水道事業は施設の老朽化や人口の減少などで厳しい経営状況が続いています。これについて研究グループは、20年あまり先、赤字を避けるために必要な料金について計算した結果を公表しました。それによりますと全国の96%の事業者で料金の値上げが必要となり、値上げ率は48%にのぼるということです。水道事業をめぐる状況についてまとめました。
水道事業を巡っては各地で管路の老朽化が進み施設の更新が求められるなか、人口の減少などによる経営状況の悪化が課題となっています。
NHKは全国およそ1400の上水道事業者のデータを独自に分析しました。耐用年数を超え「老朽化」した水道管の割合は、平均で22%と10年で3倍近くに増える一方、水道管の更新を担う技術職員の数は減少していました。
自治体の水道経営の支援などを行う「EYJapan」などの研究グループは、将来の水道料金の変動を3年ごとに試算していて、4月24日、最新の結果を公表しました。
試算では2021年度の全国1243の水道事業者のデータや将来の人口の推計をもとに、25年後の2046年に経営が赤字にならないために必要な水道料金を計算しました。
それによりますと、値上げが必要な事業者の数は前回の試算から2ポイント増加して96パーセントに達し、料金の値上げ率は前回から5ポイント上昇して全国平均で48パーセントとなりました。
特に人口減少率が高かったり人口密度が低かったりする自治体で値上げ率が高くなる傾向がみられ料金の格差は現在の8倍から2046年には20.4倍に広がると推計されました。
研究グループでは地域間の格差だけでなく、値上げ率が上昇することにより世代間の格差も広がるおそれがあるとして、▽水道事業を維持するための経営改革の実現や▽利用者に料金について説明し理解を求めるなど具体的な取り組みを進める必要があるとしています。
水道行政に詳しい東京大学大学院工学系研究科の滝沢智教授は「長年のデフレで物価が上がらないなかで水道料金の値上げを提案しづらい時代が続いた。人件費の削減などでしのいできた事業者が限界を迎え、いよいよ経営の課題と向き合わなければいけない」と指摘しています。
東京大学大学院工学系研究科 滝沢智教授
「先送りにすればするほど将来の値上げ率は大きくなり負の遺産を残すことになる。事業者は料金体系について定期的に議論して必要な値上げを検討するほか、更新する施設を絞るなど効率化をはかることも重要だ。水道事業のあり方を自治体や事業者、住民がともに考えていかなければならない」
「人口戦略会議」有識者グループの分析有識者グループ「人口戦略会議」は、国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに20代から30代の女性の数、「若年女性人口」の減少率を市区町村ごとに分析し、公表しました。
2050年までの30年間で、若年女性人口が半数以下になる自治体は全体の4割にあたる744あり、これらの自治体は、その後、人口が急減し、最終的に消滅する可能性があるなどとしています。