おととし10月、千葉県を襲った豪雨では、広い範囲で中小河川の氾濫が相次ぎ、12人の命が奪われました。この時、車に乗っていたとみられる4人が亡くなっていました。中小河川では短時間で氾濫が起こる可能性があり、特に車での避難に注意が必要です。
(千葉放送局/記者 渡辺佑捺)
千葉県では、ことしも台風による大雨で中小河川の氾濫が相次ぎました。
10月1日、いすみ市では「緊急安全確保」が出され、住民に命が助かる可能性の高い行動を取るよう呼びかけられました。
氾濫した川のすぐそばに住む奥田さん夫婦です。川の急な水位上昇に驚いて、自宅の2階に避難しました。
目の前が川なので心配で2階から様子を見ました。もうだめかなあと思いました。水が2メートル30センチの位置まで来ました。小さい川なので、あっという間のことで、まさか家まで上がってくるなんて想像もできませんでした。
流域面積が狭い中小河川は、面積が広い大きな河川に比べて、短時間で急激に水位が上昇し、氾濫が発生するおそれがあります。
10月、氾濫した中小河川の落合川の水位上昇のグラフです。
水位は、午前9時には2.7メートルでしたが、正午すぎには6.8メートルになりました。およそ3時間で4メートル余り、急激に上昇しています。
河川工学が専門の東京理科大学の二瓶泰雄教授は、中小河川による洪水のリスクが年々増えているといいます。
河川工学が専門 東京理科大学 二瓶泰雄教授
「狭いエリアで集中的に降った雨が短時間で2級河川(中小河川)の場合は集まりやすくて、結果的に川の水位が上がり、急上昇が起こりやすいという特徴があります。数時間の、比較的短時間に非常に強い雨が降る回数というのが年々増加しています。今後ますます洪水の危険性、リスクもより高まってくると思います」
中小河川の氾濫でリスクが高い行動の1つが車での避難です。2年前の豪雨では千葉県内で、車に乗って避難していたり、子どもを迎えに行ったりしたとみられる4人が亡くなりました。
どの深さで水が押し寄せると車での移動が危険になるのか。二瓶教授の研究グループは、北海道北見市で10月に実験を行いました。
実験では、長さ70メートルの巨大な屋外水路を作り、乗用車を置いて水を流しました。
車のタイヤが半分以上水につかる、深さ50センチにまで水を入れます。
車が50センチの深さまで浸水するとエンジンにも水が流れ込み、動かなくなるおそれがあるといいます。さらに、速い速度で水が押し寄せると、氾濫した水に流されるおそれもあるということです。
二瓶教授は、それほど高くない水位でも危険があることを知ってほしいとしています。
河川工学が専門 東京理科大学 二瓶泰雄教授
「大雨が降っている最中だと、どこで洪水氾濫が起こっているかっていうのはなかなか分かりませんので、ふだん通い慣れている場所だとしても、不要不急の外出は避けていただいて、特に車での外出を避けていただくということが大事だと思います」
私が取材したいすみ市の奥田さんは、台風が接近しているとき、2階で生活するようにしていると話していました。
中小河川でも、水位の状況や監視カメラの映像がホームページで公開されている場所が増えています。水害時には、こうした情報を避難に生かすことが大切です。東京理科大学の二瓶教授も、中小河川の近くの場合は、車で避難するよりも、自宅の2階に避難する「垂直避難」の方が命が助かる行動につながる場合が多いとしています。
今回、取材した川は、ふだんはとても穏やかな川で、まさか大雨の時に急に水位が上がるとは想像できませんでした。だからこそ、「どの川でも氾濫の危険があること」「特に車は危険なこと」を知っておいて、備えてほしいと思います。