ヤングケアラーは家族の介護を担うことが“当たり前”になって周囲に相談しないケースも多く、支援が必要な子どもをどう見つけ出すのか課題となっています。
こうした中、都内の社会福祉法人で始まった支援に向けた新たな取り組み。
担うのはケアマネージャーです。
(首都圏局/記者 氏家寛子)
ヤングケアラー支援の一端をケアマネージャーが担うのは、ふだんの仕事内容が関係しています。
ケアマネージャーは介護が必要な高齢者の自宅を訪れ、状態に基づいてサービスの利用計画を立てます。
介護を受ける本人だけではなく、その支え手となる家族の状況も確認します。
この「介護サービス利用者の自宅を訪れる」という仕事の特性を生かそうというのが今回の取り組みです。
ケアマネージャー 寺尾弘子さん
「ヤングケアラーはどうしても外からはわかりにくい問題で、自分たちからSOSを発信しにくいという部分もあると思います。ただ私たちケアマネージャーはもともと利用者の自宅に入っていて信頼感もあるので、少しそこ(ヤングケアラーの問題)にも踏み込んで言えることがあるんじゃないかと思っています」
この取り組みを始めた東京・世田谷区の社会福祉法人。
新たに作成したのが「ヤングケアラーアセスメントシート」と名づけた質問票です。
介護サービス利用者の家族にケアを担う子どもがいることがわかったときに、子ども自身に記入を依頼します。
例えば、「家の中で料理や掃除など生活のサポートをしているか」とか「自分のために使う時間に影響が出ているか」、「あなたがして欲しいと思うサポートや手助けはあるか」といった質問。
答えやすいよう「はい」「いいえ」で回答してもらう形式です。
子ども自身に「支援が必要」という認識がない場合でも、発見して支援につなげられるようにするのがねらいです。
設問ごとに解説をつけていて、ケアマネージャーそれぞれの能力や経験によらず支援のポイントがわかるように工夫しています。
社会福祉法人では所属するケアマネージャーたちを対象にした研修会も開いています。
訪問先に介護を担う子どもがいた場合にどのような対応ができるか考えようというものです。
取材した日の研修会には、およそ30人のケアマネージャーが参加。
課題としてあがったのは、子どもにとってどの程度介護が負担になっていて、支援が必要なのか判断が難しいことでした。
子どもの大変とかつらいという思いが表面に出てこないとなかなかキャッチするのは難しい。
やっぱり長い期間見ないとわからないし、関係性もできてからではないと踏み込むのが難しい。
研修会では、さらに、発見したあとどのように支援につなげられるかについても検討しました。
ヤングケアラーの家庭では、経済的な問題を抱える場合など、ケアマネージャーだけでは解決できないケースが想定されるため、自治体や学校などさまざまな機関と連携していく必要性が共有されました。
社会福祉法人奉優会 地域包括ケア事業本部 川口有美子本部長
「子どもは発信することがなかなか難しいので、それを大人が見つけてあげないといけないと考えています。情報をみんなで共有しながらヤングケアラーをしっかりと支援できているように研修を進めていきたい」
取材した社会福祉法人では、去年12月にヤングケアラーへの理解を深めてもらおうとガイドブックを発行しました。
発行に際しては、「まずはヤングケアラーの存在を社会に知ってもらい、みんなで目を配っていくことが必要ではないか」と話していました。
日本の社会福祉制度は家族による介護が前提となっていて、ヤングケアラーへの支援が遅れていると指摘する専門家もいます。
動きだした1つ1つの取り組みを面にして、子どもたちに必要な支援が届いてほしいと思います。
NHKではこれからも、ヤングケアラーについて皆さまから寄せられた疑問について、一緒に考え、できる限り答えていきたいと思っています。
ヤングケアラーについて少しでも疑問に感じていることや、ご意見がありましたら、自由記述欄に投稿をお願いします。