2024年7月3日から発行される新紙幣。
銀行のATMや鉄道の券売機、それに飲料の自動販売機では使えるのか?
業界団体によりますと、新紙幣の発行までに、銀行のATMや鉄道の券売機は対応のためのシステム改修がおおむね終了する見通しだとしています。ただ、飲料の自動販売機では更新が追いつかず新紙幣が使えないケースが出る可能性があると指摘します。
また、一部の事業者では、今回の設備投資をきっかけに、紙幣の取り扱いをやめてキャッシュレスのみの対応に切り替える動きも出ています。
新紙幣の発行にあわせた動きをまとめました。
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新紙幣への対応進む ATMに券売機 レジや精算機など進捗状況は?
決済システムを製造するメーカーなど80社あまりでつくる「日本自動販売システム機械工業会」が加盟する各社に聞き取り調査を行ったところ、ことし7月までに銀行のATMや鉄道の券売機は新紙幣の発行に対応するシステムの更新がおおむね終わる見通しだということです。
その一方で、全国にある221万台あまりの飲料の自動販売機では更新が追いつかず新紙幣が使えないケースが出る可能性があると指摘します。
また、この団体によりますと飲料の自動販売機では2021年から発行されている「500円硬貨」について現在、利用できるのは全体の2割から3割だとしています。背景には「500円硬貨」の流通が全体に広がっていないとみられることがあるということです。
業界団体では、今回の新紙幣への対応について、「新紙幣は500円硬貨よりも流通のスピードが速いとみられる」として、対応について関係団体に周知を進めているということです。
財務省が、決済システムを製造するメーカーなどでつくる「日本自動販売システム機械工業会」に聞き取りをした結果、新たな紙幣に対応するための設備投資による経済効果はおよそ5000億円に上ると試算されています。
また、一部の事業者では、今回の設備投資をきっかけに、紙幣の取り扱いをやめて、電子マネーやQRコード決済など、キャッシュレスのみの対応に切り替える動きも出ています。
新たな紙幣の発行にあわせて券売機などの設備を更新する企業の中にはキャッシュレス決済だけの対応に切り替える動きも出ています。
東京・大手町にある客席が20あまりのラーメン店は、10年前から営業を続けていて、近くのオフィス街で働く会社員や外国人観光客を中心に1日あたり200人以上が利用します。
店によりますと、外国人観光客の増加などを理由に売り上げは増加する傾向にあるといいます。
この店では、現金とキャッシュレス決済に対応した券売機を設置していましたが、新たな紙幣の発行にあわせて券売機を買い替える必要があったため去年10月にキャッシュレス決済だけに対応するものに切り替えました。
券売機の購入費用はおよそ200万円で、現金にも対応できるものと比べて50万円ほど安いということです。キャッシュレス決済だけにした理由には人件費の削減もあるといいます。
店では、6人のアルバイトが働いていますが、1日の売り上げ金を数える作業がなくなり閉店後の作業にかかる時間が30分ほどからおよそ5分に短縮できたため、月に15万円から20万円ほどの人件費を減らすことができたといいます。
一方で、キャッシュレスの決済事業者に支払う手数料は1か月あたり15万円ほど増えたということです。
キャッシュレス決済で支払われた売り上げ金は翌月に事業者から店に振り込まれるということです。
店によりますと、去年10月までは現金とキャッシュレス決済の割合はほぼ同じだったということですが、キャッシュレス決済だけにした後も来店客数は減っていないということです。
訪れた61歳の会社員
「新紙幣が発行されるのを知りませんでした。キャッシュレス決済はよく利用するので現金が使えないことに不便はないです」
ラーメン店を運営する会社の岩田圭介マネージャー
「インバウンドのお客も多いので、外国の方にもわかりやすい券売機ということでキャッシュレス決済だけに対応する券売機を設置しました。働く人の負担を減らすためにもキャッシュレス決済への切り替えはメリットがあると感じています」