規格外野菜で農家と消費者をつなぐ さいたま市
- 2022年6月3日
さいたま市在住で日本大学経済学部4年生の堺大輔さんは仲間と一緒に、毎週金曜日、大宮駅東口の近くにキッチンカーを出して、地元の規格外野菜を使ったスムージーやサラダを販売しています。なぜ、地元の規格外野菜に注目したのか、保坂友美子キャスターが伺いました。
規格外野菜とは味や品質を変わらないのにサイズが大きすぎたり、傷があったりするなどの理由で捨てられてしまう野菜のことですが、堺さんはどんな規格外野菜を扱っているんですか。
例えば小松菜ですと、規格より大きくなり過ぎてしまったものや、にんじんですと、股割れしてしまって、通常は1本のものが2本とか複数に割れてしまって、タコみたいになったものを主に使っています。
こうした野菜はどんなメニューに生まれ変わるんですか。
私たちが今提供しているのは、サラダやスムージーです。最近、カルツォーネというイタリアの郷土料理の販売も始めました。
カルツォーネとはどんな料理なんですか。
トマトをペーストにしてつくったラタトゥーユをトルティーヤの生地で包んで油で揚げる料理なんですが、トマトは熟しすぎて規格外になってしまったものを使っています。あとは、スナップエンドウやタマネギ、ニンジンなどもたっぷり使っています。
調理するときはどんな工夫をしていますか。
野菜の素材の特徴を生かすことを考えています。規格外野菜はいろいろな「訳アリ」があるんですが、例えば、熟しすぎてしまったトマトは、サラダで使うよりペーストにしたほうが使いやすいですし、形が悪い野菜はスムージーやスープに使ったりするようにしています。形が小さすぎるサツマイモは、うすく切ってチップにすると食べやすくなります。
規格外野菜の仕入れ先はどのように見つけましたか。
知り合いから教えてもらったり、インスタグラムで検索したりしました。さいたま市のホームページの直売所情報を調べて直接、農家の方にお願いしたこともあります。これだという見つけ方がなかったので、すごく大変でした。
地元の野菜へのこだわりがあったんですか。
自分自身、埼玉で生まれて埼玉で育ってきた一方で、地元のことをそこまで知らないなと言うギャップがありました。自分がふだん何気なく食べている「食」について、どんな人がどのようにつくっているのかを知りたいと思ったことが、地元の野菜にこだわった理由です。
実際にどのような方法で仕入れているんですか。
笑われるかもしれませんが、自転車でまわっています。一番、遠いところで10キロくらいですかね。自分の足で仕入れると、農家の方と直接、話をすることもできますし、畑も定期的にみることができます。
そもそも規格外野菜を使ったお店を開こうと思ったきっかけはなんだったんですか。
規格外の野菜が大量に廃棄されている現状を知ったとき、「もったいない」と思うと同時に、流通の簡素化や消費者のニーズに合わせるためには必要な仕組みだという考え方もあると感じたんです。この非常に複雑な問題を、自分がうまく間に入ることで解決できないかと思ったのが、店を始めたきっかけです。
今、何人のメンバーで活動していますか。
現在は3人で、バイト先で出会った人に声をかけて参加してもらいました。最近は自分の友達も手伝ってくれていますね。 フードロスや地域に貢献したいという気持ちがあって、意気投合して始まったという感じです。
店を通じて、お客さんにはどんなことを感じてほしいと考えていますか。
消費者が求めている野菜の見た目やきれいさから外れてしまった野菜がたくさんあるんだということを知っていただきたいのと同時に、ふだん食べている野菜について、誰がどのようにつくったのかという背景を知ることで、よりおいしく食べることができると思うので、こうしたことをより多くのお客さんに伝えることができればなと思っています。
実際に販売していて、やりがいを感じるのはどんなときですか。
お客さんに食べていただいて純粋においしかったと言ってもらえたときですね。また、自分たちの活動をインスタグラムで紹介してくれたり、直接、店に来て話題にしてくださったりする人もいて、自分たちが届けたいメッセージに気づいてくれる人がいるというのは、本当にうれしいです。
今後はどういった活動にしていきたいですか。
実はキッチンカーはことし6月で一旦、終わらせて、今後は余剰農産物、規格外野菜をもっと生かせるような販路を農家に提供しつつ、農家の思いやこだわりを載せた商品を開発して、別の形で販売する、あるいは、農家と消費者の距離感を縮めることができるイベントなどを地元で展開していきたいなと思っています。
具体的にはどんなことを考えていますか。
余剰農産物を活用している飲食店にヒアリングしてどういった思いや課題があるのか話を伺ったり、自分たちはどういった商品を本当に作りたいのか、あるいは、どういった課題を解決させたいのかということを改めて練り直したりしている段階ですね。
単純に生産量を増やせば農産物の価格は下がってしまうので、とりあえず販売量を増やせばいいわけでもないですし、どのような商品を開発すれば農家にも消費者にもメリットがあるのか、双方向で考えていかなければならないと感じています。
キャスターからひと言
堺さんは大学で環境経済をテーマに研究していて、卒業後は大学院への進学を考えているということです。「正直に言えば、学業との両立はすごく大変です」と話していましたが、ぜひ、これからも応援したいと思いました。