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TikTokで人気の景井ひなさん 山本五十六描くドラマへの挑戦

  • 2021年12月28日

香取慎吾さん主演のNHKドラマ「倫敦ノ山本五十六」(12月30日放送)に出演する景井ひなさん(22歳)。実は動画共有アプリTikTokで、日本人女性では1位の1000万人を超えるフォロワーがいます。若者から絶大な人気を誇る “ティックトッカー”。景井さんの動画はなぜそこまで“バズる”のか? 動画投稿にかける強い思いとドラマへの新たな挑戦について聞きました。
(首都圏局/ディレクター 古田優季・竹前麻里子)

若者に人気の景井ひなさん NHKドラマに初抜擢

12月30日に放送される、太平洋戦争80年・特集ドラマ「倫敦ノ山本五十六」。
のちに真珠湾攻撃の作戦を立案した提督・山本五十六(主演:香取慎吾さん)が、アメリカなど列強との戦争を避けたいという自身の信念と、軍拡を進めたい軍上層部の間で板挟みになり、もがく様子が描かれています。景井さんは山本家の女中・正木美子役を演じました。
山本五十六という歴史上の人物を主人公にするにあたって、より幅広い世代に興味を持ってもらいたいと、若者に人気がある景井さんが抜擢されました。

ドラマ「倫敦ノ山本五十六」より。左から2人目が景井さん。

ノリで投稿した動画が100万回再生!?TikTokで一躍人気に

熊本県で育った景井さん。ブライダル関係の専門学校に通っていた2019年に初めて投稿した動画が100万回近く再生され、あっという間に人気ティックトッカーになりました。

景井さん

友達から「TikTokというアプリがあるよ」と教えてもらって、最初は何気なく、ノリで投稿しました。次の日に起きたら通知がたくさん来ていて、「アプリが壊れたのかな?」と思ったら、バズっていました。このときはうれしいというより、びっくりしましたね。

景井さんが初めて投稿した動画(2019年1月)

バズる動画は“開始3秒”が勝負

Q:景井さんの動画は、2億回以上再生されたものもあるなど、大きな反響を呼んでいます。動画を作る上で意識していることはありますか?

 

TikTokは、いろんな動画を指で次々とスライドしながら見る人が多いので、その指を止めるために、開始3秒の作りを意識しています。たとえば、顔のめちゃくちゃアップから始めたり、思わずドキッとして目をとめるような動作を入れたり、スマホの電話のダイヤルを押して音楽を演奏しているように見せるなど、「え?何やっているの?」「マネしてみたい」と思ってもらえる動画を目指しています。

思わず目がとまる動きや表情を“開始3秒“に入れることが多い

Q:たとえばこの動画は、どんなところを意識して撮影したのですか?

景井さんが撮影した動画

 

TikTokのエフェクトで、画面上で指を動かすと画面をアップにしてくれるというものがあるので、それを使いました。こうしたエフェクトを使うと、「何だろう?」と手を止めて見てくれる人が多いです。振り付けは、日本の方でも、海外の方でも、言語関係なく誰が見てもわかりやすいものを取り入れるようにしています。

“バズり”への不断の努力 15秒にかけるエネルギー

Q:動画で使う楽曲やネタはどうやって探しているんでしょうか。

 

時間が空けばずっとTikTokを見て、はやりそうな音楽やダンスを探しています。1人暮らしなので、ご飯を食べている時やお風呂に入っている時も見ています。TikTokをずっとやっていると、これはバズるだろうというのが分かるようになるんですよ。この曲調、前もはやっていたなとか、中毒性が高いなとか。はやっているものを見つけたらすぐに動画に取り入れて公開しますし、旬があまり関係ない動画も準備しておいて、流行のネタが無いときにあげたりしています。

Q:景井さんは、TikTokのアプリやさまざまなクリエイターが提供する音源や振り付けを使って動画を作ることが多いですが、自分なりのアイディアを加えることはありますか。

 

ありますね。自分なりにどうすればフォロワーに喜んでもらえるのか考えて投稿するようにしています。たとえば今は、海外の方がなかなか日本に来られないので、日本の四季を感じられる、紅葉がきれいなところで動画を撮ったりしています。日本のフォロワーからも、「私の地元に来てくれたんだ」と喜ばれました。

Q:動画の撮影にはどのくらいの時間をかけていますか。

 

動画によって違いますが、時間がかかる時は丸1日。私は、いいと思える動画を必ず3本撮るようにしているので、短いときでも20分くらいはかかります。3本の中から、ダンスがよく踊れているもの、うまい表現ができているものなど、1番みんなに伝わると思う動画を選んで、投稿しています。

動画の撮影はスマホで

Q:今日は忙しいから1本だけ撮れればいい、ということはないですか?

 

パパっと撮って投稿して“それでいいでしょ”というのは嫌なので、必ず3本は撮っていますね。私の動画は見るのに最低15秒はかかるので、ファンの方がアプリを起動して、動画を見るという時間を使ってもらっていることを考えると、「今日はこんな動画か…」ってがっかりされたくないんです。楽しみにしている方には何倍も動画で返したいので、手は抜けません。あと、私自身が、好きな物は突き詰めて追求していきたい性格なので、3本撮るのは癖になっています。

広がる活躍の場 特集ドラマへの挑戦

NHKドラマ「倫敦ノ山本五十六」への出演は、本格的な演技の経験が少ない景井さんにとって、大きな挑戦になりました。

Q:ドラマの撮影で印象的だったことはありますか。

 

私は左利きなので、最初の顔合わせの時に、監督から「右でお箸を持てるようにしておいて」と言われました。昔は左利きだと右利きに直されることが多かったそうなので。撮影に入るまでの間に、右手でご飯を食べられるようにひたすら練習しました。

ドラマ「倫敦ノ山本五十六」より 右が景井さん

Q:右手で食べられるようになりましたか?

 

ギリギリ食べられるようになりました。顔合わせをしてから撮影まで1週間しかなかったので、右手で食べるのは結構ハードルが高かったです。どんな食事が出るのかわからなかったので、魚だったら骨を取ったりしないといけないと思って、ひたすら練習しました。すくい箸にならないようにとか、そういうのも気にしながら。

Q:主人公の山本五十六はご存知でしたか。

 

名前は聞いたことがあったのですが、深くは知りませんでした。監督からは「戦争に反対している人ではなく、戦争があるなら、じゃあ行こうというタイプの人。家族も戦争があるのが当たり前の時代だから、行くならちゃんと送り出してあげましょう、帰ってくる時はちゃんと迎えてあげましょうというスタンス」と言われて。
女中の私は、山本家の家族がどのようなメンタルなのかを気にしている役なのかなと思いました。五十六さんが戦争に行くときはしっかりとお見送りをして、五十六さんが戦争に行っている間は、妻が1人で家を守るので、それを支えるということを意識して役作りをしましたね。

ドラマ「倫敦ノ山本五十六」より

Q:TikTokをやってきたことが生かせた部分はありましたか。

 

TikTokを始めた当初は表情が硬かったのですが、動画の投稿を続けるうちにどんどん、柔らかい表情も出せるようになりました。ドラマの撮影で「こういう表情できる?」と言われて、すぐに対応できたのは、動画の投稿をやり続けたからだと思います。

動画投稿はやめない 誰かを笑顔にするために

ドラマだけでなく、ラジオのパーソナリティーやモデルなど、景井さんはいま活躍の場をどんどん広げています。それでも毎日、夜7時の動画投稿を欠かしていません。

 

ファンの方の中には、毎日夜7時前にアプリを起動して、動画の投稿を待ってくれる人がいるんですよ。1分でも投稿が遅れると、「今日は動画上がらないの?」というコメントがたくさん来ます。すごく楽しみに待っててくれる人がいるから、自分を奮い立たせて投稿を続けています。
動画を見た人からは「嫌なことがあったけど、動画を見て元気になった」「学校に行ってなかったけど、ちょっとだけ行ってみる勇気が出た」というコメントがたくさん来ます。
私も学校で嫌がらせを受けて、つらくて、消えちゃいたいと思う時期があったんです。一番つらかったのは中学生の時。体操服がなくなったり、私の悪口が書かれた手紙が席にわざと置いてあったり。嫌がらせを受けていることを親にも言えなくて、学校にも家にも居場所がないと思っていました。
いまも投稿をしていると、容姿に対して心ないコメントが来ることもあります。「顔が全然違う」と言われたり、目や口が半開きの場面を動画から切り出して、「これが本当の顔だ」と書く人がいたり。
心ないコメントはつらくて悲しいですが、それでも、これだけ多くの方が応援してくれている。
周りに助けを求められない子とか、生きてるのがつらいと思う子から、私の動画を見てプラスな気持ちになれたとか、動画を見ている間だけでも笑顔になれたというコメントをもらって。そういう子に、私が直接手を差しのべることはできないけど、動画を通して支えられたらいいなと思いながら投稿しています。

Q:景井さんの今後の目標を教えてください。

 

好奇心がすごくあるので、自分ができる事は本当に何でもやりたいです。私は今でこそいろいろなメディアに出させていただいていますが、TikTokでバズる前は普通の一般人でした。私の動画を見てくださっている子の中にも「芸能界に入りたいんだけど、入る勇気が出ない」とか「芸能界への入り方が分からない」という子がすごく多い。自分がこれから先、どんどんいろんなメディアに出ていけば、そういう思いを持っている人達の背中を押せるようになるんじゃないかなと思います。そのためにもこれからも頑張っていきたいです。

 

◆太平洋戦争80年・特集ドラマ「倫敦ノ山本五十六」
12月30日(木)[総合]午後10:00~11:13 
※放送から1週間は NHKプラス で配信します。

◆景井ひなさんのTikTok撮影の様子やインタビューを「おはよう関東甲信越」で放送します。
1月4日(火)[総合]午前7:45~8:00(関東甲信越エリアのみ)
※放送から1週間は NHKプラス で配信します。
配信は全国からご覧いただけます。

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