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  • 2024年5月10日

物価上昇 実質賃金はマイナス 賃上げ中小企業や非正規労働者は?春闘2024

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大手企業を中心に満額などの回答が相次いだことしの春闘の賃上げ率は、33年ぶりに5%を超える高い水準となっています。一方で、非正規雇用で働く人たちの中からは「歴史的賃上げといわれるが別世界の話のようだ」とする声もあがっています。非正規労働者の賃上げの状況や労働団体の連合が集計した5月2日時点の春闘の回答状況、マイナスが続く実質賃金の動向とあわせてまとめました。

実質賃金24か月連続マイナス 物価に追いつかず

厚生労働省は全国の従業員5人以上の事業所、3万あまりを対象に「毎月勤労統計調査」を行っていて、ことし3月分の速報値を公表しました。

それによりますと実質賃金は、前の年の同じ月に比べて2.5%減少し、24か月連続でマイナスとなりました。これは比較可能な1991年以降、最長で、依然として物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いています。

「非正規春闘」3万人参加 交渉状況は

パートや派遣社員などが春闘の時期に合わせて賃上げを求める「非正規春闘」に取り組む人たちは5月9日、記者会見を開き、交渉の状況について明らかにしました。
非正規春闘には、ことしは全国でおよそ3万人が参加してこれまでに107社に対して一律10%以上の賃上げを要求しています。

半数近くから賃上げ回答得られず

これまでに107社のうち45%にあたる48社からはこれまでに賃上げの回答は得られていないと報告しました。賃上げの回答をした59社の中には8%の賃上げを提示した企業もありましたが、平均すると3%から4%程度の賃上げにとどまっているということです。

また、実行委員会が今月、全国の非正規労働者を対象に行ったインターネット調査では回答があった251人のうち72%が「賃上げがなかった」と回答したということです。

非正規労働者として物流倉庫で働く川邉隆さん
「春闘で歴史的な賃上げだと言われているが、われわれにとっては別世界の話のようだ。会社と賃上げ交渉をしているが回答は全くのゼロで、団体交渉にもきちんと応じていない」

賃上げ交渉 最低賃金の引き上げも

非正規で働く人たちは去年、労働者全体の37%にあたる2100万人あまりにのぼり、増加傾向が続いていて、非正規春闘実行委員会では引き続き賃上げ交渉を行うともに、最低賃金の大幅な引き上げも求めていくとしています。

非正規春闘に取り組む首都圏青年ユニオン 尾林哲矢事務局長
「非正規労働者が戦い、賃上げを勝ち取ったことは画期的な成果だと思っている。一方で賃上げがなかったりあっても少額の賃上げにとどまっていたりする企業が多く、今後も交渉を続けていく」

中小企業の賃上げ 平均4.66% 連合集計

労働団体の連合が5月2日時点の春闘の回答状況を集計したところ賃上げを要求した4940社のうち、75%にあたる3733社が妥結しています。

集計によりますと定期昇給分を含めた賃上げ額は平均で月額1万5616円、率にして5.17%と、1991年以来33年ぶりに5%超える高い水準の賃上げ率となりました。
このうち、従業員300人未満の中小企業2480社の平均の賃上げ額は月額1万1889円、率にして4.66%となっています。

今後も交渉が続く中小企業や労働組合のない企業、非正規雇用で働く人までどこまで高い水準の賃上げを波及させることができるかが焦点です。

連合はことし7月に春闘の最終的な集計結果を取りまとめることにしています。

現在の賃上げの状況 円安の影響は

第一生命経済研究所 星野卓也主席エコノミスト
「企業の人手不足や収益が改善したところで高い賃上げに踏み切った企業が多い。中小企業や非正規の人たちについても人材確保のためにある程度の賃上げに踏み切った可能性は高い。しかし、非正規の人たちの賃金水準はもともと高くなく、予想よりも長く続く物価高と比べると賃上げが追いつけていないため生活水準は苦しいままとなっている。当初、もう少し落ち着く見通しだった円安の影響が長引いて大きく物価が上がり、結果的に実質賃金が下がって経済が回りずらい状態が続いている。今後は、春闘の賃上げが日本全体に波及し、人数が多い中小企業や非正規の人たちの生活実感が良くなるかが日本経済にとっても重要だ」

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