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学校にも家にも居場所のない子どもたちに支援の手を(後編)

NHKさいたま「子どもプロジェクト」
  • 2022年05月20日
若者自立支援ルームの活動

NHKさいたま放送局では、子どもたちが直面する課題や困難について毎月ラジオで特集する「子どもプロジェクト」を展開して、解決の道筋を探ります。4月のテーマは「子どもの居場所づくり」。NPO法人「さいたまユースサポートネット」代表の青砥恭さんに話を聞きました。後編をお伝えします。

(ひるどき!さいたま~ず 2022年4月15日放送)

出演者:さいたまユースサポートネット代表・青砥恭さん(中央) 永野麻衣記者(左)古野晶子アナウンサー(右)

「若者自立支援ルーム」 困難抱える若者に寄り添う

若者自立支援ルームのスタッフと利用者

青砥さんの団体が運営する居場所のうち「若者自立支援ルーム」は、不登校やひきこもり、障害、貧困などで生きづらさを感じている高校生から30代までの若者が対象です。
24歳の女性が、この居場所にたどり着くまでの経緯を話してくれました。女性は、現在、通信制の高校に通っているといいます。

「父親が倒れて入院して半年後ぐらいから精神的に病んでしまっていて、一時期、リストカットもするようになっていました。その後、スクールソーシャルワーカーの紹介でここにきました。
高校には入学したものの成績不良で翌年3月に退学になってしまい、4月から通信制の高校に通い出した。しかし、卒業が難しくて、金銭的にも厳しくて1年休学したりしました。卒業もだいぶ長引いてしまい、私の年で高校生というのは恥ずかしいけれど、もう少しで卒業まできているので卒業したいですね」

いろいろな困難を抱えた若者が居場所に来ているんですね。

こういう女子高校生のように、人生をゆっくり生きていかなければいけない人がたくさんいるわけです。そういう子どもたちにも対応できるような、ゆっくり人生を送ることができる場がどうしても必要で、その時には大人や地域や行政の支えがどうしても必要だということになると思います。

次に進もうと思っても、家庭環境が厳しいと自分だけの力でやっていくことが難しいのでしょうか?

そうですね。それを少し支えてあげられる、ゆっくりしてもいいんだということをメッセージとして伝えていく。学校もあせらずに自分たちで対応が難しければ違う場につなぐという勇気が必要で、こうした勇気を日本社会全体としてもつ必要があると思います。

「居場所がなかったら自殺していたかも…」

通信制の高校に通う24歳の女性にとってこの居場所は、生活の中でなくてはならない重要な場所になっていました。

「こういう居場所がなかったら、もしかすると自殺しているかもしれないです。いろいろと精神的につらいのもあるので…。普通の全日制高校を卒業できなかったことや、精神的に病んでしまったこととか」

この女性に、どんな支援があったらいいと思うか尋ねたところ「精神的に病んでいる人をサポートしたり、いろいろな事情で全日制の高校を辞めて、定時制や通信制の高校に移っている人への差別を感じていることを理解したりしてほしい」と話していました。

この女性がおっしゃったように、若者たちの自殺者が急激に増えています。今のコロナの時代が背景にあると思いますが、子どもたちは一律ではない、人間というのは多様な存在なんだということを認め合うことが重要です。認め合うということばはすぐに出てくるのですが、それを制度化することが今の社会には求められていて、もうことばだけでは済まない時代になっているというふうに思います。

制度化して困った時はここに行こうという流れになれば、今、もんもんとしている子どもたちも行ってみようかなという道筋が示されるということでしょうか?

そうですね。この女性が通っている若者自立支援ルームについては、さいたま市が行政として2か所設けています。これは全国では最も先進的な取り組みで、これが全国に広がっていってほしいと思います。

居場所を継続していくために “まず参加を”

居場所の重要性を感じている子どもや若者がいる一方で、運営する団体の多くが課題に直面しています。埼玉県が去年10月に行ったアンケート調査では、人材不足と資金不足をあげた割合が最も多く、活動をいかに継続していくかが大きな課題となっています。

こうした課題に対して、青砥さんの団体では、自治会や企業、民生委員、学校、保育園など子どもや若者支援のために地域が連携するための協議会を立ち上げています。また、地域で同じような志をもっているNPO法人や企業、個人のもとを順番に訪問して、ネットワークづくりに参加してもらえるよう働きかけを行っているということです。

さらに、団体の拠点があるさいたま市見沼区堀崎町では毎週土曜日に、子どもから大人まで地域の誰もが集まれる居場所を開いています。

カフェでカレーやコーヒーを味わったり、卓球などのスポーツを楽しんだり、自由に本を読んだり、さまざまな体験活動ができる場になっています。
地域の人たちに気軽に訪れてもらうことをきっかけにして、こうした活動を支えたり参加したりするようになってもらうのが目標だといいます。

住民に毎週土曜日の居場所やカフェに来てもらって、私たちの活動に関心をもっていただく、支える必要があるということを考えていただく、それを知ってもらうことから始めないと何事も進みません。カフェでは少しお金を使っていただく、管理も運営も地域のみんなが関わって財政的にも支えていただく、そうした取り組みをしていかないと継続していかないと思いますね。

何か私にも関われることはありますか?

誰もが参加できる居場所に1回顔を出して、どんなことをやっているのかということを知っていただく、最初はそれで十分だと思います。

みなさんの活動をまずは見に行ってもいいということですね。そうすると私ができることが見つかるかもしれないと思いました。

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