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“18歳成人”高校生100人の声 一番の関心は「クレジットカード」

  • 2022年1月14日

「自分名義のクレジットカードで、ちょっと大きい買い物がしたい」
およそ140年にわたり、大人の定義であり続けた「20歳」。その成人年齢がことし4月から18歳に引き下げられます。高校3年生で大人の仲間入りをすることになる100人に話を聞いてみると、もっとも関心を集めたのは「クレジットカード」でした。
新たに手にする自由、そして責任。高校生にとっての「なりたい大人」「なりたくない大人」とは。もう大人になってしまった人も必見です。
(首都圏局/ディレクター 御巫清英 田淵奈央)

「18歳成人で変わること」何に関心?高校生100人アンケート

成人年齢が18歳に引き下げられることによって変わることのうち8つの項目について、何に最も関心があるかを100人の高校生に聞きました。

1位:クレジットカードを親などの同意なしで契約できる(43人)
2位:起業を親などの同意なしでできる(12人)
3位:裁判員に選ばれる可能性がある(10人)
3位:起訴されると実名や顔写真などを報道される可能性がある(10人)
5位:アパート契約を親などの同意なしでできる(9人)
6位:携帯電話を親などの同意なしで契約できる(8人)
7位:性別変更の申し立てができる(4人)
7位:ローンを親などの同意なしで組むことができる(4人)

自由を手に入れる喜び…クレジットカード・携帯電話・アパート・起業

圧倒的に多くの高校生が関心を持ったのは「クレジットカード」。100人中43人が選びました。オンラインで買い物をする機会が多く、クレジットカードでしか決済ができないケースもあるため、自分で自由にクレジットカードを使えるようになることに魅力を感じているようです。

「ネットで10分で完売しちゃうみたいな時に、親に頼むのはなかなか難しいし、自分で決済できると楽かな。あとは、親にあんまり言えないような買い物とか。したことはないですけど。今はこの服が欲しいなっていうときに親に言わなきゃいけないのがちょっと恥ずかしいというのもある。あまり干渉されたくない」

「成人になったらクレジットカードを持って、好きなものを買ったり、ちょっと大きい買い物とかもしてみたいです。いちいちお母さんのカード番号を聞いたりするのは手間なので、便利になるかなと」

続いて高校生の関心が高かったのが「起業」。100人中12人が選びました。早くから挑戦できるようになることに希望を感じるといいます。

「ふつうに就職しても収入がわかりきってるので、起業して社長になって大金持ちになりたい」

「起業して世界規模のアパレルブランドを作りたいという夢があって、早く起業ができれば経験も積めるし、夢にどんどん近づけるのかなと思います」

さらに、挑戦しやすい環境や、挑戦する人が増えていくことに期待する声もありました。
未成年が起業する場合、さまざまな契約の場面で親の同意書や委任状が求められることがありますが、成人年齢が引き下げられることでこうしたことが不要になるため、起業へのハードルが大きく下がるとみられています。

起業に伴うさまざまな契約

「コロナをきっかけに学生団体を立ち上げて、古民家を使った学生の居場所作りなどをしています。これから18歳で起業する人が増えていったら、それに感化されて自分たちもチャレンジしてみようっていう人も増えていくと思う。みんながチャレンジしやすい社会になっていくことをすごく期待しています」

「大学生の起業は結構増えてきたと思うけど、高校生は全国的に見てそんなに多くないと思うので、そこが増えたらもっと面白くなりそう」

「アパート契約」に関心があると答えたのは100人中9人。1人暮らしへの憧れもあるようです。

「高校卒業後は就職予定。親は1人暮らしできるのか不安がっているので、自分でできることを証明したい。疲れた、でも洗濯物しなきゃみたいな、仕事も家事もやらなきゃっていう充実感を味わってみたい」

「性別変更」に関心があると答えた人の中には、これが社会のムードを変えるきっかけになってほしいという声も。

「当事者の人たちからしたら、2年早まるというのは大きいと思う。法律が変わることで、社会的な意見がどう変わるかも気になります」

「責任」を持つことへの不安も…金銭トラブル、裁判員、実名報道

「自由」を手にすることに期待の声がある一方で、不安を感じる項目を選ぶ人もいました。

中でも多かったのはお金に関する不安。43人が選んだ「クレジットカード」や、金融機関などからお金を借りられる「ローン」については、便利になることと裏腹に、金銭トラブルに巻き込まれてしまうのではないかと心配する声もありました。

「クレジットカードはいつの間にかお金を使い過ぎちゃう怖さがある。友達は通販で買い物して、支払いを翌月に回せるみたいなことをやりすぎて、払えなくてやばいって話していた」

「ニュースなどで、クレジットカードを持ったばかりの無知な若者に狙いを定める詐欺師が多いというのを見たので、今の20歳でさえ被害にあうのに、高校3年で持つともっと事件が増えるんじゃないか。私もひっかからない自信はないです」

「ローンはかなり不安が大きいです。知り合いから『痩せられるよ』とか、美容に関することで高額商品を進められたときにちゃんと断れるかどうか。これまでなら18~20歳の2年間で経験を積んだり学んだりできたけど、今だとわからないことだらけです」

全国の消費生活センターなどに寄せられた若い世代の相談件数を見てみると、これまでは20代前半に比べて10代後半は低い水準に抑えられていました。これは、仮に親などの同意を得ずに契約を結んだ場合にあとから取り消すことができる「未成年者取消権」があるためだと言われています。しかし、ことし4月以降は、18歳でこの権利がなくなるため、悪質商法などから狙われやすくなると懸念されています。

クレジットカード、起業に次いで関心が高かったのが「裁判員」「実名報道」。「身が引き締まる」と受け止める一方で、責任が重すぎると感じる人も。

「えん罪とかもあるし、その責任をもつのは不安」

「判決を下すのはやっぱり10代じゃなくて20代、30代の大人がやったほうが、経験も積んでいるし的確な判断ができるんじゃないか」

「犯罪を起こす気はないけど、実名報道となると余計にやっちゃだめだなと。責任感がわきます」

「18歳はまだまだ子ども。何が犯罪になるとかをあまりわかっていないので、もしそれが犯罪だったときにやばいかなって。名前がばれることで将来の就職とかも不利になると思うので」

高校生が考える「なりたい大人」「なりたくない大人」

最後に、高校生が抱く“大人像”について聞きました。

「大人は自分の考えに基づいて大きな決断をしたり、自立していろいろな行動ができたりする人。成人になるのはまだ不安が大きいし、大学に行ってもっと社会について学びたい」

「自分で物事を決められなくて、他人のせいにする大人にはなりたくない。自分の失敗をほかの人に責任転嫁するような大人は嫌だ」

「大人は自己責任。今よりも常識を守ることを自覚して生きていく必要がある。急にいま大人になっても親を頼っているところもあるし不安があります」

「むちゃをしない人が大人。家庭を持つとか、会社の人を巻き込んでしまうとなったときにむちゃはできなくなる。それが信頼にもつながるのかもしれないけど、僕は何歳でもむちゃをしてチャンスをつかんでいきたい」

「大人は漢字1文字で表すと『力』。自分の親がここまで育ててくれて、いろんな経験もさせてもらったので、頼もしいというか力強いというか」

「大人は何にも縛られず自由に生きてるみたいなイメージがあります。憧れるし、早く大人になりたい」

「大人は自分でお金を稼いで自分でちゃんと生きていける人。早く大人になりたいっていう気持ちもあるけど、まだ親に頼っていたいなという気も」

取材後記

成人年齢が18歳に引き下げられることで、自分ひとりでできることが増えて「自由」が広がると喜んでいる人たちが多いのではないかと思っていたのですが、多くの高校生がこれまで以上に「責任」を持って行動しなければいけないという自覚や、そうした行動がまだできないかもしれないという不安を抱いていたことがとても印象的でした。

高校生たちの「大人像」を聞いていると、自分自身は彼らの理想とする大人になれているのか、「こうはなりたくない」という大人になってしまってはいないか、考えさせられました。今すでに成人の方も、これを機会に改めて「大人とは何か」考えてみませんか?

  • 御巫清英

    首都圏局 ディレクター

    御巫清英

    2010年入局。2021年から首都圏局。18歳のころは、サッカーと筋トレに没頭。

  • 田淵奈央

    首都圏局 ディレクター

    田淵奈央

    2014年入局。松江局・おはよう日本を経て、2020年から首都圏局。人口減少問題や里親支援、新型コロナの医療現場などを取材。

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