲がり具合、傾斜など、現地に人が入らなくても自動的に情報が得られるので「垂直な柱がここから何本取れます」というのを出すことができますよね。
これまで把握の難しかった山側の情報を捉えることで、地域の中で国産材の利用を進められると考えています。
木造パネル製造会社・代表 塩地博文さん
「日本の森林は手つかずとはいいませんけれど、まだ余力のある資源を持っている。世界にどんなウッドショックの波が起きても、比較的波を小さくおさめられるんじゃないかと考えています」