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通学路が抜け道に 交通事故の不安の声も 埼玉県ふじみ野市

  • 2023年03月23日

「いつ事故が起きてもおかしくない」埼玉県ふじみ野市の通学路について、ぞっとする内容の投稿が寄せられました。その通学路は、子どもたちの安全が守られるはずのスクールゾーンでした。どんな危険が潜んでいるのか、取材しました。
通学路に関する投稿はこちら

(さいたま局 記者/海老原悠太)

スクールゾーンが抜け道に

「子どもたちはスクールゾーンを通り学校に向かって道を横断しますが、車を優先して渡っています。いつ事故が起きてもおかしくない状況です」

危険な通学路について、NHKに寄せられた情報です。場所は、埼玉県ふじみ野市の小学校にほど近い市道で、スクールゾーンに指定されていました。

スクールゾーンは、交通安全対策の重点地域を指し、子どもたちの通学の時間帯に車両の通行などが規制されます。今回の通学路は、午前7時半から午前8時半までの間、車の進入が禁止されています。しかし、投稿した松木薫さんによると、ルールを守らない車が絶えないといいます。

松木薫さん
「この道は、車がすれ違えないほど狭くなっています。そんな道に、車が当然のように入ってきて、対向車が来る前に通り過ぎたいのでスピードを出しています」

実際に、現場を取材しました。午前7時半すぎ、子どもたちがスクールゾーンを通って学校に向かいます。そこへ1台の軽乗用車が進入。児童が道路を渡ろうと立ち止まりましたが、軽乗用車はスピードを緩めません。児童は、車が通り過ぎるのを待って横断しました。

別の日には、子どもたちが道路を渡った直後に、原付きバイクが通過していきました。原付バイクも規制の対象です。それ以外にも、規制の時間帯に何台も車が通っていました。
なぜ、こうした車があとを絶たないのか。松木さんによると、周辺の道路環境が影響しているといいます。この通りのおよそ300メートル東には、国道254号線・通称「川越街道」があります。朝、国道に合流する道路は、交通量が増え、慢性的に渋滞します。スクールゾーンはその抜け道になっているというのです。

松木薫さん
「私たち、近所の住民は気をつけているのですが、遠くから来る人が通行してしまう」

小学校に通う5年生の男の子です。

登校中、スクールゾーンで危険を感じたことがあると言います。

男子児童
「車が通って怖い思いをした」

その先も細い抜け道に

児童の母親の松本里香さんに話を聞くと、スクールゾーンの先は細い抜け道になっているといいます。

松本里香さん
「スクールゾーンとぶつかる道路も通学路になっていて、国道だけでなく、ふじみ野駅につながっているので、車の往来が、こことは比じゃないくらい多いです」

松本さんが指摘した通学路は、スクールゾーンの端で接する、東西に延びた市道です。

幅は、狭いところで2.8メートルしかなく、道路が少しカーブしていて見通しが悪くなっています。スクールゾーンには指定されていません。路側帯はなく、取材した日も、子どもたちの横すれすれに何台も車が通り過ぎていきました。

子どもの安全どう守る

こうした危険から子どもたちを守るため、小学校では保護者に協力を呼びかけ、毎朝、通学路の見守りを行っています。こうした活動は、下校時も必要ですが、保護者だけでは人手が足りません。このため、町内会が見守りを行っています。町内会長の田中誠一さんは、長年、子どもたちが置かれている環境に心を痛めてきました。

田中誠一 町内会長
「スクールゾーンは、下校の時間帯になると交通量が多くなります。制限速度は20キロですが、結構なスピードを出す車もあります。子供たちも、平気で走って道に出てくるので、ひやっとすることがよくあります」

町内会は、子どもたちの安全を守ろうと、学校や市などと協力して、通学路の危険な箇所などをまとめたマップを作成しました。

この地図には、今回の通学路も記載されていました。町内会は、通学路に白線を引いて歩行者が通るスペース、「路側帯」を設けるよう市に求めていくことにしています。

田中誠一 町内会長
「路側帯があれば、子どもたちに白線の中へ入りなさいと注意を促すことができます。そうすれば、子供たちは列になって歩いてくれ、危険も減らせると思います」

通学路の安全を、市や警察はどう確保していくのか。

市によりますと、路側帯は、車が通れる幅が確保されたうえでなければ設けることは難しいといいます。スクールゾーンも駅に通じる市道も、道幅が狭いため、拡幅が必要になりますが、地域住民の合意も必要で、実現には時間がかかる見込みです。

ふじみ野市道路課
「子どもたちの安全を守らなければならないことは十分認識しているので、地域住民をはじめ、警察などの関係機関と連携して対策を検討したい」

こうした中、警察は、登校時間帯に車がスクールゾーンに進入しないよう、状況に応じて見張りを強化しています。

今回取材した通学路では、子どもたちが被害にあう交通事故は起きていないということですが、「いつ事故が起きてもおかしくない」という声は重く受け止める必要があります。道路環境の改善などのハード面と、パトロールや見守りといったソフト面、それぞれで対策の強化が求められます。

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