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  • 2023年10月31日

修繕積立金が不足 値上げ対応? マンションどうする ガイドラインは

不動産のリアル(24)
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国の調査ではマンションの修繕費などを賄うための積立金が不足しているマンションの割合は34.8%で、大規模修繕工事を行う際に「修繕積立金」の不足に直面したところもあります。なぜ不足する事態となったのか、その時どう対応したのでしょうか。  
国が修繕積立金などのガイドラインの見直しに着手した理由などについてまとめました。

「修繕積立金が不足」5年前の2倍に

国土交通省が2018年度に行った調査では、長期の修繕計画に対して必要な積立金が「不足している」というマンションの割合は34.8%で、5年前、2013年度の2倍以上となりました。  
築年数が長いマンションが増える中、適切な管理や修繕に懸念が生じる結果となっています。

大規模修繕工事 “2000万円も足りない”

東京・足立区にあるマンションでは、築15年目の去年、外壁などを補修する大規模修繕工事を実施しました。  
工事の際に直面したのが「修繕積立金」の問題で、不足していた額は2000万円以上にのぼっていました。

管理組合の理事長 後藤謙治さん  
「ぞっとしました。ちょっと金額が大きすぎて」

このマンションの「修繕積立金」は、新築時は、ひと月あたり平均6000円ほどで、3年ごとにおよそ3000円ずつ引き上げられる予定でした。しかし、実際には一度も引き上げられず据え置かれていたということです。

工事にあたっては、「修繕積立金」をひと月あたり平均およそ2万円とそれ以前の3倍以上に変更したうえで、金融機関から不足分を借り入れて対応したということです。

「段階増額積立」が主流に

国土交通省では、修繕費の見積もりや徴収額の設定が不十分である上に、修繕費の徴収・積み立ての特有の方式が背景にあると見ています。

積立金は、当初は低く設定し、段階的に引き上げていく「段階増額積立」と、原則、計画当初の設定額で一律に徴収する「均等積立」があります。  
1980年代には均等積立のマンションが53.2%と過半数を占めていましたが、2010年以降は、均等積立は23.6%、段階増額積立が67.8%と逆転しています。

積立金徴収額の引き上げの問題

国土交通省の2021年度の調査では、マンションの修繕積立金の徴収額は、1戸あたりの平均で月額2万1420円と、10年前と比べて7000円あまり上昇しています。

また、国土交通省によりますと、新築マンションの修繕計画に関する調査では、最終的に見込まれる徴収額は初期の徴収額に比べ平均で3.6倍に上昇していて、中には10倍を超えるマンションもあったということです。

特にこの数年は、資材価格の上昇で、急激に引き上げたという事例もあり、相次ぐ積立金の滞納につながっているとみられます。

資金不足を防ぐことはできるのか

「修繕積立金」の不足に直面した足立区のマンションでは、今後の資金不足を防ぐため、45年先までの修繕計画を作り直して必要な費用を算出したうえで、「修繕積立金」を段階的に値上げする方法から同じ金額を払い続ける方法に見直しました。

また、管理組合では住民への説明会を重ねたほか、共用部の照明をLEDに変更したり、エレベーターの保守点検会社を見直したりして同様に毎月支払う「管理費」の負担を抑える方針を示し、理解を得たということです。

修繕計画・積立金の適切な目安など議論開始

マンションの修繕積立金など管理計画のガイドラインの見直しに向けて、国土交通省は、10月30日、専門家による検討会で議論を始めました。

検討会では、マンションの適切な管理に支障が出る懸念が高まっているとして、修繕計画や積立金について適切な目安を設けることや、徴収額を当初から高めに設定し、同じ金額を徴収していく方式を導入することなどについて今年度中に議論を取りまとめ、新たなガイドラインを示したい考えです。

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