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過去に甚大な被害も 利根川上流 命を守るための3つのポイント

  • 2021年9月22日

首都圏各地を流れる川のリスクをお伝えする「かわ知り」。
今回は、関東の1都5県にまたがる利根川のうち、上流を見ていきます。上流では、74年前のカスリーン台風で堤防が決壊し、1000人余りが亡くなる被害が出ました。ひとたび氾濫すれば甚大な被害が出るおそれがある利根川。どのような点に注目すればいいのか、3つのポイントをお伝えします。
(さいたま放送局/西山周記者 )

カスリーン台風 1000人余死亡

利根川は、日本一の流域面積を誇り、首都圏の大切な水源となっていますが、過去に大規模な水害が起きました。

昭和22年の「カスリーン台風」では、利根川流域の広い範囲が大雨に見舞われ、現在の埼玉県加須市で堤防が決壊しました。あふれた川の水は東京・江戸川区まで達し、およそ30万棟が浸水しました。亡くなった人は1000人余りにのぼりました。
その後、決壊や氾濫は起きていませんが、油断できません。命を守るためには、どう備えたらいいか見ていきます。

命を守るポイント(1)両岸の浸水の違いに注意

知っておくべきなのが、川を隔てて浸水の特徴が違う点です。

例えば、カスリーン台風で堤防が決壊した加須市のハザードマップを見ると、川の両側で浸水のしかたが異なることが分かります。

画像提供 国交省利根川上流河川事務所

市の北側の浸水のシミュレーションでは、川からあふれ出た水は、川に遮られ低地に流れずに市内に溜まっていきます。
行き場を失った水は、最大で深さ8.5メートルに達し、建物の3階の床上まで水につかるおそれがあります。

一方、南側では深さは3メートル未満で、北側より広い範囲で浸水被害が出ると予想されています。

国土交通省利根川上流河川事務所 島田裕司副所長
「あふれた川の水が拡散して流れて行くか、水が溜まり洪水の継続時間が長くなるか、自分たちが住んでいる地域のリスクを、ハザードマップを見て確認してほしい」

命を守るポイント(2)八斗島観測所の水位に注意

画像提供 国交省利根川上流河川事務所

関東や東北を中心に広い範囲で被害が相次いだおととし10月の台風19号で、加須市は、利根川の氾濫の危機に直面しました。
近くの栗橋観測所で、避難判断水位を超えて氾濫危険水位に迫り、未明に避難指示が出たのです。

これに伴って市民らが一斉に避難を始め、市の中心部へつながる道が、およそ10キロにわたり渋滞しました。
市内に住む橋本静夫さんは(67)は、この渋滞に巻き込まれ、利根川にかかる橋の上を渡っているときに、一時立ち往生しました。

橋本静夫さん
「橋を進んで川の中央あたりまで来た時、私の車の前には20台から30台が連なっているのが見えて、このまま動いてくれるか不安だった。車が動かないので、後続の車の大半が戻ってしまった」

ここで注目すべきなのが、およそ50キロ上流にある群馬県伊勢崎市の八斗島観測所です。栗橋観測所のおよそ5時間も前に、避難判断水位に達していました。この観測所の水位に注意すれば余裕をもって避難できます。

国土交通省利根川上流河川事務所 島田裕司副所長
「上流の水は必ず下流に流れてくるので、避難などの洪水への備えの目安にしてほしい」

命を守るポイント(3)「マイ・タイムラインの準備と更新」

当時、市の避難指示を待たず、避難した人がいます。地域の自治会で防災を担当している寺本道郎さん(71)です。

寺本さんは、事前に避難計画をまとめたマイ・タイムラインを元に行動しました。
寺本さんのマイ・タイムライン。どのくらいの水位になったら、どう行動するかが書かれています。

あのとき、寺本さんは、利根川が氾濫注意水位に迫っていたことから、避難の準備を始めました。避難指示が出る4時間前のことです。
そして、避難指示の1時間前、避難判断水位を超えたため、家族や近所の人を連れて車で避難しました。

寺本道郎さん
「避難指示が出るより前に実際に動いた。だから渋滞には巻き込まれなかった」

寺本さんが、いま取り組んでいるのが、マイ・タイムラインの更新です。台風19号から2年たち、避難所が変わったりコロナ禍で避難所の収容人数が大幅に減ったりしたことから、内容を見直しました。

寺本道郎さん
「当時のマイ・タイムラインは、現在の状況に全然当てはまらないので、自分の行動をもう1回見直したりすることが大切だ」

  • 西山周

    さいたま放送局 記者

    西山周

    2018年入局 3年間は県警担当で事件取材。現在は県政担当・災害取材

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