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木材がない!“ウッドショック”原因は?新築への影響は?

  • 2022年8月26日

さまざまな製品が値上がりしているなか、1年以上価格が高騰しているのが木材です。“オイルショック”ならぬ“ウッドショック”とまで言われています。背景には、世界的に木材需要が高まり、求めている木が手に入りにくかったことがあります。影響を特に大きく受けている住宅建築の現場を取材しました。
(政経・国際番組部/ディレクター 籾木佑介 首都圏局/ディレクター 田中かな)

夢のマイホームが建たない!翻弄される施主

木材が確保できず、途方に暮れている家族に出会いました。
都内で一軒家を建築中の千田耕司さんです。3月から工事が始まりましたが、取材で訪れた7月時点では基礎部分のまま止まっていました。

千田耕司
さん

遅くとも子どもの夏休み中の8月には引き渡しできるんじゃないかという話はあったんですが、これはもう絶対無理ですね。

 

千田さんは、妻と小学生の子ども2人の4人家族。大きくなった子どもたちにそれぞれの部屋を作ってあげたいと考えていました。さらに千田さんと妻も在宅ワークが多くなり、家族みんなが居心地よく過ごせる空間を確保したいと願っていました。半年かけて間取りを考え、家族の思いを形にしてきました。

しかし、そこを直撃したのがウッドショックの影響です。ロシア産の木材を使った構造材が手に入らず、建築が止まってしまったのです。やむを得ず、別の木材に切り替えるなどしましたがすぐには手に入らず、結局、完成予定は当初の8月から年末にずれ込んでいます。
さらに、費用も当初の見積もりより144万円増加。現在暮らす家の家賃も数か月分増え、重くのしかかっています。

 

こればっかりは本当にもう、誰が悪いとかっていうのは言えないものだとは思うので、いちばん大きなものは運が悪い、悲しいっていう、まあその気持ちがいちばん強いですね。

背景にある世界経済の影響 さらにロシアの軍事侵攻の影響も

“ウッドショック”のきっかけは、アメリカでコロナ禍からの景気回復とリモートワークの定着などで住宅需要が急増したことです。その後、世界中で木材の取り合いになり、価格は高騰しました。

外国から輸入された木材の価格の推移を見てみると、去年1月には7万円台だった価格は、ことし4月には14万円を超え、その後も高止まりしています。
そこへ追い打ちをかけたのがロシアのウクライナ侵攻。世界全体の木材輸出量の21%をしめるロシアへの経済制裁で、輸入が難しくなっているのです。

その影響を受け、急激に不足したのが、住宅の床や壁に使われる部材です。
埼玉の木材問屋では、ロシア材を使った商品が手に入りづらくなり、注文をもらっても、すぐには出荷できない状況が続いています。

埼玉の
木材問屋

ウクライナの侵攻になる前でしたら、倉庫の中に高いところまで積んで満タンの状態にして、お客様からの注文が入って、お客様にお届けするという状態だったものが、今は残念ながらあまり在庫が置けないような状態です。われわれとしては仕事の流れが止まってしまっているので非常に困っています。

建材の高騰 悲鳴をあげる工務店

“ウッドショック”は、工務店にも深刻な影響を及ぼしています。
ほとんどの木材が倍以上に値上がりし、手に入れるのも難しい状況が1年以上続いています。

工務店
関尾英隆
さん

見えるものすべての値段が上がっています。上がっていないものを探す方が難しいです。

 

さらに、木材以外の建材も急激に値上がりし、資材価格は客へ提示していた見積もり額と大きく乖離。その差額は利益を削って対応することもありました。客に間取りの変更を求めるなどして、なんとかやりくりしてきましたが、もう限界だといいます。

工務店・関尾英隆さん
「簡単に言うと、3,000万円のお家は3,600万円になった。200万、300万ぐらい上がるのなら一生懸命工夫をして、お客さんにもちょっと予算をあげてもらい追いつけていたんですけど、ことしに入ってからはその額が400万、500万、600万という金額になってくるので工夫する場所も限られている。買い控えがもうすでに起こっていてちょっと怖いです」

こうした懸念は全国の工務店に広がっています。

建材価格高騰の影響を尋ねたアンケートでは、およそ6割の工務店が値上がり分をすべてまたは一部自社負担していることがわかりました。

“早く利用したいのに”住宅以外にも広がるウッドショックの影響

“ウッドショック”の影響は、私たちが使う公共施設にも及んでいます。

静岡県河津町で建設中の子育て支援施設。ことし4月にオープン予定でしたが、内装に使う木材などが手に入らず、工期が7か月遅れています。
町で初めてとなる子どもの一時預かりや児童館機能などが入るこの施設。町のアンケートでは、未就学児がいる世帯のうち44パーセントが利用を希望していました。

実際に、この施設を利用しようとしていた住民に話を聞きました。
夫と義理の母と旅館を営んでいる山田萌絵さんは、5歳から9歳まで3人の子どもを育てています。夏の繁忙期は休みが取れず、子どもたちの面倒を見ることが難しい状況です。

山田さん

子どもはどんどん大きくなってしまうので、早ければ早いほどその施設を使えると思うので、できるだけ早い完成を祈っています。

取材ではほかにも、幼稚園や高齢者施設などで建設が止まり、多くの人に影響が広がっていることが分かりました。さらに、原料に木を使っている家具や紙製品など私たちの身の回りのものも、原油高などもあって値上がりしています。専門家は、“ウッドショック”の影響は、今後もしばらくは続くとみています。

  • 籾木佑介

    政経・国際番組部 ディレクター

    籾木佑介

    2015年入局 仙台局、福島局を経て首都圏局。震災と原発事故、外国人問題などを取材。

  • 田中かな

    首都圏局 ディレクター

    田中かな

    2018年入局。秋田局を経て2021年から首都圏局。 秋田局在籍中から自殺や障害者に関するテーマについて取材。

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