WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. コロナ禍の出産子育て「頑張っているね、休んでもいいよ」

コロナ禍の出産子育て「頑張っているね、休んでもいいよ」

  • 2021年6月4日

「妊婦健診に夫が付き添えなかった」「里帰り出産をやめた」
感染予防のため、出産や子育ての現場でも人と人との接触が制限されるなか、ストレスを抱えたり孤立感を感じたりするママたちもいるかもしれません。そんなママへ、伝えたい。(もちろん、パパも家族も)

「頑張っているね 休んでもいいんだよ」
「誰かの手を借りてもいいんだよ」

(首都圏局/記者 浜平夏子)

少しだけ私の話をさせてください

産後4日くらいの時

は6年前の初めての出産の時、つらい時期がありました。お産の時に下半身のどこかの骨がずれたとみられ、1か月間歩けなくなったのです。体がつらい中でも数時間ごとの授乳、なぜ泣いているのかわからない赤ちゃん、そんな赤ちゃんを抱っこしてあやすこともできない自分。
里帰り出産をしましたが、ストレスを抱え、育児を手伝ってくれた両親や夫にも八つ当たりしていました。

ただでさえ産後は大変さを抱えているはずですが、今はそれに加えてコロナの影響で、さらにストレスを感じやすいのではないか。今、まさに子育てに奮闘する、出産間もないママたちのことを考えると、当時の自分を思い出し、胸がキューッと痛くなりました。
そして、いまコロナ禍で育児をするママたちがどうしているか、気になって取材を始めました。

コロナ禍で初めての育児 突然過呼吸に

コロナ禍で初めての育児に奮闘する東京・港区に住む30代の女性に話を聞きました。
女性は、去年7月に初めて出産し、育児休暇を経てことし4月に復職しました。

コロナのため在宅中心で仕事をしている

新型コロナの感染防止の観点から、埼玉県に住む親には極力頼らずに育児をしようと考えています。

夫婦での初めての育児。夫も協力的ですが、産後3か月の時、突然呼吸が苦しくなり、救急車で搬送されました。過呼吸でした。
医師には、ストレスが原因だと診断されたと言います。

女性は当時、必死で育児をしていたため、自分では気付いていませんでした。ただ、振り返ると、思い当たることがありました。

女性
「出産前には聞いていなかったことばかりで、驚きの連続でした。夜中に世話をするのがこんなに大変だと思わなかったし、わたしの場合は母乳が出すぎたのでそのケアも大変でした。そのうえ、コロナ禍で人との接触が限られているのがつらかったです。同じ月齢の子どもをもつお母さんの知り合いもできましたが、感染リスクを考えると、一緒にご飯にいくのはハードルが高くて。近所の子育て支援施設も予約制なので、ふらっと行けないのがつらかったです」

日々の育児のなかで降り積もるストレスと疲労。
誰かの手を借りたいと女性は、産後すぐに利用した東京・港区の「産後ドゥーラ」という訪問支援のサービスを、お金はかかるものの、今は自費で利用しています。

子育ての伴走者「産後ドゥーラ」

「産後ドゥーラ」は、出産間もない母親をサポートするための研修を受けたスタッフが自宅を訪問し、料理を作ったり赤ちゃんのお世話をしたりして、産前産後のママに寄り添い、赤ちゃんのいる生活が軌道に乗るように手助けするサービスです。

産後の支援策として、派遣サービスを提供する自治体もありますが、今は新型コロナの影響が長期化し、出産まもない母親たちの孤立感が深刻化しているとして、東京・港区では、ことし4月から産後ドゥーラの派遣サービスを通常よりも長く提供するようになりました。

この女性の自宅には、産後ドゥーラのベテランスタッフが週1回訪れて、家事や育児をサポートしています。

 

1週間ごとに来ているけど表情や声が違うよね。

 

そう、だんだんと戻ってきたかも。

 

在宅ワークを始めたママの仕事ぶりを見ていて、元気になったんだなってうれしくなった。きょうは何しようか。

 

お野菜届いたのでこれで作ってほしいなって。ナス買っているので。

 

ナスね、何か作ってあげようか。何がいいかな。

 

煮びたし?

 

素揚げもおいしいけど。

 

うれしい!自分では素揚げはしないので。

 

じゃあ、そうしよう。

まるで実家の母親のような、頼れる存在のスタッフ。
女性が疲れてつらい時には、子どもと遊んでもらい、その間、ベッドで横になっていたこともあったといいます。

産後ドゥーラ・梁川妙子さん
「ママも休みたいときがあるから。わたしが訪問した時はできるだけママがやってほしいことに応えます。まずはママに横になってもらって、私は赤ちゃんと全力で遊ぶ。そして、そろそろ眠いかなという時に寝かしつけて、赤ちゃんが寝ている間にできるだけ野菜たっぷりの料理をたくさん作りたいと思っています。子育ての伴走者、後ろから、たまに前から横からとサポートする人は、必要なんじゃないかなと思っています」

ありったけの野菜をつかって料理を作った

何度も伝えていた「頑張っているね」

スタッフの梁川さんは、料理をしたり、赤ちゃんの世話をしたりする間、一番に女性の体調を気にかけ、相談にのってきました。取材中、梁川さんが、女性に何度も伝えていたことばがありました。それは、「頑張っているね」そして、「休んでもいいんだよ」ということばでした。

産後ドゥーラ・梁川妙子さん
「ママたちは一生懸命です。でも、無理していると気づいていなくて、そのうち疲れてしまう。ましてや、コロナ禍だから外出しにくい、友人は来ない、実家の両親に頼めるかというと難しい。ママが疲れると、子どもにも家庭にもいい影響を及ぼさないので、頑張っているね、休んでもいいんだよとお伝えしています」

女性
「外部との接触がないなか、息子をすごくかわいがってくれる様子を見ているだけでも、自分が受け入れられているという感覚になります。働いている私と子育てしている私、両方をサポートしてもらっているような感じです」

赤ちゃんと全力で遊ぶ

頼る手段失い 助産院にかけこむママ急増

産後ドゥーラの育成に関わる、東京・中野区の松が丘助産院の宗祥子院長によると、コロナ禍で頼る手段を失って、ストレスがより深刻化した状態で助産院に駆け込むママたちが増えているといいます。

松が丘助産院の宗祥子院長
「コロナ禍は、妊娠中からママたちに大きなストレスを与えています。コロナに感染した場合はどうなるのか不安もあるでしょうし、出産直前に感染すれば帝王切開になることもあります。だから、人一倍感染しないよう気を配っていると思います。さらに、実家の親の手助けが得にくいなど産後のママを支える仕組みがぜい弱になっています。自治体にはそんな時だからこそ、いろんな手段でサポートする方法を考えてほしいです」

確かに私も救われた

コロナ禍ではありませんが、私も、産後すぐに、ミルクを飲ませても抱っこしても泣き続ける子どもに、私も夫も実家の両親も途方に暮れていたとき、新生児訪問で訪れた助産師に救われたのを覚えています。
助産師からは子どもが泣いている理由は、服の着せすぎだと言われ、そのほか授乳クッションの使い方などを教わりました。当時、相当悩んでいた私たち家族は、その助産師さんに心から感謝したものです。

6年前 今も悩みながら子育てしています

もし、産後つらい思いを抱えているママやパパがいたら、感染対策をとりながら、産後ドゥーラや助産師など、外部のサポートを借りるのも1つの対策になるのではないかと思いました。また、出産前に身近に利用できるサービスを把握することもいいと思います。

最後に、産後ドゥーラの梁川さんのことばです。
「おうちのなかも、赤ちゃんのことも一生懸命やっているので疲れちゃいますよね。これからの人生も長いので、一時大変かもしれないけど、手を借りて甘えながらでいいと思いますよ」

  • 浜平夏子

    首都圏局 記者

    浜平夏子

    2004年(平成16年)入局。宮崎局、福岡局、さいたま局を経て、2020年から首都圏局。医療取材を担当。

ページトップに戻る