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衆議院東京15区補欠選挙2024年 “選挙妨害”か 表現の自由か 選挙のあり方 専門家の見方は

  • 2024年5月1日

衆議院東京15区の補欠選挙、過去最多の9人による混戦となった今回の選挙戦では、候補者の1人がほかの候補者たちの演説場所で大音量で批判などを繰り返す場面も見られました。各陣営からは“選挙妨害だ”との声が相次いだ一方、候補者側は「表現の自由の範囲内だ」と主張し、選挙のあり方が問われる事態になりました。これについて3人の専門家の見方などをまとめました。

別の陣営の選挙カー その行動とは

4月16日の告示日。無所属の乙武洋匡氏が選挙戦最初の演説を予定していた会場に別の陣営の選挙カーが現れました。

諸派の新人の根本良輔氏です。乙武氏の演説が始まると、演説が聞こえなくなるほどの大きな声を出して批判などを繰り広げました。そして、その様子をインターネットでライブ配信していました。

目撃した人は

こうした行動はほかの候補の演説会場でも続き、一時、騒然となる場面もありました。

 

(演説は)聞こえなかったです。男の人の声でギャーギャー言っているのしか聞こえなかった。

 

まあ、選挙を冒とくしているよね。本来なら政策を述べ合って議論すべき。

3人の候補者はどう感じたか

各陣営は、演説の日程をSNS上で公表することを控えたり、演説会場を急きょ変更したりするなどの対応に追われました。

酒井菜摘氏
「危険を感じるような場面もありまして、本当に怖かったです」

金澤結衣氏
「前代未聞の状況でして民主主義の根幹が覆される許しがたい状況だった」

乙武洋匡氏
「現行法によってああした行為が許されてしまうといいますか、是認せざるを得ない状況であるのならば、何らかの法改正をしていくべきなのではないかなというふうに思っております」

警視庁「選挙の自由妨害罪」として警告

公職選挙法は、候補者などへの暴行や演説を妨害する行為を「選挙の自由妨害罪」として禁じています。警視庁は今回、根本氏らに警告を出しました。

告示日にほかの陣営の演説を拡声機や車のクラクションを使って聞き取れないようにしたことが「自由妨害」にあたると判断したということです。

捜査関係者によりますと、候補者が「自由妨害」で警告を受けるのは極めて異例だということです。

根本氏と所属の政治団体の代表は

“選挙妨害だ”とする指摘や警告について根本氏や所属する政治団体の代表は次のように話しています。

根本良輔氏
「政治活動を始めたのがいまの国政政党が信用できないからなんですね。僕らはただ質問をしに行っているだけであると。暴力的なことをするつもりもありません」

政治団体「つばさの党」黒川敦彦代表
「与えられた国民の表現の自由の範囲内において正々堂々批判しているだけなんですね、他陣営を。それを派手にやっているだけですよ、派手に、ただ」

そのうえで、警視庁による警告は権力の乱用だとして、東京都に賠償を求める訴えを起こしたとしています。

今回の問題をどう考えればいいのか。3人の専門家に聞きました。

日本大学法学部 安野修右専任講師

公職選挙法に詳しい日本大学法学部の安野修右専任講師は抜本的なルールの見直しが必要だと指摘します。

日本大学法学部 安野修右専任講師
「(いまの法律では)そこの線引きって本当に難しいんですよね。どこまでが表現の自由でどこまで選挙妨害か、現行の公職選挙法のいろんな取り締まり規則そのものがということですよ、かなり老朽化しているといいますか、もう制度的な限界迎えている」

北星学園大学経済学部 岩本一郎教授

憲法学が専門北星学園大学経済学部の岩本一郎教授は、規制のあり方は慎重に考えるべきだと指摘します。

北星学園大学経済学部 岩本一郎教授
「基本的に選挙活動中の表現の自由は、政治的な発言ですので、民主主義の観点からできるかぎり尊重保護されなければいけないと考えます。ただし、それを超えて必要になるものについては公職選挙法なり、ほかの法律によって規制する余地はあろうかと思います。ただ、それはできるかぎり自由な選挙を確保するという目的のために、必要最小限度の規制にとどめるべきだと」

東北大学大学院 河村和徳准教授

また、議会のデジタル化や選挙に詳しい東北大学大学院の河村和徳准教授はインターネットやSNSを利用した選挙運動が浸透する中で新たな対応が必要だと指摘します。

東北大学大学院 河村和徳准教授
「ネット選挙運動は、選挙のいろんな意見を聞くことができるようにするために、デジタルを使っているはずなんですけど、それを自分たちの利益のために動画を撮り、印象的なものを流し、そして、視聴回数を稼ぐ、そういう構造をつくってしまっている。ネット選挙のあり方とか動画の配信のあり方みたいなところも、やはり議論していく必要はある」

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