食事でどんな栄養素をどれくらいとるべきか。これらを定めているのが、厚生労働省がまとめる「日本人の食事摂取基準」と呼ばれるものです。5年に1度の改定で、新たな案がまとまりました。今回のポイントの1つが「食物繊維」です。新たな案の内容や専門家に聞いた食物繊維の摂取量を少しでも増やす工夫などをまとめました。
厚生労働省の検討会は3月6日、2025年度から適用される「日本人の食事摂取基準」の案を取りまとめました。「日本人の食事摂取基準」は健康に過ごすために摂取すべきエネルギーや栄養素について厚生労働省がまとめていて、5年に1度改定されています。
案では、1日に必要なエネルギー量は、身体活動レベルがふつうの人の場合で、男性は▼18歳から64歳では2600から2750キロカロリー、女性は、▼18歳から64歳では1950から2050キロカロリーを摂取することを目安としています。
また、食物繊維については、最新の研究で多くとるほどがんや糖尿病などの生活習慣病の発症率が低くなることが明らかになっているとして、「理想的な摂取量」を、成人でこれまでよりも1グラム高い1日25グラムに設定しました。
ただ、2018年と2019年の国民健康・栄養調査に基づく日本人の食物繊維の摂取量の中央値は18歳以上の成人で1日13.3グラム程度と理想的な摂取量よりもかなり少なくなっています。
このため厚生労働省は、摂取を目指す「目標量」として、成人では1日に、男性は年齢によって20グラムから22グラム以上、女性は年齢によって17グラムから18グラム以上と基準を設定しました。
食物繊維の摂取について栄養の改善方法に詳しい大阪公立大学大学院の由田克士教授によりますと、食の種類を変えることでも食物繊維の摂取量を増やせるということです。
例えば、茶碗一杯で150グラムの白米は、食物繊維は2グラムですが、発芽玄米に変えると2.5グラムになり、ロールパン1つの場合は1グラムですが、フランスパンに変えると1.3グラムが摂取できるということです。
由田教授は、「わずかな違いに見えるかもしれないが、主食で食べる回数も多いので、食べるものの種類についても注意していただいて、今回の基準の改定を食生活を見直す一つのきっかけにしてほしい」と話していました。
大阪公立大学大学院 由田克士教授
「野菜はなかなかいっぺんに摂取するのは難しい。日本人の食物繊維の摂取量は高いレベルではないので、まずは、食事を抜かないことが大事だ。朝を抜いている人は昼や夜にその分の野菜を食べようとすると無理があるので、朝食を抜かずに食べることで不足分を補っていただきたい。食材は過熱すると小さくなって量を食べやすくなるので、過熱したものを前日に作っておいて朝に電子レンジで温めて食べるだけとか、手軽に食べられるバナナを食べるとか、1種類の食品で補うのではなく主食も野菜も果物も少しずつ食べてもらえれば」
このほか、厚生労働省が取りまとめた基準案で食塩については、摂取量が増えると高血圧のリスクが高まるとして、成人は1日に男性で7.5グラム、女性で6.5グラム未満の摂取を目標量としました。
厚生労働省は基準を正式に取りまとめて公表する予定で、2025年度から給食や医療介護施設での栄養管理などに活用されます。