「同じ経験をしている同世代の子たちと話してみたい」
これは、ヤングケアラーの子どもたちからよく聞く言葉です。今回、当事者の子どもたちにバーチャル空間に集まってもらい、アバターを通して話してもらうと、同じ立場だからこそ言える本音がたくさん出てきました。
このバーチャル空間で聞けた話は、4回にわたってお伝えします。2回目は、高校2年生の“ことねさん”です。
(さいたま放送局/記者 大西咲)
ことねさんは、高校2年生の女子高生です。母親と妹、それに祖父の4人で暮らしています。シングルマザーの母親は家計を支えるために働いていて、母が介護ができない時間は、ことねさんが認知症の祖父の介護をしています。祖父は1人で歩くことが難しく、転倒する可能性もあるため、常に見守りが必要だそうです。
ことねさんは、見守りに加え、トイレの介助などをしているといいます。また自分自身も体調を崩し、学校を休むこともあるということです。
ヤングケアラーと呼ばれる人がたくさんいるのは知っていましたが、実際の生活の中で出会うことはありませんでした。同じヤングケアラーの人と、これまで一度も話したことが無かったので、この機会に話してみたいな、つながってみたいな、と思い参加しました。
友だちには、自分が介護をしているという話はしたことがありません。どうせ言っても、みんな経験したことがないから、大変さとか分からないだろうなみたいな感じで。
「なんで学校来ないの?」と聞かれることはありますが、その理由は言えず、「お腹が痛い」などと嘘を言ってごまかしています。本当は大変さを理解してほしい、理解してもらえたらうれしいなと思いますが、なんとなく理解してもらえなさそうな気がします。
祖父は認知症の影響か、何度も同じことを聞いてきて、それにすごくイライラして、当たってしまう時があります。「さっき言ったよ!」などと強い口調で言っては、直後に後悔するということの繰り返しです。忘れたくて忘れているわけじゃないのになって。本当は分かっているけど、自分自身も疲れていると、そういう言葉が出てしまいます。
「家にいたくないな」と思う時はあります。そんな時は、放課後に景色がきれいな海や夕焼けが見える場所に行って、ひとりになるとリセットできる気がしています。外に行けない時は、帰宅後誰とも話さずひとりで部屋にこもります。好きな音楽を聴いて、自分の中で気分転換できるようにしています。少しでも気持ちを切り替えることが大事だと思っています。
今、介護を受けている人(要介護者)への支援はありますが、実際に介護をしている人たちに向けた支援ってあまりないですよね。特に私たちのような10代は、学校が生活の大部分を占めているので、介護をしていると学校への影響は少なからずあると思います。
普通に学校に行っている人と、同じようには勉強の時間は取れません。祖父の世話をしなければいけないので、学校に遅刻することもあります。
さぼっているわけではなく、事情があって行けない時でも、通常の遅刻や欠席の扱いとなるので、そこは配慮をしてほしいです。介護が理由なのに、遅刻や欠席と扱われると、家族を見放して学校に行けということなのかなと思ってしまいます。
学校の授業の一環ではあるのですが、ヤングケアラーの人たちが集まれる場所を作ろうと思っています。同じ経験をしているからこそ話せることがあると思うし、友だちなどに話せない分、みんな同じようにたまっている思いがあるんじゃないかと思います。また場を作るだけではなく、どうしたら話しやすくなるか、色々頑張って考えていけたらなと思います。
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