「ムジナモ」という植物を知っていますか。埼玉県羽生市にある宝蔵寺沼は、全国的に珍しいムジナモの自生地です。地元では、地域の大切な宝として、貴重な植物を守る活動が続けられていて、ムジナモを通じた交流も広がっています。
「ムジナモ」は水面に浮かぶ水草で、ミジンコなどのプランクトンを捕まえる食虫植物です。
水質の悪化や魚による食害などで絶滅のおそれがあるとされていて、羽生市の宝蔵寺沼は、ムジナモの自生地として、全国唯一の国の天然記念物に指定されています。
このムジナモを国内で初めて発見し命名したのは植物学者の牧野富太郎です。「日本の植物学の父」と呼ばれ、来年のNHK連続テレビ小説「らんまん」で主人公のモデルとなっています。
8月、羽生市の宝蔵寺沼でムジナモの見学会が開かれました。貴重な自生地について知ってもらおうと市の教育委員会が開き、市民などおよそ20人が参加しました。
案内したのは羽生市ムジナモ保存会のメンバーです。ムジナモが気温や日照などの条件がそろった時だけ花を咲かせること、去年はおよそ97万株まで増えたことなどを説明しました。
ムジナモの花はわずか数ミリと小さいうえに、めったに花を咲かせません。
参加者は、ムジナモを手に取って種やつぼみなどを観察していました。
貴重な花を探す楽しみもあり、とてもいい見学会でした。今後も自生地を大切に保存していってほしいです。
地元の小学生もムジナモを守る活動に取り組んでいます。自生地の近くにある三田ヶ谷小学校では、約40年前からムジナモを増やし、郷土を愛する心を育もうと学校の池で育てて、自生地の沼に放流しています。
8月、約60人の全校児童が沼を訪れました。市の職員から去年放流したムジナモが元気に育っていること、ことし、自生地のムジナモが花を咲かせたことなど、説明を受けました。
そして、子どもたちは水辺に近寄り容器を静かに傾けて、およそ400株を放しました。
子どもたちは「元気に育ってね」「仲間をたくさんつくってね」と声をかけていました。
半年以上育ててきてムジナモに対する愛情が深まりました。自生地でたくさん仲間を増やしてほしいです。
これまで育ててきた先輩たちの伝統を受け継ぐことができてうれしいです。大人になっても、どれだけ増えているか見に来たいです。
このムジナモの縁で新たな交流も始まっています。
羽生市の保存会のメンバーはムジナモを自宅で育てています。
保存会では、育てるのは難しいというムジナモを、3年前から毎年、ムジナモの発見者、牧野富太郎の出身地の高知県に送っています。
牧野富太郎の功績を記念した高知県立牧野植物園では、保存会から送られたムジナモを一般公開しています。そして、植物園からはムジナモの標本の作り方を教えてもらっているということです。
多くの動植物が共生する自生地の豊かな環境とともにムジナモを大切に守っていきたいです。また、ムジナモについて広く知ってもらえるよう高知県とも交流を続けていきたいです。
7月には、羽生市から市長や教育長が高知県庁や牧野植物園を訪問しました。今後も交流を深めて、牧野富太郎をモデルにした来年のNHK連続テレビ小説「らんまん」もきっかけにしながら、連携して地域の魅力をPRしていきたいとしています。