10月上旬、地震活動が活発になり、太平洋側の各地で津波が観測されるなどした伊豆諸島の鳥島近海で回収された軽石について、気象庁から分析を依頼された専門家は「2021年に噴火した小笠原諸島の海底火山、福徳岡ノ場の噴火で出た軽石に似た特徴を持つものが一部ある」と指摘しています。
気象庁によりますと、10月27日から31日にかけて、鳥島から南西におよそ100キロ離れた海上で、軽石が点在して浮いているのを海洋気象観測船「啓風丸」が見つけて一部を回収し、気象庁は11月2日に報道陣に公開しました。
軽石は小さな穴が空いていて、最大10センチ程度の灰色でごつごつしたものや、数ミリから数センチの大きさで茶色がかっていて丸みのあるものもありました。
東京大学地震研究所の前野深准教授は11月2日、気象庁の観測船が鳥島近海で回収した軽石を確認しました。
前野准教授はNHKの取材に対し、今回の軽石のうち、数ミリから数センチの大きさで茶色がかっていて丸みのあるものの中に、斑点状に黒い鉱物を含むものがあり、2021年に沖縄・奄美から東日本にかけて大量に漂着した海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で出た軽石の特徴と似ていると指摘しました。
一方で最大10センチ程度ある灰色でごつごつした特徴を持つ軽石については、黒い斑点状の鉱物は見当たらず福徳岡ノ場とは異なる場所で発生した可能性があるとしています。
さらに軽石の角が多少取れて丸みがあることから「噴火直後ではなく、しばらくたったものと見られる」との見解を述べています。
気象庁によりますと、軽石を回収した海域には「伊豆鳥島」と「孀婦岩」の2つの活火山がありますが、これまでに周辺で噴煙や海面の変色などは確認されていません。
また、鳥島からおよそ50キロ西の海上では、10月20日に軽石のようなものが南北80キロにわたって点在して浮いているのが見つかっています。
鳥島近海では10月2日以降、地震活動が活発となって5日と9日には津波注意報が相次いで発表され、このうち9日には関東から九州にかけての各地で津波が観測されましたが、詳しい原因は現在も分かっていません。
気象庁は、軽石がどこで発生したのかや10月の地震や津波との関連についても調べることにしています。
気象庁は11月9日の会見で、10月下旬に鳥島近海で発見、回収した軽石の一部について、鳥島近海を含む伊豆諸島の海底にある岩石と似た特徴がある「流紋岩」と呼ばれる白色の岩石で、発生した可能性があると発表しました。
角が丸まっていないことや生物がほとんど付着していないことから、数か月以上の長期間にわたって漂流したものとは考えにくく、最近の火山活動で発生したものとみられるとしています。
一方、鳥島近海での地震との関連は分かっておらず、気象庁は「引き続き監視に努めていきたい」としています。【追記:11月10日】