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首都直下地震に備えマンション耐震化工事 費用は?進まない理由は?

  • 2023年3月10日

去年、東京都が10年ぶりに改訂した「首都直下地震」の被害想定。都内で最悪の場合、およそ6150人に上るとされる死者のうち、およそ3200人は建物の倒壊によるものです。
都内で古い耐震基準で作られたマンションは、約1万2000棟に上り、大きな課題です。一方で耐震性があるか調べたマンションおよそ7000棟のうち、不十分だと分かった建物が1割以上あったほか、半分以上は診断すら受けていないことが分かりました。
耐震化が進まない実情のほか、さまざまな工夫で、耐震化を実現したマンションを取材しました。(全2回の1回目/続きを読む
(首都圏局/記者 直井良介、ディレクター 梅田慎一)

震度6強以上で倒壊のおそれ 耐震化工事に3億円

古い耐震基準で作られた、築53年のマンションです。

おととし耐震診断をしたところ、震度6強以上の揺れで倒壊する可能性が高いと判明しました。耐震化に向けた工事が必要とされ、費用は3億円以上かかることが分かりました。

管理組合 前理事長 岡村和朗さん
「あぜんとしました。われわれが考えていたよりもかかるので、その金額じゃ、耐震補強は無理かなと思いました」

さらにこのマンションでは、耐震化以外にも、日々の生活を送るため、修繕しなければならないところが多くありました。外壁の破損や、配水管の水漏れが部屋にまでしみ出すなど、課題は山積。そうした修繕に加えて、耐震化も行うと、1戸あたりの費用は500万円以上になる計算でした。

事情の異なる住民たち 合意形成の難しさ

住民でつくる管理組合では、住民に耐震化の必要性を説明して回りましたが、なかなか理解が得られないといいます。

管理組合
メンバー

いま手を打たないと、大きな地震が来たら家が倒壊しちゃうんだけど、「いや、そんなことしなくていいだろう。俺はそこまで長生きしないから」という人もいました。

管理組合
メンバー

住民のご事情がなかなか違う。お子さんがいなくて1人という方もいれば、いざとなれば親族に頼れるという方もいて。事情が違いすぎて、意見をまとめるのが大変です。

管理組合 前理事長 岡村和朗さん
「高齢で、年金生活者の方が多いと思うんです。将来のための蓄えがある人だけでなく、蓄えが無い人も、おそらくいると思うんですよね。今のまま何とか細々とでも、ここで暮らせればいいかなと思われる方も多いと思います」

管理組合では、費用の工面のしかたなどを専門家に相談しながら、解決策を模索しています。

マンション管理士 武居知行さん
「旧耐震のマンションに暮らす住民にとっては、費用面のハードルが、一番大きく立ちはだかってくると思います。さらにそれ以前の問題として、住民の方の中には、『本当に補強が必要なの?』と考え、耐震化工事の必要性が認識できない方も多いのかなと思います 」

こうした中、さまざまな工夫で住民の負担を抑え、耐震化を実現したマンションもあります(続きを読む)。

  • 直井良介

    首都圏局 記者

    直井良介

    2010年入局。山形局・水戸局などをへて首都圏局。マンション問題を長く取材。現在、都庁担当。

  • 梅田慎一

    首都圏局 ディレクター

    梅田慎一

    広島県出身。2016年に入局し松山局、報道局おはよう日本を経て、2022年8月から首都圏局。趣味は山登りと深夜ラジオ。

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